自動運転タクシーの商用展開を目指す米ゼネラル・モーターズ(GM)と子会社のCruise(クルーズ)。サービス開始予定を延期するなどし、Google系Waymo(ウェイモ)に後塵を拝しているが、このほどプロジェクトの実現に向けて大きく一歩前進した。
GMは2020年1月26日までに、米Microsoftと長期的な戦略的提携を結んだと発表した。CruiseがMicrosoftのクラウドサービス「Azure」を採用し、自動運転タクシーの事業を推進するという。
また、MicrosoftはすでにCruiseに投資している日本のホンダなどとともに20億ドル(約2,100億円)以上の出資を行う。報道などによると、今回の投資によってCruiseの企業価値は約300億ドル(約3兆1,000億円)になるとされている。
自動車向けにクラウドサービスを展開している企業とサービスとしては、ほかにはAmazonの「AWS(アマゾンウェブサービス)」やGoogleの「GCP(グーグルクラウドプラットフォーム)」などがあるが、GMはMicrosoftと手を組みAzureを活用することとなる。
■注目のCruise、2013年に創業して2016年にGM傘下に
GMについては知っていても、GM子会社のCruiseについて知らない人もいるかもしれない。Cruiseはエンジニアで起業家のKyle Vogt(カイル・ヴォグト)氏らによって、2013年に設立された企業だ。
創業当初はオートパイロット機能を自動車に後付けするキットを開発していたが、完全自動運転車の開発に乗り出すため、GMと手を結んだ。そして2016年3月には5億8,100万ドル(約640億円)でGMに買収され、現在は自動運転タクシーの商用化に向けて動いている。
2018年5月には、ソフトバンクグループの投資ファンド「ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)」がCruiseに総額22億5,000万ドル(約2,500億円)の出資を行うことが発表され、同年10月にはGMとCruiseの自動運転開発にホンダが加わることが発表された。
その後の2019年5月にはGMやSVF、ホンダなどから新たに11億5000万ドル(約1,260億円)の追加出資を受けている。
■Microsoftと手を組み、自動運転タクシー商用化へ前進
Cruiseによる自動運転タクシーのサービス展開は、計画当初は2019年内に行われる予定であったが、安全度を一層高めるためとして、サービス開始の延期を2019年7月に発表した。その後のスタート予定は2021年1月時点で明らかになっていない。
自動運転車両の開発については、2020年1月にCruiseオリジナルの自動運転車両を公表している。公表した車両は、ハンドルなしでペダル類もついておらず、サイドミラーも存在しないデザインだ。
アメリカではGoogle系ウェイモが既に自動運転タクシーの商用化を果たしているが、Cruiseも実際にサービスをスタートされれば、確実に米国内においてWaymoと並んで注目の存在となるはずだ。
クラウドサービスの活用は自動運転タクシーにおいて必要不可欠なものだ。今回クラウドサービスの利用でMicrosoftと手を組んだことで、Azureを柔軟に最大限活用できることが期待でき、Cruiseの自動運転タクシーの商用サービスの開始に向けて大きく前進したと言えそうだ。
【参考】関連記事としては「自動運転時代はクラウドサービス企業の成長期(深掘り!自動運転×データ 第12回)」も参照。