電動キックボードを展開する企業まとめ ラストワンマイル埋める切り札

LUUP、mobby ride、Wind Mobilityなど

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出典:Limeプレス向けキット

ラストワンマイル」を担うパーソナルモビリティとして世界で注目を集めている電動キックボードのシェアリングサービス。利便性に優れたモビリティとして瞬く間に欧米で普及が進んでいる。

その一方でトラブル事例も多く報告されており、法整備が追い付かない状況が続いている。電動キックボードとはいったいどのようなもので、社会上どのような課題を抱えているのか。

日本における取り組み状況を含め、電動キックボードを取り巻く環境について調べてみた。

■電動キックボードとは?

電動キックボードは、キックスケーター、電動スクーターなどさまざまな呼称があるが、一般的には2輪のボード上に持ち手となるハンドルと電動モーターが付いたタイプが主流だ。

片足をボードに乗せ、もう片方の足で地面を蹴って走り始め、安定したらハンドルに付いているレバーなどで加速や減速を行う。最高時速は20~30キロのものが多いが、中には50キロ超のものもある。航続距離は30~60キロメートルのものが多いようだ。

小型で設置場所を選ばず持ち運びが用意なため、ラストワンマイルを担う新たなモビリティとして注目が高まっており、欧米などでは電動キックボードのシェアリングサービスが急速に伸びている。

使い方は、専用アプリをインストールし、キックボードを検索するとアプリのマップ上に近隣のキックボードの位置情報が表示される。これを基にキックボードを見つけ、QRコードなどで認証して利用する仕組みだ。多くはワンウェイ方式(乗り捨て)が採用されている。

長距離移動には向かないものの、徒歩ではちょっと面倒な距離の移動に最適で、利用者は爆発的に増えているようだ。

■抱える課題

規制やルール作りが整う前にサービスが始まったため、利便性の高さやワンウェイ方式による弊害などが頻発しているようだ。

米サンフランシスコなどでは、歩道などに無造作に放置されるケースが目立っているほか、独占的に利用するためか、敷地内・建物内に保存するケースも出ているようだ。

また、歩道走行による歩行者との接触事故や、車道走行による交通事故も発生しており、すでに死者も出ている。仏パリでは、速度制限や年齢制限、通行禁止ゾーンの設定、歩道での駐車禁止など、さまざまなルール作りが始まっており、法律の制定も進められているようだ。

現状、免許の要否やヘルメットの着用義務、年齢制限、速度制限、走行区分などは国によってまちまちであり、各国で法整備が進められている状況となっている。

日本では、電動キックボードは道路運送車両法上の原動機付自転車に該当すると解されており、前照灯や番号灯、方向指示器などの構造及び装置について道路運送車両の保安基準に適合していなければ、公道において運行の用に供することはできない。当然、原付免許やヘルメットの着用、自賠責への加入なども必要となる。歩道の走行もできない。

このようにハードルが高すぎるため導入には不向きとされているが、シェアリングエコノミーやMaaSの観点から、導入を探る動きも出てきている。

福岡県福岡市は、国家戦略特区制度を活用し、規制緩和に向けた実証を進めている。電動キックボードは、電動アシスト自転車と比較して規格などが小さく危険性が低い点や、事業者が貸し出す場合に限定することで適切な管理を担保できる点などを考慮し、事業者が貸し出す電動キックボードを「自転車」とみなして関係法令を適用できるよう提案している。

一定エリア内において適切な管理体制が構築されている場合は自転車扱いとなる――こうしたルール作りが進めば、日本においても電動キックボードのシェアサービスがヒットし、ラストワンマイルを埋めるパーソナルモビリティとして確固たる地位を築く可能性は十分考えられるだろう。

■関連事業を展開する日本企業
株式会社Luup(ループ)

電動マイクロモビリティのシェアリング事業「LUUP」を展開する2018年設立のベンチャー企業。東京都渋谷区に本社を構えている。

2019年3月、渋谷区観光協会とシェアリングエコノミー協会と協働し、まちなかで電動キックボードを手軽に借りられるサービス「LUUP」の提供を目指すことを発表。同年4月には、電動キックボードを用いた実証実験や公共交通のあり方に関する協議検討、交通政策への相互協力を目的に、静岡県浜松市・奈良県奈良市・三重県四日市市・東京都多摩市・埼玉県横瀬町と連携協定に向けた基本合意を結んだことを発表するなど、自治体との連携に力を入れている。

同年5月には、AnyPay株式会社、Zコーポレーション株式会社、株式会社mymerit、紀尾井町戦略研究所株式会社と、新たなマイクロモビリティ技術の社会実装促進を目的とする「マイクロモビリティ推進協議会」を設立したことを発表した。

同年7月には、三井住友海上火災保険株式会社とともに、電動キックボードの保険制度を構築したことも発表している。

実証実験関連では、同年6月に多摩市の多摩中央公園、7月に浜松市の「はままつ フルーツパーク時之栖」と福山市の福山市中央公園でそれぞれ実施したほか、経済産業省主催の「多様なモビリティの普及促進のための展示・試乗会」では、3輪タイプで着座できる電動マイクロモビリティ「低速電動ウィールチェア」も発表している。

株式会社mobby ride(モビーライド)

2017年に設立されたシェアリングモビリティ事業を手掛けるベンチャー。東京都港区に本社を構えている。

2018年12月、新テクノロジーの社会実装を進めるAnyPay株式会社(本社:東京都港区)が提案した電動キックボードを活用したシェアモビリティ事業が、スタートアップの拠点化を目指す福岡市の「実証実験フルサポート事業」に採択され、電動キックボードのシェアリングサービス「mobby」の試乗体験会が2019年3月、福岡城さくらまつりの開催に合わせて行われた。

体験会参加者を対象としたアンケートでは、回答数396人のうち、操作性を「とても簡単」「簡単」と回答した人、及び乗り心地について「とても良い」「良い」と回答した人がともに99%に上るなど、好評を得たようだ。

2019年7月には、神戸市が主催するスタートアップ提案型実証実験事業「Urban Innovation KOBE+P」への採択と、丸紅株式会社と電動キックボードシェアリング事業に向けた実証実験に共同で取り組むことを相次いで発表している。

神戸市では、実証実験第1弾として8月9日にメリケンパークで体験会を開催し、経済効果や誘致効果の検証を行うこととしている。

一方、丸紅とは8月11日、18日の2日間、静岡県浜松市の浜松市フラワーパークで電動キックボードの乗車イベントを実施し、利便性や快適性、ニーズに関するユーザーの声を集め、今後のシェアリング事業実現に向けた経済効果、集客効果などの検証を行うこととしている。

【参考】神戸市とmobby rideの取り組みについては「最近大注目の「電動キックボード」、神戸市で実証実験実施へ ラストワンマイルで注目」も参照。丸紅とmobby rideの取り組みについては「存在感増すキックボードシェア!mobby rideと丸紅、共同で実証実験」も参照。

Wind Mobility Japan株式会社

Wind Mobilityは、世界17都市でシェアサイクルやシェア電動キックボード事業を展開するドイツ生まれのスタートアップ。日本法人も2018年に設立され、日本国内でも事業に着手している。

2019年3月、埼玉高速鉄道埼玉スタジアム線浦和美園駅で、シェア電動スクーターサービス「WIND(ウィンド)」の導入を開始。メディア向けイベントや試乗体験会などを実施し、6月には駐輪ポートを新たに2カ所追加した。

同年7月からは、千葉市と共同で千葉市稲毛海浜公園や海浜幕張駅周辺、千葉市動物公園の公共エリアを対象とした実証実験を随時開始している。

■関連事業を展開するアメリカ企業
Lime

米カリフォルニア州に本拠を構える2017年創業のスタートアップ。時価総額20億ドル超のユニコーン企業で、米国をはじめ世界29カ国、100都市以上でサービスを展開している世界最大手の一角だ。シェアサイクルなども手掛けている。

2018年7月には、米ライドシェア大手のウーバーや米グーグルの持ち株会社アルファベットをはじめとする投資家グループから総額3億3500万ドル(約360億円)の出資を受け、ウーバーとは戦略的パートナーとして提携も交わしている。

「TechCrunch Japan」が報じたところによると、早ければ2019年中にも日本市場への参入を考えているようだ。

Bird

Lime同様米カリフォルニア州に本拠を構える2017年創業のスタートアップで、時価総額は20億ドルを超える。電動キックボードに特化した事業展開により、世界100都市以上でサービスを行っている。創業者はライドシェア大手のウーバー、リフトで役員を務めた経歴を持つ人物で、シェアリング事業はお手の物のようだ。

2019年6月には、自転車のような形をした2人乗りモデルを発表し、試験運用を進めるようだ。

Spin

Lime、Birdとほぼ同時期にサンフランシスコで電動キックボードノシェア事業をスタートさせたスタートアップ。2018年11月に米自動車大手フォードに買収され、傘下に収まっている。

現在約50都市でサービスを展開しており、2019年夏には安全性や航続距離などを改善した新型モデルを発表し、Lime、Birdを追撃する構えのようだ。

■欧州勢について

欧州では、独ベルリンに本拠を置くTierやCirc、スウェーデンのVoi、独自動車大手のダイムラー傘下企業が運営するhiveなど、MaaSの広がりとともに電動キックボードへの参入も増加しているようだ。

2019年5月には、陸上男子短距離で世界を沸かせたジャマイカのウサイン・ボルト氏が共同出資者に名を連ねる「Bolt Mobility」もフランスでサービスを開始することなども発表されている。

中国勢について

中国は、日本同様電動キックボードの規制が厳しく、公道では実用化されていないようだ。

■【まとめ】導入に向けた動きは世界的に加速 日本でも議論活発に

安全対策や利用マナーの徹底、そしてルール作りが必須だが、普及や導入に向けた動きは日本を含め世界的に加速しており、電動キックボードが移動サービスの中に組み込まれる日はそう遠くないような印象を受ける。

サービス内容は各社ほぼ横並びの状況だが、2人乗りや着座できるモデルなど多様化が進み始めており、多量の荷物を運べるモデルや高齢者も安心して乗ることができるモデルなど、他社との差別化を通してより機能的なモデルが増えてくるものと思われる。

日本においても実証が各地で始まっており、今後、法整備も含めた議論が活発化することは間違いない。まずは、福岡市のような特区や公園内などでの実用実証の結果を心待ちにしたい。

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