【インタビュー】JapanTaxiの自動運転時代の戦い方とは 岩田和宏CTOに聞く

データ販売事業でも収益、タクシーのアセット最大化へ





自動運転ラボのインタビューに応じるJapanTaxiの岩田和宏CTO=撮影:自動運転ラボ

日本最大手のタクシー配車アプリを提供するJapanTaxi株式会社が、東京オリンピックに合わせた自動運転タクシーの運行プロジェクトに乗り出している。タクシー会社にとって自動運転は「敵」という見方をするタクシー事業者も多い中、なぜ同社は自動運転プロジェクトに乗り出しているのだろうか。

JapanTaxiの挑戦はこれだけではない。新たなビジネスの創出で運賃収入に加えた新たな収益源を確保しようとしている。「データ販売ビジネス」だ。ドライブレコーダーの画像や位置情報など、場所や時間に紐付いた情報を「資産」ととらえた取り組みで、花粉センサーまでタクシーに搭載するという計画もある。







挑戦を続けるJapanTaxi。自動運転ラボは最高技術責任者(CTO)の岩田和宏氏にインタビューし、最新の取り組みについて聞いた。

記事の目次

【岩田和宏氏プロフィール】いわた・かずひろ 東京工業大学大学院を卒業後、大手セキュリティ会社で画像センサーの開発に携わる。外資系ベンチャー、スマホ系ベンチャー、mixi、ストリートアカデミーCTOとして活躍後、JapanTaxiに入社。現在は配車アプリなどの開発を統括し、JapanTaxiの車載広告タブレットを展開する株式会社IRISの取締役CTOも兼務している。

■東京五輪タイミングで自動運転タクシーを検討…将来は運行管理事業も
Q タクシーの自動運転化について現在の取り組み情報を教えて下さい。

タクシーを自動運転化し、東京オリンピックの時に定期ルートで東京から会場まで運行させたいと考えています。運行サービスのほかにも、自動運転車の遠隔監視などが構想にあります。例えば、自動運転車両の遠隔監視センターでモニターを見ながら自動運転車の挙動を監視したり、緊急時にリモートコントロールをしたり、という具合です。

Q 研究や実証実験などの状況を教えてください。

現状は学術機関と計画をしていて、運行サービスも自動運転車の監視やリモートコントロールも、もちろん社会実装をしていくのが目標です。今はそれぞれをどのレベルで進めていくのかということを考えているところです。

Q タクシー会社は交通を統制するオペレーターという立ち位置でもあると思います。そういった立場も活かしていきますか?

運行管理は大変です。どのプレイヤーも運行管理ができれば良いのですが、自社で監視センターを設けて、常時モニタリングをして、実際にトラブルが起きたら有人の車両を派遣して、ということは簡単にはできません。

もはやタクシーとは直接は関係ない話にも聞こえるかもしれませんが、我々にはこれまでの事業で培ったコールセンターのシステム作りや運営などのノウハウもあり、こうした点を活かして自動運転車の監視サービスを展開していければと考えております。そしてロードサービスのようなものにも結びつけていきます。

また、タクシーが自動運転化された際のドライバーの働き方も考えています。個人的には、恐らく遠隔自動運転に関しては国がライセンスを作ると考えておりまして、タクシー会社やドライバーは(そういったライセンスを取得して遠隔自動運転を担う)サービサーになるのではと思っています。

雇用的には40万人くらいが業界で働いていますので、国としてもタクシー会社やタクシー業界をどうにかしなきゃいけない、と考えていると思います。

■データを「資産」ととらえて商品化、新たな収益源に
Q 2019年1月の報道発表で触れられていた「JapanTaxi Data Platform」は、タクシーが集めたビッグデータを他社に販売するというビジネスモデルになるのですか。

データの種別として提供できるものといえば、まず「位置情報データ」ですね。例えば東京ではタクシーは街中をくまなく走っていますので、渋滞予測情報は相当な密度でとれます。こうしたデータの販売ターゲットは、ナビゲーション会社さんやマップ系の会社さんです。

またドライブレコーダーをネットワークでつなぎ、画像に常時どこからでもアクセス可能にしたり、街の画像も保存したりするような仕組みにします。既に、高精度な地図データに信号情報や建物情報を加えた「ダイナミックマップ」や「3次元(3D)マップ」の作製に利用したいという引き合いがきています。

こうしたマップの作製などは研究レベルでもたくさんの取り組みが日本国内でもありますが、現時点では元データが少なすぎるという点が課題になっています。企業や研究所の担当者などにお会いする中で、ドラレコ画像が欲しいと相談を頂くケースも増えています。

あと、ガソリンスタンドやコンビニは、開店情報はあっても閉店情報はあまりありません。そこでドラレコ画像の解析によって閉店情報が自動的にラベリングされるようにしています。ドラレコ映像からは高齢者はここによくいるよ、などという情報も分かります。道路の工事状況やガソリンスタンドの表示価格、パーキングの満空状態なども収集できます。

また思いがけない需要もあり、自社内では思いつかないような使い方をお問い合わせいただくこともあるので、今後企業や学術機関などと一緒に、社会のニーズに応えられる有益なセンシングデータを収集・蓄積して行きたいですね。

Q ドラレコ画像は宝の山ですね。位置情報やドラレコ画像以外のリアルタイムデータの収集や提供なども行うのですか?

これからはタクシーに新たなセンサーを取り付け、さまざまなデータを収集していきます。その一例が花粉センサーで、東京中24時間走っている我々のタクシーの強みが活かせます。またワイパーのリアルタイムの動作データも、ゲリラ豪雨の発生予測などにつなげることができる貴重なものです。ドラレコの振動を合わせて道路の轍(わだち)を見つけることができれば、道路の舗装計画の立案に役立つでしょう。

中長期的には考えると、これからどれだけデータを保有して活用できるか、ということが、我々の会社の価値にも直結してくると考えています。

Q 既に「JapanTaxi Data Platform」としての協業例などはありますか。

タクシーの運行実績などを利用してタクシー需要を配信する「配車支援システム」を、トヨタさんやKDDIさんなどと一緒に開発し、試験導入を行なっています。ティアフォーさんとは自動運転社会向けのデータ収集実験を共同で実施しております。

トヨタ自動車などと開発する配車支援システム=出典:JapanTaxi社プレスリリース
■タクシーの強みを活かした「連動型車中広告」の展開計画は?
Q タクシー側は乗客がこれからどこにいくかということが分かるので、それに対しての「連動型車中広告」の取り組みはありますか?

車載デジタルサイネージ「Tokyo Prime」の位置連動広告は可能で、既に商品化もされているのですが、広告自体の満稿状態が続いている状況です。

ちなみに現在はタクシーの乗客が(社長や役員などの)意思決定権者やビジネスマンが多いということもあり、B2B(企業間取引)広告が多く、よく売れます。ただJapanTaxiとしてはもっと色んな人に乗ってもらいたいという思いもあり、今後はもう少しタクシーの顧客の幅を広げ、幅広いターゲットの広告にも対応していきたいと考えています。

運行収入に加えて、広告収入やデータビジネスによる新たな収益源を生み出すことで、タクシー会社、引いてはタクシーに乗車する人へ還元できればと思っています。

中国のDiDiやアメリカのウーバーが日本に進出している中、タクシーが自らそこに挑戦していかなければ生き残れる道は少ないのです。ユーザー、つまり乗る人がいなければ何も始まりません。ですので、そこに対していろんなことをやっていきたい、と考えています。東京オリンピックも開催される2020年に向かって「タクシーもここまでできるんだよ」というのを見せていきます。

Q タクシーの後部座席に設置しているタブレット端末は自社で開発されているのですか?

自社でハードウェア開発部を有しておりますので、改良設計などを含めて全て内製です。ものづくりが早くできます。車載向けの機器は温度や振動などに対する耐久性が必要ですので、そうしたことを踏まえて開発に取り組んでいます。

■社内で続々新事業、挑戦心を忘れないJapanTaxi
Q タクシー呼び出しボタンのような新しいツール開発などはいかがですか?

タクシーの呼び出しボタン(ダッシュボタン)は、既にプロトタイプなどを作ったり、メーカーフェアに出したりしています。ただ実際にダッシュボタンに需要があるのかどうかというのもありますので、今はまだ製品化には至っていないです。ちなみに今は「JapanTaxi」アプリの外部連携を様々なサービスと行なっており、米アマゾンの人工知能(AI)スマートスピーカー「アレクサ」やLINEの「LINE Clova」からも呼ぶことができ、結構それで呼び出して頂いています。

■未来ビジョンに共感したエンジニアが続々加入
Q モビリティ領域で、AIなどの最新の技術をキャッチアップした優秀なエンジニアを集めるのはどこの企業もすごく苦労していますが、そんな中、JapanTaxiとしてどのような取り組みをして採用強化をしていますか。

基本はワクワク感や楽しいというところを見せ、そこに共感してもらうという感じですね。僕が募集要項を考えたときには、データという資産がJapanTaxiにはたくさんあることや自動運転と絡めた未来のビジョンなどを示し、一人一人に共感してもらえて入ってもらった、というところです。

Q 実際御社の求人はエンジニアにどう映ると感じていますか。

JapanTaxiのエンジニア募集に刺さる人の中では、今までアプリやウェブサイトを作ってきた人などが多く、リアルなサービスで社会を動かしたいという思いを強く持っている人もいます。ただ自動運転となるとアカデミックなところまでやっていかないといけないので、そこのハードルはありますね。

■(取材を終えて)新時代のビジネスモデルをJapanTaxiが構築する

交通業界や自動車業界のパラダイムシフトを真正面から直視している——。JapanTaxiの岩田CTOの一言一言からはそうした姿勢を強く感じた。

タクシー業界の常識にとらわれずに挑戦を続けるJapanTaxi。新時代のタクシー業界における最適なビジネスモデルをJapanTaxiが作りだす——。そんな期待を大いに抱いたインタビューだった。







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