単眼カメラのみで自律経路走行できるーー。こうした新技術を搭載した自律型移動ロボット車両が、2021年12月3日までに発表された。
共同開発したのは、ロボット開発を手掛けるアトラックラボ、ロボット・ドローン開発のGINZAFARM、佐賀大学。安価な単眼カメラで自律型移動を実現させられることは、コスト面でこうしたロボットの普及を後押しする。開発コストや販売価格を抑えられるからだ。
農業分野やウイルス除去のための屋内巡回、工場での物品搬送など、さまざまなシーンでの自律型移動ロボットの導入が広がっていきそうだ。
■LiDARやステレオカメラなしで自律走行
今回発表された自律型移動ロボット車両は、前方の単眼カメラの映像を画像処理する。進路の目安であるカラーコーンの方向と大きさを検知して自車との位置関係を割り出し、カラーコーン間を自律経路走行するという。
従来、廊下や通路など比較的長い距離を直進走行する際には、床面にラインテープを貼るか、LiDARやステレオカメラ、赤外線センサーなどが必要だった。
制御アルゴリズムは、佐賀大学の佐藤和也教授が開発し、ロボット車両に実装した。両脇に異なる種類のカラーコーンを設置すれば左右旋回も可能だ。AI(人工知能)を使って廊下や通路の特徴を捉えれば、カラーコーンでなくても壁や支柱に同じ大きさの目印があれば同様に作動するという。
移動ロボット車両の開発と制御用ハードウェア設計は、アトラックラボとGINZAFARMが担当した。
■12個のカメラで自律走行を安全に実現
「カメラのみ」の自律走行については、現在かなり研究に力が入りつつある技術だ。例えば米インテル傘下のイスラエル企業Mobileye(モービルアイ)も取り組んでいる。
同社は2020年1月に米ラスベガスで開催された技術見本市「CES 2020」において、ある動画を公開した。その動画では、自動運転に必要なコアセンサーとされるLiDARやミリ波レーダーを使わず、車両に設置された12個のカメラのみで自動運転する様子が紹介されている。
カメラで走行空間を3次元(3D)認識することで、安全な自動運転を実現するという仕組みだ。詳しくは以下の記事を参考にしてほしい。
【参考】関連記事としては「AI自動運転「センサーはカメラだけ」…Mobileyeの衝撃動画、CES 2020で公開」も参照。
■「カメラのみ」がスタンダードに?
カメラのみで自律走行を実現する技術研究が進んできている。LiDAR開発企業にとっては脅威となる技術とも言えそうだ。
コスト面で大きなアドバンテージがあることから、安全性や安定性をしっかり担保できれば、「カメラのみ」がスタンダードになっていく可能性も大いにある。今後も各社の展開に注目していきたい。
【参考】関連記事としては「LiDAR(ライダー)とは?自動運転向けセンサーとして活躍」も参照。