「ロシアのGoogle」と呼ばれていたロシアのIT大手Yandex(ヤンデックス)が、名前を変えて米国で再出発していたことがこのほど明らかになった。
自動運転開発も手掛けていた同社だが、米テキサス州オースティンを本拠とし「Avride」という新社名で自動運転タクシーや配送ロボットのテストをスタートしているという。
2022年2月にロシアによるウクライナ侵攻が開始されてから動きが止まっていたように見えたYandexだが、「アメリカへの亡命」を通じて、今後、有力な自動運転開発企業として躍進する可能性もある。
▼Avride公式サイト
https://www.avride.ai/
■ロシア企業Yandexのこれまで
Yandexは、前身となるArcadia 、CompTek時代の1997年に検索エンジン「Яndex-Web」を発表しインターネット事業をスタートした。2000年に社名を現在の「Yandex」に変更した。さまざまなウェブサービスを展開し、ロシアを代表するIT企業となった。
2018年に自動運転の公道実証をモスクワ市内で開始した。同年夏には、モスクワからカザンまでの780キロに及ぶ高速道路の走行も実施した。11時間かけルートの99%を自動走行し、自動運転の実用化に自信を見せていた。
また同じく2018年に米ネバダ州とイスラエルで公道走行ライセンスを取得し、ラスベガスやテルアビブで実証を行っている。2019年には韓国現代自動車(ヒュンダイ)グループ傘下のサプライヤー・現代モービスと自動運転開発に向けパートナーシップを結んだことを発表したり、LiDARを自社開発中であることを発表したりと、着実に事業を拡大していっている。
2020年にUberと共同で自動運転開発を手掛けてきた部門「Yandex Self-Driving Group(YandexSDG)」を配車サービスから独立・分社化することを発表した。自動配送ロボット「Yandex.Rover」は2021年に米ミシガン州などで導入された。
Yandexの動きが止まったのは、2022年3月頃だ。ロシアのウクライナ侵攻の影響をもろに受けた形になる。米国での自動運転タクシーと自動配送ロボットのテスト走行を一時停止すると発表した。その後、同社の公式サイトも公開されなくなり、従業員の多くは解雇されたというニュースも入ってきた。
【参考】関連記事としては「Yandex、自動運転の年表!ロシアのGoogle、虎視眈々」も参照。
■新社名は「Avride」、再出発の行方に注目
ロシアによるウクライナへの軍事侵攻が始まってから、Yandexは再編の道を模索していたようだ。2024年2月にロシアとその他の市場における全事業を54億ドル(約8,504億円)で売却することで合意し、本拠地であったロシアとの関係を解消したという。
この手続きは全て完了しており、すでにAvride として正式に始動している。米国を拠点に自動運転開発を行っていくAvrideは、自動運転タクシー実装などが進む米国で存在感を示していくことができるのだろうか。
母国であるロシアとの関係を断ち切って再出発するYandexの覚悟をひしひしと感じる。新生企業Avrideの今後の健闘に注目だ。
【参考】関連記事としては「ロシアYandex、アメリカでの自動運転実証を一時停止」も参照。