「ソフトウェアの歴史上、オープンソースじゃないソフトウェアがオープンソースのソフトウェアにシェアで打ち勝ってきた例はほとんどない」
自動運転ソフトウェア開発の第一人者である加藤真平氏(ティアフォー社会長)は2019年2月21日までに、ティアフォー社が開発するオープンソースの自動運転OS「Autoware」の普及に向けた戦略について、自動運転ラボのメール取材にこのように応じた。
加藤氏はAutowareについて「そのロジックはすべて透明化され、ソフトウェアバグやセキュリティ問題も、世界中のありとあらゆる目で検証が可能」と説明。その上で「そういう意味では最も安心して利用できるソフトウェアという位置づけになるので、一定水準の機能が完備されれば優位性は明白」と強調した。例として、スマホ向け基本ソフト(OS)においては、オープンソースのアンドロイドと非オープンソースのiOSでは、Androidが最近では圧倒的シェアを誇っていることに言及した。
こうした事例に触れた上で加藤氏は「ただ、単にオープンソースソフトウェアであるだけではシェア拡大は難しく、Androidでいう主要アプリ(Google MapsやGMailなど)のようにAutowareも遠隔運転や地図配信といったサービスを紐づけていかないといけない」と強調しており、「Linuxのエンタープライズ版でRedHat社があるように、Autowareもティアフォー社がエンタープライズ版を出していくことが重要」とも語っている。
■完成車メーカーのGoogle合流、あくまで「レベル4~5の話」
2019年2月5日、ルノー・日産・三菱の3社連合が自動運転開発でGoogle陣営に参画する方針を固めたというニュースが報道された。自動運転ラボはこの報道を受け、加藤氏に「完成車メーカーが自社で自動運転システムを開発していかないということを感じさせるが、そうした潮流が今後メインストリームになっていくと感じるか」と質問した。
加藤氏は回答で「自動運転といっても幅広い意味合いがあるので、これはあくまでモビリティサービス向けのレベル4(高度運転自動化)〜レベル5(完全運転自動化)の自動運転に関する話だと思う。自社で開発をしていかないというよりは、自社で足りないものをアライアンスを組んで埋めていくという戦略のように思える」と述べた。
その上で「従来の垂直統合型のピラミッド構造(OEM、Tier1、Tier2…)から水平分業型のアライアンス構造にシフトしていくことは明白かと思う。一方で、個人に販売する自動車向けの先進運転支援システム(ADAS)は今まで通りのピラミッド構造でも十分に製品開発はできるものと思う」としている。
■ティアフォーは「限定地域で導入可能なソリューションを早期提供」
ルノー・日産・三菱がGoogle陣営に合流した場合、自動運転領域は「グーグル陣営」「トヨタ・ソフトバンク陣営」「VW・インテル陣営」の三つ巴の対立構造が鮮明化する。その場合、オープンソースやティアフォー社の立ち位置はどのなるのか。
【参考】関連記事としては「自動運転の覇権争いは三つ巴…各陣営の企業まとめ 提携・アライアンスの現状は?」も参照。
加藤氏はグーグル・ウェイモ陣営について「レベル4〜レベル5の自動運転に関しては、という前置きがあるとして、技術水準と走行実績でいえば世界で圧倒的」と評価。その上でティアフォーについては「グーグル・ウェイモ陣営に次ぐ技術水準と走行実績があると思う」とし、「地道に追いつく努力をする必要があると感じている」と述べた。一方で「ティアフォーはオープンソース戦略であり、他陣営と対立する必要もない。むしろどの陣営とも協力関係を築くことができる。必要とされる機能のみを提供することも可能だ」とも語っている。
こうした点を踏まえた上で、ティアフォーの立ち位置については「現実的なコストで早期に限定地域で導入可能な自動運転のソリューションを提供する、ということになる」と強調。「タクシーやバスのような運行形式を考えた場合、ティアフォーの技術水準と走行実績で導入可能な地域がほとんどだ」とした。
■世界各国で自動運転社会の実現に貢献
加藤氏の語ったオープンソースの話には強い説得力を感じた。「世界中のありとあらゆる目で検証が可能」(加藤氏)であることから、より洗練された自動運転OSへと昇華が続いていき、取り扱う人々にとっても使いやすいものになっていく。
Autowareについては国際オープンアライアンス「The Autoware Foundation」も2018年12月に誕生し、世界での一層の普及の号砲はすでに鳴らされている。日の丸自動運転OSが世界各国で自動運転社会の実現に貢献していく。
【参考】関連記事としては「オープンソースの自動運転OS「Autoware」普及へ国際業界団体設立」も参照。