エヌビディアCEO、自動運転「最先端はテスラ」と明言

自動運転技術のend-to-end開発を評価



出典:Dunk / flickr (CC BY-SA 2.0 DEED)/NVIDIAプレスリリース

「自動運転の分野を最もリードしているのはテスラだ」。米半導体大手NVIDIA(エヌビディア)のCEO(最高経営責任者)であるジェン・スン・フアン氏は、メディアのインタビューでこう強調した。

テスラの自動運転技術についてフアンCEOは「end-to-end generative model」(エンド・ツー・エンドのジェネレーティブ・モデル)と強調した。どういうことか。


end-to-endとは「端から端まで」という意味だ。つまり、運転中の動画を見て学習することから、どのように自動車を運転するかまでを、全てをAI(人工知能)で完結させようとしている、ということだろう。

■最先端企業は本当にテスラか

エヌビディアは最近、「一生一緒にエヌビディア」と株式投資の世界で流行語が登場するほど、近年、株価が急騰していることが日本でも話題になっている。

リアルタイムな画像処理に必要な演算処理を行う「画像処理半導体」(GPU)に強みがあり、自動運転分野向けのSoC(システム・オン・チップ)に対する評価も非常に高い。時価総額で世界トップに踊り出る可能性もかなり高くなってきた。

そんなエヌビディアのトップであるフアンCEOの発言は重い。フアンCEOが言うように、自動運転業界をいま最もリードしているのはテスラなのだろうか。自動運転ラボが専門メディアとして意見を述べさせてもらうと、その回答は「見方による」だ。


前述のように、end-to-endでの自動運転実現のアプローチは確かに前衛的だ。しかし、商用化では他社に遅れをとっているのが現実だ。

■自動運転タクシーではGoogleが先行

Google系Waymoが展開している自動運転タクシー=出典:Waymo公式ブログ

例えば「自動運転タクシー」で言うと、Google系Waymo(ウェイモ)が2018年12月に商用展開を世界で初めて実現し、その翌年にはセーフティドライバーも乗せない形で運行をスタートさせた。その後、アメリカではGM CruiseがWaymoを追う形でサービスを開始した(※現在はサービスを停止中)。

【参考】関連記事としては「衝突回避率:自動運転は75.0%、手動運転は62.5% 米Waymo、死亡事故シナリオで調査」も参照。


高速道路などの特定条件下でアイズオフが可能な自動運転を稼働させる「自動運転レベル3」に関しては、市販車への搭載を世界で初めて実現したのは日本のホンダだ。2021年3月にレベル3の機能を搭載した「Honda SENSING Elite(ホンダ センシング エリート)」を搭載した新型LEGENDを発売した。現在はメルセデスがホンダに続いている。

出典:Mercedesプレスリリース

自動運転が可能な小型配送車両では、米Nuroなどが先行しており、このどの分野においてもテスラは他社に遅れをとっている。テスラの市販車に搭載されているAutopilotやFSD(※Full Self-Drivingの略語)といった車載ソフトウェアは、いずれも自動運転レベル2の段階だ。


■どの顧客が成功しようがNVIDIAに利益

ちなみにテスラはエヌビディアの顧客であり、フアンCEOがテスラ率いるイーロン・マスク氏をヨイショして、「自動運転の分野を最もリードしているのはテスラだ」と言った可能性もある。

ただエヌビディアの顧客としてはテスラのほかにも、メルセデス、ジャガー・ランドローバー、ボルボ、現代自動車などがあり、どの自動車メーカーが自動運転化をリードしようが、エヌビディア製半導体を使ってくれるのなら、フアン氏にとっては御の字だ。

それなら、あえてテスラだけを持ち上げる必要もなく、フアンCEOは本当にテスラを評価しているということなのかもしれない。今後もフアンCEOの発言には要注目だ。

【参考】関連記事としては「完全解明!自動運転×半導体、世界の有力企業11社一覧」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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