SIP第2期の自動運転実証が東京臨海部で順次開始、その全容は?

「インフラ協調型」がキーワード

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戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)第2期「自動運転(システムとサービスの拡張)」として実施する東京臨海部における実証実験が、2019年10月15日から始まった。

自動運転レベル3(条件付き運転自動化)解禁を控えた重要な実証実験と位置付けられるこの取り組みは、どのような中身なのだろうか。その全容について詳しく解説していく。

■今回の実証実験の狙いは?

交通環境が複雑な一般道や交通量の多い高速道路では、車両に搭載されたセンサーのみで自動運転を実現することが難しい。そのため、一般道の交通インフラからの信号情報や高速道路への合流支援情報を活用したインフラ協調型の自動運転技術が必須となる。

今回の実証実験ではこうした背景から、交通インフラ側から提供される動的な交通環境情報を活用した自動運転技術を検証・分析し、技術開発の促進につなげていくというものだ。

実証実験には国内外の機関が参加し、オープンな評価によって国際的な協調や標準化も進めるという。さらに一般の人が試乗する機会もつくり、社会的受容性の醸成も狙う。

■企業や大学など国内外から計28機関が参加

実証実験には、国内外の自動車メーカーや自動車部品メーカー、大学など計28機関が参加する。

自動車メーカーとしては、スズキ株式会社、株式会社SUBARU、ダイハツ工業株式会社、トヨタ自動車株式会社、日産自動車株式会社、BMW株式会社、日野自動車株式会社、フォルクスワーゲン株式会社、ボッシュ株式会社、株式会社本田技術研究所、マツダ株式会社、三菱自動車工業株式会社、メルセデス・ベンツ日本株式会社の10社が参加する。

そのほか民間企業としては、アイサンテクノロジー株式会社、株式会社ヴァレオジャパン、SBドライブ株式会社、Epitomical Limited、コンチネンタル・オートモーティブ株式会社、株式会社ジェイテクト、損害保険ジャパン日本興亜株式会社、株式会社ティアフォー、株式会社フィールドオート、三菱電機株式会社が参加する。

大学としては金沢大学、埼玉工業大学、中部大学、名古屋大学、名城大学の5大学が参加する。

■東京臨海部での実証実験の概要は?

実証実験の実施期間は2020年度末までの予定で、交通インフラの整備や参加者の準備が整い次第、順次プロジェクトが実施される。実施エリアは、臨海副都心部、羽田空港地域、羽田空港と臨海副都心地域を結ぶ首都高速道路だ。

SIPが進める交通インフラの整備は下記の通りとされている。

主な実証実験内容は以下の通りとされている。

■そもそもSIPとは?どんな活動をしている?

そもそもSIPとはどのようなプログラムなのだろうか。

SIPとは「Cross-ministerial Strategic Innovation Promotion Program」(戦略的イノベーション創造プログラム)の略で、内閣府の総合科学技術イノベーション会議が実施する国家プロジェクトのことだ。産学官の連携や自治体や住民や事業者との協働で、基礎研究から実用・事業化までを見据えて研究開発を推進している。

実施府省は、内閣府と警察庁、総務省、経済産業省、国土交通省、NEDO(国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構)で、府省などの枠を越えてプロジェクトに取り組んでいる。

SIP第1期は2014年度から2018年度まで、第2期は2018年度から2022年度までが事業期間。SIP第2期のプログラムディレクターとしては、第1期に続いてトヨタ自動車先進技術開発カンパニーの葛巻清吾氏が就任している。

第1期と第2期ではテーマ名が「自動走行システム」から「自動運転(システムとサービスの拡張)」に変わり、より自動運転技術の実用化を意識した取り組みを強化している。

■【まとめ】自動運転社会実現へ大きな役割

内閣府が主導するSIPプロジェクトは、自動運転社会到来に向けた環境を整えていく上で重要な役割を担う。各実証実験は順次スタートしていく。今後も継続してウオッチを続けていきたい。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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