最短30分!タクシー会社の「超お急ぎ便」という新マネタイズ策

貨客混載など収益多角化がスタンダードに





配送マッチングプラットフォーム「PickGo」などを提供するCBcloudとタクシー事業者の国際自動車はこのほど、タクシーを活用した新たな買い物代行サービス「超お急ぎ便」を開始した。

コロナ禍を機に貨客混載の取り組みが浸透するタクシー業界だが、この波は一過性に終わらず事業構造に変化をもたらす可能性が高い。







現在、タクシー業界にどのような変化が起こっているのか。「超お急ぎ便」の概要を解説するとともに、その変化を追っていこう。

■「超お急ぎ便」の概要

超お急ぎ便は、CBcloudが提供する「PickGo 買い物代行」のプラットフォームを国際自動車のタクシードライバーが活用することで、スマホ画面からリアルタイムで買い物代行案件を受注可能にするサービスだ。

出典:CBcloud社プレスリリース

PickGoは荷物を送りたい人と運びたい人を結び付ける配送マッチングプラットフォームで、サービスの一環として買い物代行サービスも手掛けている。

一方、国際自動車は2020年5月、新型コロナウイルスの感染拡大に伴いタクシー事業者が国土交通省の許可を受けた上で有償貨物運送を行うことを特例的に認める時限措置を活用し、買い物代行サービスに着手しており、同月中には配車アプリで提携するみんなのタクシーが開始したフードデリバリーサービスとも連携するなど、貨客混載の取り組みに力を入れている。

超お急ぎ便では、国際自動車がこれまでテレフォンオペレーターを介して受注していた買い物代行依頼を、プラットフォームを活用することによりスマートフォンでリアルタイムに受注可能にした。

これにより、タクシードライバーは本業であるタクシー業務の隙間時間を利用し、買い物代行ニーズに柔軟に対応することができるようになった。最短30分で配送することも可能で、国内最速のサービスという。

今回の提携により、国際自動車はタクシー営業のいっそうの収益化を図り、CBcloudはまちなかを走行するタクシーと連携することで、買い物代行ニーズにより迅速に応える体制づくりを進めていく構えだ。

■タクシーの他の新たなマネタイズ策

タクシーにおけるマネタイズが近年大きな変化を見せている。従来の運賃収入を主体とした事業から収益面の多角化が進みつつあるのだ。1つは前述した貨客混載による取り組みで、もう1つがデジタルサイネージを活用した車内広告だ。

タクシーと貨客混載の相性は?

貨客混載は、今回の時限措置以外でも国の過疎対策などを背景に規制が緩和される傾向にあり、旅客自動車運送と貨物自動車運送の両方の許可を取得していれば、一定の条件のもと事業の掛け持ちを行うことができる措置が2017年9月に講じられている。

この措置をもとに、高齢者や過疎地域における買い物難民などを対象にした買い物代行サービスなどを手掛けるタクシー事業者が各地で散見されるようになったが、基本的に福祉要素の強いサービスが主流だ。

こうした状況が、コロナ対策を機に変わりつつある。外出規制によりひっ迫する飲食店経営の打開策としてテイクアウトや出前サービスの需要が急速に高まり、従来とは異なる層の需要が大幅に増加したのだ。

コロナ禍による一時的な需要ではあるが、Uber Eatsのようなフードデリバリーサービスは右肩上がりの傾向にあり、買い物代行サービスを含めた貨客混載についても社会需要は一定程度定着するものと思われる。

ラストワンマイルを担うドライバー不足や社会構造の変化が、旅客自動車運送と貨物自動車運送の各事業法を変えていく可能性は十分考えられるだろう。

【参考】貨客混載については「「究極の貨客混載」は自動運転タクシーで実現する」も参照。

一方、貨客混載の課題として、厳密に空き時間を有効活用できるかが問われる。愛知県豊田市は2020年3月、MaaS実証の中でオンデマンド交通を活用した貨客混載の取り組みを行ったが、ドライバーからは「空き時間に余裕が無いと配達を始められない」といった意見が寄せられた。

予約配車をメインに据えているオンデマンドタイプのタクシーであれば、まさにこの意見に当てはまることになる。ただ、流しのタクシーであれば柔軟に対応可能なほか、配車アプリによって旅客も貨物も同等に扱うシステムが定着すれば問題なさそうだ。

真の課題はつまるところ料金体系に行き着きそうだが、フレキシブルな移動が可能なタクシーならではのサービスとしてビジネス化の道も開けそうだ。

デジタル化とともに進展する車内広告

タクシーにおけるマネタイズ変化のもう1つが、デジタルサイネージを中心とした車内広告だ。キャッシュレス決済や配車アプリの導入などを背景にタクシー車内にタブレット端末を搭載する車両が増加し、その活用策として広告配信サービスも急成長を遂げている。

現在、Mobility Technologies(旧JapanTaxi)系の「Tokyo Prime」とDeNAからMobility Technologiesに統合された「Premium Taxi Vision」、みんなのタクシー系の「GROWTH」、DiDiモビリティジャパンの「DiDi TV」、アイマッチング社が手掛ける「iScene」などが提供されており、配車アプリの導入とともに裾野を広げている状況だ。

ネット広告大手のサイバー・コミュニケーションズなどの調査によると、2019年のデジタルサイネージ広告市場規模は749億円で、このうち約64%を鉄道やタクシーなどの交通関係が占めているという。市場規模は2021年には1000億円規模に達するとみられており、タクシー事業における車内広告にも期待が寄せられるところだ。

■タクシーの新規事業支援を行うサービスも

こうした業界の変化にいち早く対応すべく、新規事業の支援を行うサービスも登場している。自動運転ラボを主宰するストロボは2020年5月、タクシー事業者など交通事業者の新規事業展開を支援する「タクシー等交通事業者向け貨物配送・料理宅配関連事業進出支援・コンサルティングサービス」を開始した。

タクシー事業会社の新規事業展開における課題としては、以下のようなものがある。

  • タクシー事業以外を新たに推進する事業開発人材やデジタル人材の不在
  • 新事業・サービス開始に向けた運転手への教育・育成に関するノウハウの不足
  • PMO(Project Management Office)の欠如

そんな中でストロボは、人の移動総量の減少が見込まれる今後のアフターコロナ(withコロナ)時代に向け、業界のデジタルトランスフォーメーションを呼び掛けている。

新サービスでは具体的には、規制緩和を活用した貨物輸送・宅配関連の事業開発に対するPMOをはじめ、「モノ」の輸送に着目した新規事業戦略立案や新規事業に関する戦略パートナーの選定・アライアンス推進、新たなEC・宅配ビジネスにおけるUI/UX開発、新規事業に関するPR・ブランディング・デジタルマーケティング支援などを手掛けている。

■【まとめ】次世代モビリティ事業者への脱皮を

地方を中心に「配車アプリやデジタルサイネージはまだ必要ない」といった事業者の声がまだ聞こえるが、これはインターネットが普及し始めた90年代に「パソコンは必要な人だけ扱えればよい」といった声が聞こえていたのとほぼ等しい。必然性が高まってからでは時代遅れになるのだ。

デリバリーサービスや買い物代行サービスなども、料金体系や配送エリアなどにより現状需要に大きな差があるが、CBcloudと国際自動車の取り組みのように、サービスに手を加えて需要を喚起するのが本来の経営者だ。

デジタルトランスフォーメーションの波をいち早く受け入れ、新規事業展開を恐れず次世代のモビリティ事業者へとシフトしていく姿勢が求められているのである。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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