自動運転車の実現にはクラウドサービスは不可欠だ。そんな中、AmazonやGoogle、Microsoftなどが、自社のクラウドサービスのシェアを自動運転分野でも高めようと、すでに動き出している。
記事の目次
■Amazon(Amazon Web Service):大手自動車メーカーとの協業を拡大中
クラウド分野で30%以上のシェアを誇る「Amazon Web Service」(AWS)。AWSはADAS(先進運転支援システム)と自動運転車の開発および展開を支援するサービス一式を提供しており、大量データの高度な処理能力を生かしてこの分野に参入している。
2020年8月にはトヨタグループとAWSの協業が強化された。この協業強化では主に「コネクテッド」の分野に焦点が当てられていたものの、自動運転も視野に入っていることは間違いなさそうだ。
ちなみに、AWSのウェブサイトでは、TRI(トヨタ・リサーチ・インスティテュート)がAWSを用いて自動運転のディープラーニングモデルを構築していることが紹介されている。
2021年2月には、ダイムラーの自動運転関連子会社が自動運転トラックの実用化に向け、クラウドサービスとしてAWSを選択したことが発表された。
■Google(Google Cloud Platform):GPUとCloud TPUによる処理速度が特徴
Google系Waymoが商用展開する自動運転タクシーでは「Google Cloud Platform」(GCP)が活用されている。
自動運転のための膨大で複雑なシミュレーションを行うために、GPUとGoogle Cloud TPU(Tensor Processing Unit)を組み合わせ、AIを高速で処理させるためのCloud TPUを構築している。
フォードは2021年2月、GCPを優先的に採用すると発表した。今後中国を除く世界のほとんどの市場において、GCPを利用していく予定となっている。
フォードがGoogleを選択したのは、GCPのAIや機械学習、データ分析テクノロジーの能力が高いと判断したからだ。ちなみにGoogleとフォードはコラボレーショングループ「Team Upshift」を設立し、両社のイノベーションを加速させる計画を立てている。
クラウド市場におけるGCPのシェアでは10%に満たないが、AIや機械学習といった高度な処理の部分は高く評価されており、自動運転関連の分野での採用が今後目立っていきそうだ。
■Microsoft(Microsoft Azure):GM Cruiseが採用、自動運転車の商用化を加速
マイクロソフトはコネクテッドカー向けプラットフォームを「Microsoft Azure」上で提供するなど、以前から自動車向けのソリューションを豊富に提供してきた。
フォルクスワーゲン(VW)はマイクロソフトと関係が深い自動車メーカーで、2021年2月にはVWの子会社がMicrosoft Azureを活用し、自動運転技術の開発を加速させるプラットフォーム「Automated Driving Platform(ADP)」を構築したと発表した。
報道発表によれば、Microsoft Azureの計算機能やデータ処理機能を通じ、自動運転機能の検証・展開・運用を迅速化することが可能だという。
一方、2021年1月にはマイクロソフトがGM Cruiseに対して投資を行っており、この際にCruiseがMicrosoft Azureを活用して自動運転車の商用化を加速させることと、GMがマイクロソフトを優先クラウドプロバイダーにすることが発表されている。
■【まとめ】三つ巴のシェア争いに注目
いずれのクラウドサービスも、自動車向けソリューション、特に自動運転に向けた分野に積極的に取り組んでいる。自動運転分野に関しては車両そのものの開発競争だけではなく、Amazon、Google、Microsoftがそれぞれ展開するクラウドサービスの三つ巴のシェア争いにも注目だ。
【参考】関連記事としては「自動運転とデータ通信…V2IやV2V、5Gなどの基礎解説」も参照。
大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)