撤退相次ぐ自動運転トラック、「トヨタ提携先」は商用化へ!4.8億ドルを追加調達

米Aurora、2024年末までに商用運行開始



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

トヨタとも提携している自動運転開発企業の米Aurora Innovation(オーロラ・イノベーション)が、大型の資金調達を行ったことが、2024年8月14日までに明らかになった。

2024年末までに自動運転トラックの商用運行を開始することに向けたもので、目標を上回る4億8,300万ドル(約710億円)を調達したという。2023年11月に自動運転トラックの商用ルートを開設したことを発表している同社。いよいよ商業化に向けて本格始動するようだ。


自動運転トラックに関しては、商用展開の難しさや開発コスト、マネタイズなどに関する懸念もあり、Google系Waymoなどを始めとして開発を取りやめる企業が相次いでいる。巨額の資金投入によって米Auroraが無人トラック事業で成功を果たせるのか、注目が集まる。

■予想を上回る4億8,300万ドルを調達

出典:Aurora Innovation公式ブログ

今回の資金調達ラウンドは、Auroraにとって2023年7月の8億2,000万ドル(約1,200億円)の資金調達に続くものだ。

同社は2024年中にドライバーレスの自動運転トラックの商用運行をスタートするため、数億ドルの追加資本調達を計画していた。2024年8月1日に引受人のゴールドマン・サックス、アレン・アンド・カンパニー、モルガン・スタンレーに対し、最大4億2,000万ドル相当のクラスA普通株式を売却する計画を初めて明らかにした。

この合意は、Auroraが3億5000万ドル相当の株式売却の目論見書を提出した翌日に締結されたという。米メディアの報道によると、投資家からの強い要望により売り出し額は4億2,000万ドルに増額されたようだ。


Auroraは、手数料などを差し引いた後の売却による純利益は約4億500万ドル、または引受会社が全額追加株式を購入するオプションを行使した場合は約4億6,600万ドルになると予想していた。しかし実際の調達額は、予想を上回る4億8,300万ドルとなった。投資家からの同社への評価と期待が非常に高いことが分かる。

■「2028年にはキャッシュフローがプラスに」

Auroraが提出した書類には、この資金は「運転資金およびその他の一般的な企業目的」との漠然とした記載があった。しかしその後、同社の広報担当が「この好機を捉えた資金調達により、当社は2026年まで余裕を持って事業を行うことができ、無人トラックを大規模展開できるだろう。そして2028年にはキャッシュフローがプラスになる企業になるという道筋が開ける」とコメントしている。

また「Auroraの継続的な勢いと、より有利な市場環境により、追加の資金調達を行う絶好の機会となった」とも付け加えている。

■2021年にトヨタと提携、株価回復なるか?

Aurora Innovationの株価チャート=出典:Trading View

Auroraは、Googleやテスラ、Uberで自動運転開発に携わっていた3人の技術者により、2016年に設立された。自動運転システム「Aurora Driver」は大型トラックから乗用車まで広く統合可能で、トヨタをはじめUber、ボルボ・グループ、FedEx、PACCARなど、移動や輸送を担う企業と広くパートナーシップを結んでいる。


2021年2月に、トヨタとデンソーと戦略的パートナーシップを締結したことを発表した。2022年3月には、トヨタの自動運転MaaS専用車両「Sienna-AutonoMaaS」にAurora Driverを統合した試験車両を公開した。

米国でもトラックドライバーの人材不足は深刻な問題になっている。そのためAuroraの自動運転トラックに物流改革に期待が高まっている。

Auroraは2021年11月に米ナスダック市場にSPAC上場した。その後、1株17.7ドル台をピークに株価は1ドル台まで下落し、現在2〜4ドル程度まで落ち込んでいる。今回の資金調達による事業強化により、株価は盛り返すだろうか。同社の事業の進捗とともに、株価の推移にも注目していきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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