自動運転車が実用化されることを考えたとき、誰しも求めるのが「安全」と「安心」だ。この安全と安心は似た言葉だがややニュアンスが違う。「安全」は簡単に言えば事故率の低さ、それに対して「安心」は自動運転に対する信頼性、つまり感覚に近いものであると言える。
自動運転車や自動運転サービスの普及は、この安全と安心の両方の鍵となる。いくら事故率が手動の自動車に比べて低くても、安心して乗れるようなサービスでなければ、車両やサービスを利用する人が一気に増えることは難しいだろう。
こうした点を改めて考えさせる調査内容が明らかになった。技術専門家の国際組織「IEEE」がこのほど公表した第3回「ジェネレーションAI 2019:ミレニアル世代の親たちとアルファ世代の子どもたちに関する調査」だ。
■賛否、国によって大きく分かれる
この調査は、「アルファ世代」と呼ばれる9歳以下の子供を持つ「ミレニアル世代」の親たちを対象にしたもの。AI(人工知能)などの最先端テクノロジーと子供の健康に関する意識調査として、米国と英国、インド、中国、ブラジルで実施された。
この調査では、3Dプリンターで作製させた心臓の子供への移植や、老後の世話を子供ではなくAIにさせることなどについて質問されているが、そのほかに「自動運転のスクールバス」についてもたずねている。
その結果によれば、米国とイギリスの親たちの過半数は自動運転バスで子供が通学することについて「あまり賛成できない」という回答している一方で、中国とインド、ブラジルの親たちは過半数が「大いに賛成」と回答しており、全く逆の結果が出ている。
ちなみに数字で言うと、下記の通りだ。
- 米国:あまり賛成できない 58%
- 英国:あまり賛成できない 52%
- 中国:大いに賛成 91%
- インド:大いに賛成 87%
- ブラジル:大いに賛成 67%
■感覚的な信頼度の差が大きく影響?
このように結果が大きく分かれた背景については詳しくは説明されてはいない。ただ手動運転と自動運転の事故率の差などはまだ確かな数値が分かっているわけでもなく、今回の結果は自動運転車に対するいまのところの感覚的な信頼度の差が大きく影響したと考えてもいいだろう。
となれば、自動運転の「安心」度の差が特に普及初期に大きな影響を与えることは容易に予想がつく。もちろん安心度を高めるためにはそもそも事故率を低くする必要はあるが、事故率が手動運転より低くなったあと、そのことを広く周知させる必要性を改めて感じさせる。(そしてみんなが自動運転を利用してくれれば、自動運転の事故率が低い分、交通事故は減り、社会に良いインパクトをもたらす)
ある国で自動運転が普及しやすくなれば、その国の自動運転関連産業も育ちやすい。この領域における国の競争力を高めるという点でも、技術の新興だけではなく、普及に向けて信頼度を高める取り組みも疎かにはできない。
【参考】関連記事としては「「令和」時代、自動運転領域の”超グロース期”に 1000兆円市場形成へ」も参照。
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— 自動運転ラボ (@jidountenlab) April 1, 2019