自動運転開発のGM Cruise、3兆円企業に!ウォルマートも出資

モビリティを使った「サービス」に本格着手



出典:Cruise公式サイト

自動車メーカー系の自動運転開発で世界をリードする米GM Cruise(以下クルーズ)。自動運転タクシーでは米Waymoに先行を許しているものの、サービス実証や海外における本格導入の話題が相次いでおり、まもなく猛追が始まりそうな勢いだ。

クルーズのこれまでの取り組みを振り返りながら、同社の自動運転戦略に触れていこう。







■クルーズの取り組み
相次ぐ資金調達で企業価値は3兆円超に

まず、クルーズの歴史を資金調達の面から振り返ってみよう。

2013年創業のクルーズは、2016年にGMに買収された。買収額は公表されていないが、複数のメディアが10億ドル(約1,100億円)以上と報じている。以後、「GMクルーズホールディングスLLC」として運営されている。

GM傘下に収まった後も資金調達は盛んに行われており、2018年にはソフトバンク・ビジョン・ファンド(SVF)から総額22.5億ドル(約2,400億円)の投資を受けることを発表した。

自動運転技術の大規模に商業化が目的で、取引終了時に9億ドル、そして自動運転車の商用展開の準備ができ、規制当局の承認を得た時点で残りの13.5億ドルを支払う内容となっている。

同年、ホンダも陣営に加わり、自動運転技術の活用に向けて協業を行うことを発表した。協業に向け、ホンダは7億5000万ドル(約810億円)を出資するほか、事業資金として今後12年間に渡り約20億ドル(約2,200億円)を出資する予定としている。その後も、2019年にGMやSVF、ホンダを含む投資家から改めて11.5億ドル(約1,200億円)を調達している。

2021年1月には、GMとともに米マイクロソフトと長期に渡る戦略的提携を結んだと発表した。マイクロソフトのクラウド・エッジコンピューティングプラットフォーム「Azure」を活用し、独自の自律型車両ソリューションを大規模商品化する計画で、マイクロソフトはGMやホンダなどと協力し、クルーズへ20億ドル(約2,200億円)を超える新規株式投資を行い、クルーズの評価額を300億ドル(約3兆2,400億円)にするとしている。

2021年4月には、実施中の投資ラウンドに米小売り大手のウォルマートが参加し、調達額が27億5,000万ドル(約3,000億円)に達したことを発表している。

ウォルマートとは2020年11月にパートナーシップを結んでおり、年明けからクルーズの自動運転車を活用した非接触配達のパイロットプログラムをアリゾナ州スコッツデールで実施している。

サービス実証加速、ドバイでは2023年に本格導入スタート

次に、クルーズの自動運転開発やサービスの動向に触れていく。

クルーズはGM買収前からGMブランドのシボレーボルトEV(電気自動車)に自動運転システムを後付けする形で開発を進めていた。買収後は、GMの大量組立ラインで生産できるようプラットフォームとなるハードウェアの開発にも着手し、第2世代、第3世代のテスト車両を生み出している。

ハードウェアとソフトウェアのシームレスな統合を図ることで、自動運転の安全性をいっそう高めるとともに大量生産可能な体制を構築しているのだ。

同車両は、配車サービス大手Lyftとの提携のもと、クルーズ社員向けのライドシェアサービスに使用されている。なお、当初予定では2019年に自動運転技術を活用したサービス実用化に着手するとしていたが、安全性をより高めるため計画は延期している。

2020年1月には、シボレーボルトEVとは別に、全く新しいオリジナルの自動運転車「Origin(オリジン)」を発表した。ハンドルなど人間による制御装置を備えない自動運転仕様で、箱型ボディで室内空間を広く確保している。時期は未定だが、こちらも量産化を視野に入れている。

【参考】関連記事としては「GM Cruise、ハンドルなしオリジナル自動運転車を発表!」も参照。

クルーズの自動運転実証は、純粋な走行テストに加えサービス実証も大きく進み始めた印象だ。新型コロナウイルスの流行が顕著となった2020年4月には、サンフランシスコで食事配達サービスなどを行うNPO法人のSF Marin FoodBankとSFNew Dealに車両を提供し、同年7月までに5万回を超える配達を行ったという。

2021年1月には、GM、ホンダとともに日本における自動運転モビリティサービス事業に向け協業することを発表し、2021年中にシボレーボルトEVをベースとした試験車両を活用した技術実証を開始し、将来的には自動運転モビリティサービス事業専用車両「オリジン」を活用した事業展開を目指す方針としている。

また、2021年4月には、ドバイ道路交通局(RTA)と首長国で自動運転タクシーと配車サービスを運営していくことに合意したと発表している。独占契約のもと、2023年に運用を開始し、2030年までに4,000台まで拡大する計画としている。

【参考】ドバイでの取り組みについては「自動運転タクシーを独占的運行!GM Cruise、ドバイで2023年から」も参照。

■自動運転モビリティサービスに注力

GM、クルーズ、そしてホンダを加えた陣営による自動運転実用化に向けた取り組みは、この1、2年で大きく動き出した印象だ。

ここまでに名前が挙がったホンダやLyft、RTAなどは、いずれも移動サービス用途で自動運転技術を活用する計画を打ち出している。自動車メーカー系の自動運転開発企業においても、自家用車向けではなく、まずモビリティサービス用途で実用化とビジネス化を加速し、世界展開を図っていく構えのようだ。

こうした戦略を視野に入れているからこそ、クルーズはGMに買収された後も完全に吸収合併されず、GM本体と切り離した子会社として運営されているのかもしれない。各社と広くパートナーシップを結び、資金調達しながらビジネス化に向け取り組みやすい体制を維持するためだ。

また、ウォルマートとのパイロットプログラムや新たな投資にも注目だ。これは、物流分野、モノの移動領域への自動運転技術の活用を見越したものとなっている。

今後も移動サービスや配送サービスで新たなパートナーシップが結ばれる可能性は非常に高い。また、豊富な資金力を背景に独自の製造ラインを構築し、量産化に向けた取り組みを大きく前進させることも考えられそうだ。

■【まとめ】日本国内での展開にも要注目

自動運転サービスの実用化に向けアクセルを強く踏み込み始めたクルーズ。ホンダやソフトバンクとの関係が示すように日本市場も例外なく視野に入っている点も要注目だ。

GM・ホンダという自動車メーカーをバックボーンに据えつつもスタートアップ気質を存分に発揮し、先行するWaymoを猛追する時期はそう遠くない将来訪れそうだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。同業上場企業とのJV設立や複数のM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立。設立3年で、グループ4社へと拡大し、デジタル系事業開発に従事している。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域最大級メディア「自動運転ラボ」立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術・会社の最新情報が最も集まる存在に。
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