自動車メーカー14社から構成されている一般社団法人自動車工業会(所在地:東京都港区/会長:豊田章男)=自工会・JAMA=は2019年8月、国土交通省の「第2回・自動運転に対応した道路空間に係る検討会」で、自動運転の実用化に向けた取り組みを紹介した。
政府が高速道路での自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の実現目標を「2020年」と据える中、JAMAはその目標の達成も視野にどのような取り組みを行っているのだろうか。同検討会で公開された資料や公式サイトでの発表を基に紹介していこう。
■「自動運転ビジョン」の取りまとめ
日本自動車工業会は2015年11月、東京モーターショーで開催したシンポジウムで、検討会での議論を経て取りまとめた「自動運転ビジョン」を発表している。その資料は「自工会 自動運転ビジョン」から閲覧できる。
この資料の中では、自動運転技術についての目標として「事故ゼロ、渋滞ゼロ、自由な移動と高効率な物流」が掲げられており、技術の役立て方や基本的な考えを示したほか、現在のクルマ社会における課題とその課題を解消するための挑戦などについて触れている。
さらには、自動運転の展開シナリオを描くためには「自動運転技術の枠組みの整理」「共通基盤技術」「制度・インフラ」の3要素を並行して考える必要があるとも指摘しており、具体的な展開シナリオとして下記を掲げた。
~2020年:自動運転技術の実用化、導入期
~2030年:普及拡大、展開期
~2050年:定着、成熟期
■自動運転用の高精度地図に関する推奨仕様書の取りまとめ
日本自動車工業会は、自動運転に不可欠な「高精度地図」の標準化に向けた取り組みとして、地図に含めるべき地物情報や属性、取得位置、取得基準などに関する「推奨仕様書」を取りまとめている。その内容は「自動運転用 高精度地図に関する推奨仕様書」から確認することが可能だ。
この推奨仕様書は、日本自動車工業会に加盟する各社の共通認識をまとめたもので、2016年11月にJAMA内の自動運転検討会によって発表された。地物情報は全部で68項目が挙げられており、停止線やバス専用レーンなどの道路上の情報から、ガードレールや電柱、標識など多岐にわたっている。
それぞれの地物についてさらに詳しい内容も示されており、例えば「停止線」では、「線幅」と「関連:参照する信号機」と具体的に規定されている。資料は全8ページなので、関心がある人はぜひ内容を読んでみてほしい。
■東京五輪に合わせて実証実験を実施へ
日本自動車工業会は政府の戦略的イノベーション創造プログラム(SIP)と連携し、2020年の東京オリンピックに合わせて自動運転の実証実験とデモンストレーションを実施することを計画している。
実施場所は、羽田空港近辺や臨海副都心の一般道と高速道路などとされており、自動運転レベル2(部分運転自動化)〜自動運転レベル4(高度運転自動化)を試す予定となっている。
この実験に向けて日本自動車工業会は現在、高精度地図やインフラなどの整備を進めており、関係省庁とも実施に向けた調整に取り組んでいる。日本自動車工業会は資料の中で「実証成果をレガシーとして、将来モビリティーの基盤とする」と説明している。
【参考】関連記事としては「自工会、東京五輪直前にトヨタ自動車など10社参加の自動運転実証 レベル2〜レベル4相当」も参照。
■【まとめ】いよいよレベル4の実証実験
トヨタを含む日本の大手メーカー各社が所属する日本自動車工業会の取り組みは、官民をつなぐ意味でも非常に重要だ。早い段階からビジョンの取りまとめを進め、来年はいよいよ世界から注目される実証実験を実施する。日本における自動運転の早期の実用化に向けた大きな一歩として、大いに注目したい。
【参考】関連記事としては「【最新版】自動運転車の実現はいつから?世界・日本の主要メーカーの展望に迫る|自動運転ラボ」も参照。