米アマゾンのクラウドAWS、自動運転やつながるクルマの開発に貢献

東京でAWS Autotech Day 2018



米アマゾンに莫大な収益をもたらしているクラウド事業「アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)」。2018年第2四半期におけるAWSの営業利益は前年同期比84%増の16億ドル(約1800億円)に達し、アマゾンの稼ぎ頭となっている。


そのAWSは、自動運転やコネクテッドカー(つながるクルマ)の開発に躍起になっている自動車業界でも広く導入されている。こうした次世代自動車の開発シーンや実用化にはクラウドサービスの活用が必要不可欠で、AWSの導入が今後も加速していくことが予想される。

そんなAWS事業を日本国内で推進するアマゾン・ウェブ・サービス・ジャパン株式会社が、招待制のイベント「AWS Autotech Day 2018」をエンジニアやR&D(研究開発)担当者など向けに開いた。

このイベントには、AWSを導入して自動運転やコネクテッドカー、位置特定サービスの開発を行う企業などの担当者が講演者として登壇し、次世代自動車の開発に携わる多くの関係者から注目を集める催しとなった。

イベント冒頭では、AWSジャパンの内海英一郎氏が次世代自動車の鍵となるCASE(コネクテッド、自動運転、シェアリング、電動化)におけるデジタル技術のトレンドなどを紹介。ゲストスピーカーとして、名古屋大学発の自動運転スタートアップである株式会社ティアフォーやソフトバンク・ビジョン・ファンドも出資する米オンライン地図スタートアップのMapbox、ヤマハ発動機株式会社なども参加した。


■アマゾン・ウェブ・サービス(AWS)とは?

AWSが公開されたのは2006年7月。AWSは一般ユーザーが利用するサービスというよりも、サービスの開発者が利用するクラウドサービスで、ストレージやデータベース、ネットワーク、コンテンツ配信、IoT、機械学習、分析、管理など、多様なサービスを提供している。

■つながるクルマ開発で活躍するAWS
本田技研工業の事例

イベントにおいて、本田技研工業株式会社からは、IT本部コネクテッド開発部サービス開発課に所属する竹原洋三氏と野上大樹氏が登壇し、ホンダのコネクテッドサービスの歴史や日本と世界で展開するサービスなどについて説明。コネクテッド開発は開発期間が長く、検証の準備が難しいことなどを挙げつつ、AWSを活用して開発を加速させていくことを説明した。

AWSの良いところとして、ウェブコンソールや設定・管理のためのCLI(コマンドインターフェイス)が強力なこと、インターネット上に情報が豊富なことを挙げ、アップデートによって機能改善が頻繁に行われることも高く評価した。

ディー・エヌ・エーの事例

株式会社ディー・エヌ・エー(DeNA)からは、オートモーティブ事業本部基幹システム開発部のモビリティインテリジェンスグループに所属する惠良和隆氏と、システム本部AIシステム部部長の山田憲晋氏が登壇した。


自動運転車両を活用した交通サービス「Easy Ride(イージーライド)」やカーシェアリングサービス「Anyca(エニカ)」、配車アプリ「タクベル」などをオートモーティブ事業として展開していることを説明。強化学習や深層学習などのAI領域においては膨大な計算リソースが必要で、AWSのIoTサービスを活用していることなどを説明した。

ゼンリンデータコムの事例

ゼンリン子会社で、交通・地理情報をインターネット経由で活用するサービスなどを開発・提供する株式会社ゼンリンデータコムからは、アプリケーション第二開発部の髙山敏典氏と渡邉隆氏が出席した。

講演では、車載カメラの画像から交通情報を取得し、機械学習によって交通状況を認識する技術などについても説明。AWSを利用することで物理環境の管理が不要になり、サービスリリースまでの時間が短縮できることなどを紹介した。

ヤマハ発動機の事例

ヤマハ発動機は、スマートフォンのオンデマンド配車アプリで呼び出せる機能を持つ低速自動走行ワンマイルモビリティを紹介。複数車両のリアルタイム位置データ管理などにAWSのサービス「Amazon Kinesis」を活用したことなどを紹介した。

■クラウドと次世代自動車の切っても切れない関係

膨脹する次世代自動車市場は、AWSの利用をより一層加速させるものとみられる。クラウドと切っても切れない自動運転車やコネクテッドカー。開発企業とAWSの取り組みを今後も注視していきたい。


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