資金調達、上場、株価下落…ウーバー時系列ドキュメント ライドシェア、そして自動運転に注力

米中摩擦?リフトの影響?ライドシェア熱は今後高まるのか





2019年5月10日、米ライドシェア大手のUber Technologies(ウーバー・テクノロジーズ)が満を持して株式上場を果たした。長らくユニコーン企業トップの座に君臨してきた同社が、ついに証券取引市場に足を踏み入れた。







すでに大きな話題となっているが、上場後の値動きはどのようになっているのか。過去の資金調達を含め、ウーバー資金の推移をまとめてみた。

■これまでのウーバーの資金調達

ウーバーは2009年3月に前CEOのトラビス・カラニック氏とギャレット・キャンプ氏が設立。以後、資金調達を次々と成功させ、2015年には8度目の資金調達を終え、企業価値が500億ドル(約6兆円)に達し、米交流サイト大手のFacebook(フェイスブック)が創業7年で達成した記録に早くも並んだ。

翌2016年にも投資ファンドから20億ドル(約2200億円)、サウジアラビアの政府系ファンドから35億ドル(約3800億円)の資金調達を実施し、企業価値は600億ドル(約6兆5000万円)規模に達した。

トラビス・カラニック氏から現職のダラ・コスロシャヒ氏へCEOが交代した2017年には、ソフトバンクグループをはじめとした投資家集団とウーバーや主要投資家らとの交渉が明らかにされ、長期折衝の末約80億ドル(約9600億円)の出資が決まり、2018年1月に株式取得が完了した。

ウーバーの評価額(時価総額)は当時680億ドル(約7兆5000億円)超とされていたが、これを480億ドル(約5兆3000億円)と評価し、ソフトバンクグループは株式約15%を取得して筆頭株主の座に就いた。

なお、コスロシャヒCEOは就任後、IPOを18~36カ月以内に実施する方針を打ち出している。

2018年には、協業関係にあるトヨタ自動車が5億ドル(約550億円)を出資し、両社の持つ技術を搭載したライドシェア専用車両をウーバーのライドシェアネットワークに導入するとしている。

■IPO直前にトヨタら日本勢が新たな出資発表

IPOを間近に控えた2019年4月には、トヨタ自動車とデンソー、ソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)の3者がウーバーの自動運転開発部門「アドバンスド・テクノロジー・グループ(ATG)」が基となる新会社に計10億ドル(約1120億円)の出資を行うと発表した。

発表によれば、トヨタとデンソーは6億6700万ドル(約750億円)を、SVFは3億3300万ドル(約370億円)を出資する予定で、時期については2019年第3四半期を目途に完了する予定で、出資後の新会社の企業価値は72億5000万ドル(約8100億円)規模になる見込みという。

【参考】トヨタらの出資については「「ライドシェア企業Uber」の終焉 巨額マネーは自動運転TAXIに」も参照。

■IPOに向けた動きと評価

ウーバーが米証券取引委員会(SEC)にIPOに向けた準備書類を提出したことが2018年12月までに明らかになり、いよいよ同社の上場が現実味を帯びてきた。一部では、上場時の時価総額が2012年のフェイスブック(812億ドル)を超える1200億ドル(約13兆円)規模になるという試算も出された。

ウーバーは2019年4月11日、米証券取引委員会(SEC)にIPOの申請を行った。米メディアの報道などによれば、100億ドル(約1兆1000億円)規模の資金調達を目指すようだ。上場時の時価総額は、900憶~1000億ドル(約10兆~11兆円)前後になる見込み。

【参考】ウーバーのIPO申請については「ライドシェア世界最大手ウーバー、2019年5月に上場へ IPOを申請」も参照。

■株式公開初日の動き

ウーバー株は2019年5月10日、ニューヨーク証券取引所に上場された。発行株数は1億8000万株で、応募は募集枠を上回ったようだが、公開価格は仮条件(44~50ドル)の下限に近い45ドルに設定された。

注目の初値は42ドルで公開価格を下回り、その後44ドル台に上昇するも午後に入って緩やかに下落し、7.6%安の41.57ドルで初日の取引を終えた。

調達額は81億ドル(約8900億円)で、企業評価額は824億ドル(約9兆円)、発行済み株式数に基づく時価総額は755億ドル(約8兆3000億円)となったようだ。

ダラ・コスロシャヒCEOは朝方に出演した米CNBCテレビで「第2のアマゾン・ドット・コムになる」と抱負を語っていたが、終値が付くと、ニューヨーク証券取引所でのインタビューで「米中の貿易摩擦が同社株価のさえないパフォーマンスの一因となった」と述べている。

なお、筆頭株主のソフトバンクグループ株も前日の終値11550円から10925円と約5%値を下げた。含み益期待の後退などが主な要因と思われる。

■公開2日目以降の動き

土日を挟んで公開2日目となった5月13日。始値は40ドル台を割り込み38.79ドルでスタート。その後、特に上昇する気配もなく緩やかに推移し、終値は36.49ドルとなった。時価総額は622億ドル(約6兆8000億円)まで下落した。

3日目の5月14日は38.31で始まり、昼過ぎまで38ドル前後で推移していたが後半に上昇気配をうかがわせ、39.78ドルで取引を終えた。時価総額は667億ドル(約7兆3000億円)。

4日目、5月15日は午前中に40ドル台に回復し、昼頃には41ドル台で推移している(日本時間5月16日午前1時=現地時間5月15日正午時点)。

米ブルームバーグによると、ダラ・コスロシャヒCEOは5月13日、従業員に宛てた電子メールで「当社株はIPO後に期待したほど好調ではない。今日の市場も厳しい1日となっており、同じ状況が見込まれる」とし、「センチメントが一夜で変わることはない。向こう数カ月は公開市場で厳しい時期になると予想する」との見解を示しつつ、フェイスブックやアマゾンを例に出しながら長期的展望へ期待を寄せたようだ。

■伸び悩む要因

ウーバーそのものに対する純粋な評価の現れか、米中貿易に代表されるように不透明感を増す世界経済の影響か。いろいろな見方はあるが、一足早く上場したライバルの米Lyft(リフト)の影響なども考えられるだろう。

リフトは3月29日に上場を果たし、公開価格72ドルのところ87.24ドルの初値を付け、徐々に下げたものの初日は78.29ドルの終値を付けた。しかし2日目には終値69.01ドルに落ち込み、その後は一時74ドル台まで回復したものの4月12日には59.90ドルと60ドル台を割り込み、ウーバーが上場した5月10日には51.09ドルまで下げている。

これまでの資金調達面を含め、関連企業などからの期待は高い一方、リフトの例もあり、一般投資家からは冷めた目で見られているのかもしれない。

■【まとめ】ライドシェア事業の行く末は? ロードマップ策定で将来性を明らかに

低調なスタートを切ったウーバーだが、ライバルのリフトが上場から1カ月半で約40%下げたことを考慮すれば、低いところからスタートした分今後のダメージは少なく、消極的な言い回しになるが希望を持ちやすいかもしれない。

世界経済の影響は免れないにしろ、まずはライドシェア事業における赤字体質から脱却する明確なビジョンを示すことだ。赤字前提となる自動運転開発部門を抱える同社の本質は、プラットフォーマーなのか、新技術やサービスを追求していく開発企業なのか。

リフトとウーバーの株価は、ライドシェア事業そのものに対する市場評価としての側面も当然大きい。今後、中国のDiDiやシンガポールのGrabなど名だたるライドシェア事業者が上場する可能性は決して低くはない。ライドシェアの可能性を明確にする意味でも、リフトとウーバーにはもうひと踏ん張り頑張ってほしいところだ。







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