第32回目となる「未来投資会議」が2019年10月29日に総理大臣官邸で開催され、「Society 5.0」時代の高齢運転者による交通事故対策のあり方や地域モビリティなどについて議論が行われた。
この会議のあと、安倍晋三首相が同会議での議論を踏まえてコメントを述べており、その中で自動運転についても発言している。
具体的には「超低遅延や多数同時接続が可能な、広範な産業用途に用いられるポスト5Gの半導体、情報通信システムは、自動工場や自動運転といった我が国の競争力の核となる技術」と述べた上で、「国際競争力を有する自動車、産業機械といった、完成品メーカーとも協力し、我が国の技術力を結集した国家プロジェクトを検討していく必要があります」としている。
自動運転社会の到来に向けては、さまざまな技術の革新が不可欠だ。安倍首相の今回の発言は、来年日本を含む世界で普及が本格化する次世代通信規格「5G」の次世代(つまり6G)を早くも見据えたものと言え、政府の自動運転施策に対する本気度がうかがえるものと言えるだろう。
【参考】ちなみに6Gについては自動運転ラボが過去に「自動運転と「6G」、進化はさらに」でも解説記事を書いているので、参考にしてほしい。
自動運転と「6G」、進化はさらに 基幹システムもクラウド側に? https://t.co/WLREacxRH9 @jidountenlab #自動運転 #6G #5G
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) September 16, 2019
■国は2014年ごろから本腰、いよいよレベル3も解禁へ
日本政府は2014年ごろから成長戦略の一環として自動運転関連の施策を積極的に打ち出し始めた。同年に内閣府が主導する「戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)」を立ち上げて自動運転を重要課題の一つに位置付け、現在は第2期目に入り、実証実験も繰り返し行われている。
2016年に公表された「官民ITS構想・ロードマップ」では、2020年を目途に自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の市場化を可能する環境を国内で整えることが明記されており、そのスケジュールに合う形で道路交通法と道路運送車両法の改正案が今年可決され、レベル3が解禁されることになった。
また国土交通省は「自動運転戦略本部」を2016年に設置し、自動運転車の事故における賠償に関するルールやトラックの隊列走行、道の駅を拠点とした中山間地域における自動運転サービスなどについて議論や検討を進めている。
国交省だけではなく、経済産業省も自動運転の事業化などに向けた環境を整えるため、国際ルールに対応する体制の整備や産学連携の促進に向けた取り組みに力を入れている。通信インフラや自動運転のための高精度3D(3次元)マップなど、自動車メーカーが1社単独で整備することが難しい分野についても、整備に向けて音頭を取っている。
■自動運転の世界競争、官民が足並みを揃える重要性
日本の自動車産業は世界に誇るものだ。ただ自動運転技術でも世界をリードできるかは今後の取り組みに掛かっている。これまでの自動車よりもシステム開発やソフトウェア開発が重要度を増し、世界のGoogleやAppleなどの海外の巨大IT系企業もこの領域に乗り出しているからだ。
そんな中、官民が足並みを揃えて自動運転社会の環境を整えていくことが、自動運転の世界競争を勝ち抜く鍵となる。安倍首相には今回の発言のように、自動運転に対する積極的な国の姿勢を今後も期待したいところだ。
【参考】関連記事としては「「自動運転×日本国の動き」の最新動向は? 政策やプロジェクトまとめ」も参照。