自動運転向け地図「叡智を結集」 ダイナミックマップ基盤、増える仲間

ファンドや商社も出資、参画企業続々



出典:ダイナミックマップ基盤公式サイト

国内外で高精度3次元地図の整備を進めるダイナミックマップ基盤(DMP)。その開発の輪は、整備路線の拡大とともに広がりを見せ、オールジャパン体制をより強固なものへと変えているようだ。

この記事では、DMPの取り組みに迫る。


■自動車メーカーや測量企業らが結集して設立

DMPは、戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)のもとダイナミックマップの仕様などを検討してきた「ダイナミックマップ構築検討コンソーシアム」の6社と自動車メーカー9社が高精度3次元地図の整備や実証、運営に向け2016年に企画会社として設立したのがはじまりだ。

設立メンバーには、三菱電機、ゼンリン、パスコ、アイサンテクノロジー、ジオテクノロジーズ(旧インクリメント・ピー)、トヨタマップマスター、いすゞ、スズキ、SUBARU、トヨタ、日産日野、本田技研、マツダ、三菱自が名を連ねる。2017年には、ダイハツと産業革新投資機構が加わり、計17社出資のもと事業会社化された。

日本政府によるバックアップのもと、計測機器や測量、地図、自動車メーカーといった国内トップレベルの企業が一体となった「オールジャパン体制」で設立されたと言える。公共測量計画機関の認定を国土交通省より取得しているようだ。

整備・提供を行っている高精度3次元地図データは、標識や区画線をはじめとした実在地物と、車線リンクのように実在しない仮想地物を収録するなど、協調領域に求められる要素をしっかりと網羅している。


■ProPILOT 2.0やHonda SENSING Eliteに採用

国内では2019年、ハンズオフ運転を可能にする日産スカイラインの「ProPILOT 2.0」に高精度3次元地図データが採用されたのを皮切りに、レベル3を実現する「Honda SENSING Elite」を搭載したホンダ・レジェンド、スカイライン同様「ProPILOT 2.0」を搭載した日産アリアにそれぞれ採用されたことが発表されている。

このほか、産業技術総合研究所による全国5地域で実施されている中型自動運転バスの実証や「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」など、各地の自動運転実証にも活用されている。

海外では、買収した米Ushrの高精度3次元地図データが米GMのSuper cruiseシステムの一部として採用されている。

■整備路線を一般道路に拡大、2024年度までに13万キロ網羅

整備路線は2021年9月末時点で国内の高速道路と自動車専用道路の上下線合わせ計3万1,910キロに上る。北米では、2019年に買収した同業の米Ushr(アッシャー)が米国とカナダにまたがる13万マイル(約20万キロ)の高速道路をマッピング済みだ。


今後は、ADASでの活用を見込み、現在の高精度3次元地図データにおけるセンチメートル級の高精度を維持しながら、新たな価値と優れたコストパフォーマンスを備えた次世代の高精度3次元地図データを2023年度から導入する予定だ。

対応路線も順次拡張し、2023年度までに一般道路を含めた8万キロ、2024年度までに13万キロを網羅する計画だ。

■ファンドや商社も出資

出資関連ではこのほか、三菱UFJキャピタル、TGVest Capital、みずほキャピタル、SBIインベストメント、三井物産、ジャパン・インフラストラクチャー・イニシアティブ、ヒューリックグループから資金を調達し、事業基盤を固めている。

海外関連では、2019年に米Ushrを買収してグループ企業に加え、北米市場における事業展開を本格化させている。北米事業に向けては、海外交通・都市開発事業支援機構(JOIN)から2021年に出資を受けているほか、2022年3月には欧州拠点として新たに設立した子会社DMP Europeに向け追加出資を受けることも発表している。

出典:ダイナミックマップ基盤公式サイト
■ウーブンやヴァレオと協業

協業関連では、トヨタ傘下のウーブン・アルファ(ウーブン・プラネット・ホールディングス/旧TRI-AD)と「AMP(自動地図生成プラットフォーム)」を用いた実証実験を進めている。車載カメラなどのセンサーから収集した画像データから道路上の変化を検出し、DMPの高精度3次元地図を効率的に更新する技術について研究開発を進めている。

2021年2月には、仏ヴァレオとパートナーシップを結び、正確な自車位置推定と高精度3次元地図更新に向けたテクノロジーとビジネスモデルを共同開発していくことが発表された。

ヴァレオは、世界に先駆けて自動車グレードのLiDAR「Valeo SCALA」を実用化し、このLiDARとポイントクラウドマップのみを使用してセンチメートルクラスの精度で自車位置推定を提供する高精度ローカリゼーションとマッピングシステム「Valeo Drive4U Locate」を開発している。

協業では、非独占的にグローバルに共同でサービスを提供することを目的に両社の技術を持ち寄り、技術・事業両面で検討を進めていく方針としている。

【参考】ヴァレオとの取り組みについては「仏ヴァレオとDMPが提携!自動運転に必須の自車位置推定とHDマップでタッグ」も参照。

■【まとめ】高まる高精度3次元地図の需要 海外展開にも注目

自動運転において重要な情報インフラとなる高精度3次元地図に対し、支援やパートナーシップの輪は徐々に拡大しているようだ。

また、DMPの技術は、北米をはじめ欧州での展開も視野に入れているようだ。今後、HERE TechnologiesやTomTomといった海外同業とどのように競合、あるいは協同していくのか。今後の動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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