トヨタ系2018年10〜12月期の決算まとめ 自動運転やMaaS分野で来期に期待感

減益傾向も売上高は増加

B!
2019北米国際自動車ショーで講演する豊田章男社長=出典:トヨタ自動車プレスリリース

トヨタ自動車グループ主要8社の2019年3月期における第3四半期(2018年10〜12月期)の決算が出揃った。米国・中国を中心に不透明感を増す世界の市場において、今期はどのような業績を残したのか。

本家本丸のトヨタ自動車と自動車事業に密接に関わるグループ4社をピックアップし、各社の業績をひとつずつ見ていこう。自動運転やADAS(先進運転支援システム)、MaaSに関連する各社の取り組みについても注目していきたい。

■トヨタ自動車:自動車販売好調に推移、MaaS分野や新サービス「KINTO」にも注目

本丸のトヨタ自動車の第3四半期(2018年10~12月)の販売台数は228万2000台で、前年同期比7000台減とほぼ横ばい。国内では1万3000台増の56万5000台と好調のようだ。売上高は7兆8015億円で、同2.6%の増。営業利益は6761億円で同0.4%増となっている。

当期の連結決算(同4~12月)では、売上高が前年同期比3.1%増の22兆4755億円となったが、純利益は同29.3%減の1兆4233億円だった。経常利益は同13.8%減の1兆7258億円、営業利益は同9.5%増の1兆9380億円。経常利益減少の主な要因として、米国税制改正の影響で前期にプラス要因(2919億円)があったことや、未実現持分証券評価損益の影響(-3954億円)が挙げられる。

なお、通期(2018年4月~2019年3月)予想では、売上高29.5兆円、営業利益2兆4000億円、当期純利益は4300億円下方修正し、1兆8700億円を見込んでいる。

今後の競争力強化に向けては、コネクテッド・MaaS(Mobility as a Service)分野で2018年12月に東南アジアライドシェア大手Grabの車両向けに専用のトータルケアサービスを開発したほか、ソフトバンクとの共同出資会社MONET Technologies(モネテクノロジーズ)の事業を開始。2019年2月には、サブスクリプションサービスを手掛けるKINTO(キント)のサービスも開始している。

電動化においては、1月にパナソニックと車載用角形電池事業に関する合弁会社設立に合意。自動運転関連では、最新の実験車両「TRI-P4」をCES2019で公開し、高度安全運転支援技術「Guardian(ガーディアン)」の詳細なども発表した。

【参考】トヨタの第3四半期決算については「トヨタ決算、売上高は前年同期比3.1%増の22.4兆円に 2021年に「MaaS Sienna」投入」も参照。

■デンソー:将来の成長領域へ投資強める コネクテッド化対応に向けた開発に注力

デンソーの第3四半期連結業績は、売上収益が前年同期比7.6%増の3兆9797億円で、営業利益が同22.6%減の2435億円、四半期利益が同22.4%減の2087億円となった。

欧州や中国市場の減速感があるものの全地域での車両生産の増加や拡販、また2017年11月のデンソーテンの子会社化などにより増収となった一方、営業利益は、将来の成長領域への投資の加速や、トヨタ同様前期に発生した一過性の収益がなくなった影響、前期との費用回収タイミングのズレなどにより減益となった。通期の売上及び営業利益予想については、自動車市場の動向や素材価格の高騰など足元の環境要因を反映し、下方修正することとなった。

製品別売上では、日本での予防安全製品の装着率拡大や日本及び北米でのディスプレイ製品の拡販によりモビリティシステムが同39%増の6557億円と顕著な伸びを見せており、自動車分野合計でも同6.9%増の3兆8359億円となっている。営業利益の減少は一過性の要因が強く、また今期は設備投資を同15%増の4000億円、研究開発費を同12%増の5000億円見込むなど将来の成長領域へ向けた投資などを強めていることから、来季への期待が高まっている。

なお、デンソーは2019年1月に、子会社のデンソーセールス、デンソーテン販売、デンソーテンサービスの3社を4月に統合し、デンソーソリューションとすることを発表。車の電動化や自動運転の進展により事業環境が大きく変化する中、国内アフターマーケット市場においても今後新しい製品やサービスによる高付加価値事業の創出がますます重要になっており、幅広いサービスネットワークなどを持つ新会社を事業拡大の核にしていく構えだ。

また、クラウドを活用した法人向け社有車管理システム「フリートオペレーションサービス mobi-Crews」の販売を開始したと発表している。新たに開発した車載通信端末を車両に取り付け、リアルタイムに車両の情報を収集・提供することで、運行管理や安全運転を支援するサービスとなっている。

このほか、国際電気通信基礎技術研究所とKDDIとともに、ファクトリーオートメーションで次世代移動通信システム「5G」を活用した産業用ロボット制御の実証試験を開始するなど、通信分野やコネクテッド化などに関連した次世代技術の開発や実用化を推し進めている。

■アイシン精機:第3四半期単独では過去最高の売り上げ記録

アイシンの第3四半期連結業績は、売上収益が前年同期比4.7%増の3兆134億円で、営業利益が同13.1%減の1614億円、四半期利益が同13.8%減の1219億円となった。

売上高は、AT(自動変速機)やブレーキ、ボディ部品の販売増加などにより、第3四半期としては過去最高を記録している。一方、営業利益は、先行投資にかかる償却費と研究開発費などの固定費増により減益となり、通期予想では、これらに加えATの販売台数見直しや中国市場の減速による影響の拡大などを勘案し、下方修正することとした。

当期の設備投資は同50%増の3900億円、研究開発費は同9%増の2000億円を見込んでおり、デンソー同様先行投資に力を入れている。

また、電動化に向けた駆動モジュールの開発および販売を行う合弁会社「BluE Nexus (ブルーイー ネクサス)」をデンソーと共同で2019年4月に設立するほか、両社とアドヴィックス、ジェイテクトの4社で、自動運転・車両運動制御などに向けた統合制御ソフトウェアを開発する合弁会社「J-QuAD DYNAMICS (ジェイクワッド・ダイナミクス)」も同時期に設立することとしている。

各社の自動運転・車両運動制御などの技術知見を結集し、開発力を高め国内外への展開を活発化していく方針だ。

■ジェイテクト:イノベーション創発で研究部門を強化、ADAS関係の取り組みも

ジェイテクトの第3四半期連結業績は、売上高が前年同期比7.3%増の1兆1257億円で、営業利益が同12.2%減の488億円、親会社株主に帰属する四半期純利益が同32.8%減の277億円となった。

機械器具部品においては、日本やアジア、北米においてステアリングやベアリングの販売が増加したことに加え、前第3四半期末に富士機工グループを連結子会社化した影響などにより、売上高は前年同期に比べ6.8%増の9977億円となった。また、工作機械においては、日本や北米において販売が増加し、売上高は11.6%増の1280億円を記録した。

一方、営業利益は売価水準の低下や研究開発費をはじめとする費用の増加などにより減益となり、通期連結業績予想数値についても営業利益を180億円下方修正した。

近々の動向としては、2019年2月に同社東刈谷事業場内の一部を改装し、新たな研究開発拠点「JTEKT R&D INNOVATION CENTER Kariya」を開設したほか、東京ジェイテクトビルにもオープンイノベーション拠点「G-JOIN(Ginza JTEKT Open INnovation center)」を開設した。

多様化・高度化が進む研究課題に対してより高度なイノベーションを創発するとともに、大学やベンチャー企業などと連携する体制を整え、研究部門のいっそうの強化を図っていくこととしている。

また、1月に米デトロイト市で開催された「北米国際自動車ショー」の併設展示会「Automobili-D」で、自動運転バス正着制御などのADAS(先進運転支援システム)対応技術の取り組みや、自動運転体感VRコンテンツ「JGOGGLE2」、SBW(ステアバイワイヤ)のデモ機などを展示したようだ。

【参考】ジェイテクトの取り組みについては「ジェイテクト、米開催の展示会で自動運転技術への取り組みなど紹介」も参照。

■豊田通商:自動車生産関連取り扱い増、シンガポールのMaaSスタートアップにも出資

豊田通商の第3四半期連結業績は、収益が前年同期比5.1%増の5兆1060億円で、営業利益が同11.7%増の1652億円、親会社の所有者に帰属する四半期利益が同3.6%減の1098億円の状況で、自動車生産関連取り扱い増加などにより堅調に業績を伸ばしている。

四半期利益の減少は、化学品・エレクトロニクス本部の前期子会社株式の一部売却益によるその他の金融収益・費用の悪化や、機械・エネルギー・プラントプロジェクト本部及び食料・生活産業本部を中心とした持分法による投資損益の悪化などが背景にあるようだ。

本部別では、自動車本部がMaaS(Mobility-as-a-Service)事業の推進を目的にシンガポールのmobilityX社のシリーズA第三者割当増資において、リードインベスターとして出資することを2018年10月に決定し、12月に出資するなどしており、同本部の四半期利益(親会社の所有者に帰属)は、前年同期を26億円(17.9%)上回る172億円となっている。

■減益は一過性、新車発売とMaaS分野で来期に期待感

このほか愛知製鋼なども同様に売上増・営業利益減となっており、自動車本体・部品の製造・販売に直接関わるメーカーは同様の傾向にあるようだ。今期に限っては、総合商社として活動する豊田通商が例外的な結果となっている。

米国・中国をはじめとした世界経済の影響は避けられないものがあり、苦戦を強いられたのは事実だが、今期の営業利益減は一過性とする見方が強く、悲観する動きはほとんど見られない。

トヨタ本体がモネテクノロジーズやキントといったMaaS分野の事業に本腰を入れ始めた転換期でもあり、ガーディアンなどトヨタの自動運転技術のビジョンも次第に明らかになってきており、来季への期待は高まる一方だ。

自動車販売も、2019年春に新型RAV4やスープラの発売が予定されており、連携を強めるグループ各社にとっても大きな強調材料になりそうだ。

B!
前の記事米フォード、「車線維持ベッド」開発で自動運転技術をアピール
次の記事損保ジャパン、自動運転実証向けに新ソリューション「Level IV Discovery」開発 ティアフォーやアイサンと提携
関連記事