自動運転・MaaS領域での事業開発支援を本格化【ストロボ・下山哲平】

3者マッチングで「成功確率」を高める



事業開発支援サービスについて語るストロボ代表取締役の下山哲平

自動運転車をまだ「夢の乗り物」だと思っているとすれば、それは巨大なビジネスチャンスを逃すリスクとほぼ同義であると言える。

自動運転タクシーは既にアメリカでグーグル系ウェイモが一部エリアで商用サービスの提供を開始し、中国でも実用化・実証が進んでいる。日本では今年4月に道路交通法と道路運送車両法の改正法が施行され、「自動運転レベル3」に相当する条件付き自動運転が解禁された。


自動運転化により人が運転から解放されることに着目し、車内向けサービスの開発に取り組む企業も増えてきた。巨大マーケットの誕生を前に二の足を踏む企業は、こうした次世代のビジネスの波から取り残される。

2018年5月に株式会社ストロボ(本社:東京都港区/代表取締役社長:下山哲平)が開設した当メディア「自動運転ラボ」は、業界の発展に寄与することを目的に情報発信を続けているが、「実証から実用化」の時代を迎えている自動運転・MaaS領域の盛り上がりは想像以上だと感じている。

そんな中で自動運転ラボを運営するストロボはより業界の発展を後押しするため、新たに両領域における事業開発を支援するサービスを本格的に展開する。今回はストロボ代表の下山が語る事業開発支援サービスの概要を紹介する。

■3者協業のマッチングで「成功確率」を高める
Q 自動運転・MaaS領域の事業開発支援サービスの内容や具体例は?

自動運転やMaaS領域において、企業や自治体を含めたマッチングと事業開発のプロデュースがサービスの核となります。


海外で積極的に取り組まれている「無人×商用(一般顧客向け)」のサービスを日本でいち早く実現するためには、「自動車や荷物を運ぶビークルを提供するメーカー」「商品や荷物を扱う企業や関連サービスを開発するスタートアップ」「実証実験できる場所を提供する自治体」の3者の競業が欠かせません。

例えば、無人宅配ロボットを保有している企業がいたとしても、単独では「宅配の自動化」には取り組めません。実際に商品を取り扱っている小売り企業や店舗とタッグを組んではじめて話が一歩前進します。こうした点は小売り側からみても一緒で、自社で無人宅配サービスを構想したとしても宅配ロボを開発している企業と連携しなければ、構想を実現することはできません。そのため、こうした2者を結び付けることがまず重要になります。

さらに、仮に宅配ロボットの開発企業と小売企業のマッチングが成立したとしても、2020年の「今」の段階では宅配の自動化の実証実験をどこでも自由にできるわけではありません。商業施設内など私有地における実証にはほかの企業の協力が必要ですし、公道や公共スペースで実証したい場合には走行許可の取得に協力してくれる自治体なども巻き込まないといければいけません。

このように「無人×商用」という切り口では多くの場合、3者のマッチングが重要になるのです。弊社はその3者の細かいデータも持ち合わせ、市場や技術にも精通しているので、どの企業と企業、どの企業と自治体がうまくマッチングするかを判断できます。


また、無人配送に関連するサービスを開発しているスタートアップについても同様のことが言え、マッチングがうまくいかなければ成功確率が下がってしまいます。

規模が小さく人手や人脈が足りていない優秀なスタートアップは、いいサービスを持っていながら実証のためのビークルや場所をうまく手配できず、実証実験にまでこぎつけないというのが現状です。これは海外に遅れを取っている日本にとっても大きな損失です。そんな状況を打破するのが、自動運転業界に精通する弊社の事業開発支援サービスです。

自動運転は多種多様な技術や部品が組み合わさって初めて実用化に向かうもので、企業間の「共創」が不可欠です。弊社は自動運転ラボの運営を通じ、関連サービスやマーケット、技術をすべて網羅しており、だからこそ共創に取り組みたい企業を適切に結ぶお手伝いができます。

Q 支援サービスの活用により企業が受けられるメリットは?

自分たちが取り組みたいと思っているサービスをしっかり落とし込める相手を、マッチングによって見つけられることです。マッチングの精度が上がれば自ずとサービスの成功確率も上がります。弊社の人脈やネットワークを駆使し、効率よくサービス展開を図ることを支援いたします。

■「確実に成功する実証」からの脱却を支援する
Q 支援サービスの展開を決めた背景は?

個人的に2019年は自動運転に関する「クリエイティブ」な実証実験が少なかったと感じております。

要するに、オンデマンドバスやシャトルバス、低速モビリティを活用した新しい移動方法の提案などといった確実に社会が必要とされるものに関する実証実験は多かったですが、自動運転という新たなテクノロジーを活用することで全く新しい価値や市場を生み出すことが感じられるような実証が少なかったように感じられます。こうした実証実験を私は「クリエイティブな実証実験」と呼んでいます。

2020年こそはこのようにクリエイティブで面白い実証実験が数多く実施される環境がないといけない、と思いました。地方活性化や高齢者の交通課題の解決はもちろん大事なことですが、かたやアメリカの一部エリアでは完全無人デリバリーの取り組みも始まっています。ドミノピザは2017年に既に実証に取り組んでおり、スーパーマーケット最大手のクローガーなども配達実験に取り組んでいます。中国でも新型コロナウイルスの対応策として自動運転ビークルを使ったコンタクトレス配送が導入されました。

2018年ごろまでは実証実験をすること自体に価値がありました。当時は自動運転がまだ珍しかったこともあり、実証に取り組む企業はメディアの露出機会を多く獲得することができました。自動運転技術や自動運転車両を持つベンダーも「どうぞどうぞ」と気前よくクルマを貸してくれていました。

ただこうした需要が増えると、こうしたベンダーはお金を徴収して自動運転車を貸し出して技術サポートも行うビジネスを始めるようになります。実証実験そのものを「受託ビジネス」として展開しても利益が見込めるからです。これは企業として当たり前の流れですが、大きなお金が出せないスタートアップにとってはマイナスです。せっかくお金を出すなら実証を成功させたいと思いますから、「いいサービスだけど成功するかわからない」という実証には消極的になり、確実に成功することことだけをやろうと舵を切ってしまいます。

ただ今の日本はそんな現状を放置してよい段階ではなく、このままでは勢いのある海外勢に負けてしまいます。2020年は法改正により自動運転レベル3(条件付き運転自動化)が解禁され、「無人×商用(一般顧客向け)」も現実的になる中で、さまざまなサービスの構想が生まれるでしょう。その構想を商用化するためには、たくさんのコラボレーションも必要です。弊社の事業開発支援はそんな流れに貢献していきます。

■スタートアップスタジオ構想、前段階として北海道で支援サービス
Q 支援サービスを今後どう拡充させていく?

自動運転を活用したMaaS関連の事業開発のプロデュースを拡充させていきたいと考えています。新規の事業開発にはまず組織戦略が必要です。優秀な人材を集めるための採用戦略の策定や組織づくりからお手伝いしていきます。

将来的には、VC(ベンチャーキャピタル)機能や、ヒト・モノ・カネを集めて事業創出を支援する「自動運転・MaaS特化型のスタートアップスタジオ」を作っていけるように、専門会社化も考えています。

また、カーシェアリングやタクシー、運送会社などを対象とした「移動の新しいマネタイズ方法」の導入に向け、車中広告などの新たな実証実験についても準備中です。

■インタビューを終えて

新型コロナウイルスへの対策として自動運転技術の有用性に注目が集まり、中国では今年後半から来年にかけ、一気に自動運転技術を活用した商用サービスの具体化が進むことが考えられる。そんな中、日本政府も日本の企業もうかうかしてはいられない。

事業開発の動きを加速させるか否かで、将来的なその企業の国内・世界におけるプレゼンスが大きく変わってくる。

ストロボでは本サービスも含めて、自動運転・ライドシェアMaaS領域での事業開発支援サービス、「自動運転領域特化型ブランディング&アクセラレーション支援サービス」を展開中だ。詳しくは「サービスサイト」からも確認できる。

サービスに関する問い合わせはストロボ社のお問い合わせフォーム(https://www.strobo-inc.jp/ba/contact/)から可能だ。

下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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