中国のスタートアップ企業Pony.aiは新たに2億6,700万ドル(約270億円)の資金調達に成功し、時価総額を53億ドル(約5,400億円)へと伸ばした。もはや堂々たるユニコーン(企業価値が10億ドル以上の非上場企業)だ。
Pony.aiに関わらず、中国のユニコーンの中には、自動運転関連の取り組みを進めている企業が多い。今回は、米調査会社のCBインサイツで公表しているユニコーンランキングから、自動運転に関連する中国ユニコーンの上位5社を紹介していく。
記事の目次
■Didi Chuxing:時価総額620億ドル
Didi Chuxing(滴滴出行:ディディチューシン)は、5億人以上が利用する世界最大規模の交通プラットフォーム「DiDi」を世界400都市以上で提供しているライドシェア企業だ。
同社が自動運転分野に本格参入したのは2016年だ。自動運転について研究する部門を立ち上げ、2017年には米国にAI(人工知能)をベースにセキュリティや自動運転技術を研究する「DiDi Labs」を設立している。
2019年には、自動運転開発部門を独立させてDiDi Autonomous Driving社を設立し、研究開発を加速している。2020年6月には上海で自動運転タクシーの試験サービスを開始し、2030年までに100万台の自動運転車を導入するという計画を発表している。
■SenseTime:時価総額75億ドル
2014年に香港中文大学のマルチメディアラボを母体として設立されたSenseTime(センスタイム)は、AIを活用した顔認識技術などを手掛ける香港企業だ。画像アプリ「SNOW」の顔認識技術を手掛けたことでも知られる同社は、自動運転領域にも力を入れている。
2016年に日本法人を設立し、2017年には自動運転とADAS(先進運転支援システム)技術に関してホンダと5年の共同開発契約を締結したことで話題となった。
2019年1月にはAIが運転を学習する場所として、茨城県常総市の自動車学校の跡地を活用し、テストコース「AI・自動運転パーク」も開設している。
■Pony.ai:時価総額53億ドル
冒頭も紹介したPony.aiは、中国の広東省広州市に本拠を構える自動運転スタートアップだ。中国ですでに自動運転タクシーの実証実験を始めており、自動運転タクシーの開発を軸に、自動運転トラックの開発なども進めている。
技術の高さには定評があり、アメリカで自動運転タクシーの商用サービスをスタートさせたグーグル系Waymoのライバル的存在と目されることもあるほどだ。トヨタなどからの出資も受け、自動運転領域で強い存在感を示している。
■BYTON:時価総額25億ドル
BYTON(バイトン)は、BMW出身のエンジニアが2017年に立ち上げた新興EV(電気自動車)メーカーだ。将来的に自動運転レベル4を可能とした車両を発表する計画で、自動運転技術を生かすため、従来のセダンの型にとらわれない発想を導入しているようだ。
資金調達も順調で、2017年の段階でアメリカ支社を開設している。2020年にレベル4の実現を掲げており、年内に新たな発表があるか気になるところだ。
■TuSimple:時価総額10億ドル
中国で起業し、現在は米中に拠点を有するTuSimpleは、自動運転トラックを開発する中国発ユニコーンだ。自動運転レベル4の技術開発に取り組んでおり、2018年からアリゾナ州で自動運転トラックの実証実験を開始している。
2019年8月には米物流大手UPSから出資を受け、2020年4月にはドイツの自動車部品大手ZFと提携し、自動運転トラックの実用化に向けて着実に前進しているようだ。
■【まとめ】躍進が目立つ中国ユニコーン
自動運転領域で躍進が目立つ中国ユニコーン。将来有望な事業領域に力を入れていることもあり、ペンチャーキャピタルや大手企業からの出資も相次いでいる。実証実験の取り組みも盛んだ。社会実装に向けた各社の今後の技術の開発動向に注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転業界マップ「2019年春 最新版」をリリース 全182企業・機関・ファンドを掲載」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)