2021年後半に向け、自動運転マーケットはどう変わる?下山哲平氏に聞く

ODM台頭で「乗用車」領域でチャンス拡大



撮影:自動運転ラボ

新型コロナウイルス感染症の拡大もあり、「コンタクトレス」を加速させる自動運転技術への注目度は高まるばかりだ。そんな中、今後の2021〜2022年にかけ、自動運転マーケットではどのような潮流の変化が顕著になるだろうか。

今回はこうした視点で、自動運転ラボ主宰でストロボ代表の下山哲平氏にインタビューした。その内容をお届けする。







■「乗用車」の自動運転マーケットがこれまでは盛り上がりに欠けてきた理由
Q 自動運転マーケットでは2021年から2022年にかけ、どのような潮流の変化が起きると考えているか。

自動運転業界の将来を占う上では、従来型の「乗用車」の自動運転化と、「非乗用車」の自動運転化、を分けて考える必要があります。

まず「乗用車」についてですが、従来型の乗用車の新車は日本で年間500万台前後販売されており、これらの乗用車が最終的に自動運転化されていくことを考えると、乗用車の自動運転マーケットはとても大きくなっていくということが分かると思います。

しかしこの「乗用車」のマーケットは2つの側面から、中小部品メーカーや技術系ベンチャーなどにとっては、ビジネス的には決してチャンスが大きいマーケットではありませんでした。

1つ目の側面は、自動運転レベル4以上の技術が実用化されるまで相当時間がかかり、すぐに市場が立ち上がらず、すぐにお金が動かないことです。

たとえばセンサーの開発メーカーの視点に立って考えてみましょう。ある自動車メーカーが開発する自動運転の試験車両向けにセンサーを100個を納品できたとしても、その自動車メーカーの量産車にセンサーが大量採用されるのはかなり先の話になり、開発企業としては、マネタイズへの期間が長期化して苦しい部分もあるでしょう。こうしたことが、「自動運転×乗用車」のマーケットが今ひとつ爆発しない要因となっています。

2つ目の側面は、 「乗用車」を生産するトヨタや日産などのOEMメーカー(完成車メーカー)は、ピラミッド的な「垂直統合型」の体制で研究開発から部品調達までを一貫して行っているということです。

最近はこうした構造が崩れつつありますが、高い技術力を有したベンチャー企業や中小企業であっても、その生産構造の中に入り込めるチャンスは極めて限定的です。新しいOEMメーカーが登場すればチャンスもありますが、国内でOEMメーカーが新しく誕生することはそうそうありません。

少なくとも2019年頃までは、こうした2つの側面で「乗用車」の自動運転マーケットは盛り上がりに欠けたと、個人的に思っています。しかし2021年に入り、こうした状況に変化の兆しが見えてきました。

■ODM台頭で潮流が変化、新興・中小企業にもチャンス
Q 先ほど触れていましたが、なぜ2021年に入り「乗用車」の自動運転マーケットに変化の兆しが見え始めてきたのか。

キーワードは「ODM」です。自動車のEV化が世界的に進む中、EVの設計・生産を全て請負うODMメーカーが出始め、台頭しつつあります。ガソリン車ではエンジン製造の難易度が高いことがネックでしたが、EVであればエンジンを製造せずに済むため、ODMメーカーがEVの受託生産に本腰を入れ始めたのです。

このように、ODMメーカーがニュープレイヤーとしてEVの市場に参入してきたことは、センサー開発企業などの部品メーカーにとっては大きなチャンスです。ODMメーカーはさまざまなEVを受託生産しますが、車両の裏側に搭載する部品やパーツはほぼ共通なので、ODMメーカーに自社の部品やパーツが採用されるということは、OEMメーカー1社に採用されるよりもはるかに大きいビジネスになる可能性があります。

この1年間でODM最大手の台湾Foxconnも動き出しました。これまでOEMメーカーと仲良くしてこなかった新興企業であっても、EVの領域に参入するODMメーカーとビジネスができるようになれば、「一発大逆転」が可能になります。つまり、自動運転に関連するさまざまな技術を持ったプレーヤーが頑張る理由が、急に出てきたと言えるでしょう。

こういう流れに乗れるか乗れないかで、今後とても大きな違いが出てきます。自動運転に寄与できるような技術・部品を有している企業は、OEMに張るのか、ODMに張るのか、大きな選択を迫られるようになります。もちろんどちらかを捨てないといけないわけではありませんが、どちらに注力するかはとても大事で、この選択によって勝ち負けがはっきりするケースは将来きっとあると思います。

そしてODMに対しては、「あの日本企業はすごい技術を持っているらしい」「呼びつけた方がいいんじゃないか?」と思ってもらえるようなセールスマーケティングをすることの重要性も高まっています。

■非乗用車領域で「つなぎビジネス」が活況になりつつある
Q 「非乗用車」の領域においては、潮流は今後どう変わっていくのか。

「非乗用車」の領域では、例えば「物を運ぶ」という切り口においては、トラックなどの「物流」領域と、ロボットなどによる「宅配」の領域があります。こうした領域でいま、「つなぎ」ビジネスが活況になりつつあります。

まず「物流」の領域についてですが、トラックの自動運転化は乗用車の自動運転化と比べても、実用化されるまでの時間があまり変わらないので、まだしばらく先の話となります。そこで重要になるのが、それまでの「つなぎビジネス」や「つなぎソリューション」です。

私が前から唱えていることですが、自動運転はあくまで「何かの課題を解決するための手段」の1つに過ぎません。なぜ物流分野で自動運転技術が注目を浴びているかというと、自動運転技術が業界が抱える課題の解決につながると期待されているからです。どんな課題かというと、人手不足や少量・多頻度の配送ニーズに対する対応などです。

こうした課題は、自動運転を実現する一歩手前の段階においても変わらず業界を悩ませ続けています。そして自動運転時代の到来を前にこうした課題の解決に取り組むビジネスや、自動運転時代に必要となる仕組みの一部を先回りして構築する取り組みなどが、「つなぎビジネス」です。

撮影:自動運転ラボ

例えば、100カ所に100個の荷物を届けないといけないとき、配送ルートのパターンは100通りどころか天文学的な数ほどがあります。もしAI(人工知能)で最も効率の良いルートを判定できるようにすれば、自動運転車で100個の荷物を効率的に配達できます。

ただし、こうしたルート最適化技術は人間による配達でも活用でき、配達の効率化に寄与します。自動運転とセットで導入される技術を先に人間が活用する…。まさに「つなぎビジネス」の代表的なケースです。

そして、その次のステップは「自動運転化」となるので、ルート最適化の技術が脚光を浴びるようになっているということは、まもなく「人」が「ロボット」などに置き換わるということとほぼ同義です。

ただし現在は、ルート最適化技術に焦点を当てたニュースでも、自動運転の「自」の字すら使われていないことがほとんどです。しかし、こうしたニュースが増えてきていることは、「つなぎビジネス」が立ち上がりだしたことを意味しており、今年から来年にかけてもビッグウェーブが来ると予測しております。

■「宅配」領域、皆が及び腰の今がビジネスチャンス
Q 実際のところ、物流業者は宅配ロボットなどに注目しているのか。

ラストワンマイルにおける「宅配」では主にロボットが活躍します。ただし、ロボットの導入コストは当面高く、配送距離が短ければ人間が運んだ方が素早くこなせることもあり、ロボット導入のメリットを感じられるようになるのは、まだ先の話になるでしょう。

そんな中、現在は物流業者の多くが宅配ロボットについて「正直言って微妙」「(ブームは)来ない」といったことを口にします。しかし、人手不足などの課題が将来消えて無くなるわけではないので、宅配ロボットが活躍する時代は確実にきます。

1〜2年と短期間で儲けを出したい会社は参入すべきではありませんが、多くの人が及び腰になっている今こそ、大きな参入のチャンスです。

Q 宅配領域としては「フードデリバリー」が最近ホットだが、この領域でもビジネスチャンスはあるか。

フードデリバリービジネスは採算性が低いビジネスで、Uber Eatsはいま赤字です。しかしそれでも事業を続けているのは、いずれ自動搬送ロボットなどを活用し始めたあとに黒字に転じることを見越しているからです。いずれは自動搬送ロボットを使ったフードデリバリーの実証実験が100%実施されるでしょう。

そして重要なことは、例えば技術系企業であれば、その実証実験のときに声がかかる存在になっているかどうかです。そこで声がかからなければ、Uberとビジネスをする大きなチャンスを逃したことになります。先ほども触れましたが、みんなが及び腰になっているビジネス領域こそ、競争相手の少なさからチャンスを掴める可能性が高まります。

■宅配ロボットの実用化に伴い「周辺ビジネス」が伸びていく
Q 自動運転技術を有していない企業や地方企業にもチャンスはあるか

宅配ロボットが活躍する物流領域では、新たなビジネスマーケットの活性化が見込めます。

宅配ロボットを物流領域で活躍させるためには、「ローカル性」という課題がクリアされなければなりません。例えば、あるエリアで宅配ロボットを動かす際にはそのエリアの地図データが必要で、地域ごとのサポート体制の構築も必要です。自動運転技術を有していない企業でも、こうした切り口で自動運転マーケットに参入することができます。

宅配ロボットそのものやロボットに搭載するソフトウェアは外資企業のプロダクトが使われるかもしれませんが、いずれにしても地域ごとにサポート体制を構築する必要があります。その際、外資企業は日本での展開を支援してくれる協力会社を探すはずです。つまり、セールスマーケティング・営業も含めてサポートしてくれる「代理店」的なマーケットも活性化するはずです。

「システム屋さん」(システム企業)の出番もあります。ロボットを使った無人宅配の仕組みを構築するためには、さまざまなシステムをつなぐ必要があります。例えば、EC(電子商取引)サイトで注文が入ると宅配ロボットに指示が出る、といった仕組みを構築する際には、少なくとも「ECサイトのシステム」と「ロボットに指示を出すシステム」の2つを結ぶ必要があります。こうしたことを「システムインテグレーション」と呼びますが、そこでシステム屋さんが活躍します。

宅配ロボットの実用化が進めば進むほど、自動運転技術そのものではなく、自動運転技術をうまく活用するための周辺ビジネスが伸びていくでしょう。

■【取材を終えて】自動運転マーケットの潮流は大きく変わる

ODMの台頭、つなぎビジネス…。こうしたことをキーワードに、自動運転マーケットの潮流は2021〜2022年にかけて大きく変わっていきそうだ。確実に来る自動運転社会を前に、各企業のスタンスがどのように変化していくのかにも、注目していきたいと思った。

下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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