テスラ 自動運転FSDをTAD(Tesla Assisted Driving)に名称変更 運転支援という意味を明確に

各国で違う名称になり得るのか



米EV大手テスラ(Tesla)が、運転支援機能FSDの名称から「自動運転」を外した。10月8日、欧州の複数国のWebサイトで「Full Self-Driving(完全自動運転)」を「Tesla Assisted Driving(テスラ運転支援)」に切り替えている。


きっかけは、ドイツ政府の指摘だ。EUの承認は早くても12月となる見込みだ。

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■FSD(Full Self-Driving)からTAD(Tesla Assisted Driving)に改名

テスラ運転支援機能FSDの改名が確認されたのは米国時間の10月8日だ。従来の正式名称は、監視付きを意味する「Supervised」を添えた「Full Self-Driving (完全自動運転)」だった。それがTAD「Tesla Assisted Driving(テスラ運転支援)」という名称に変わる。

このシステムは、自動運転レベル2の運転支援にあたる。システムが加減速や操舵を支えても、運転の責任はドライバーにある。

【自動運転ラボの視点】
名称から「自動運転」が消え、運転支援と無人運転の線引きが名称面でも進んだ。ロボタクシーなど無人運転の実用化が進むほど、運転支援に完全自動運転を思わせる名を付ける売り方は通用しにくくなるだろう。

【参考】関連記事としては「テスラの自動運転機能(FSD)とロボタクシーを徹底解説」も参照。


■ドイツが指摘 テスラFSDは「誤解を招く名称」

ドイツ連邦交通省は10月6日、テスラの運転支援システムの承認に関する見解を発表した。シュテフェン・ビルガー(Steffen Bilger)連邦交通大臣は、EUで進む承認手続きについて、早期の承認を目指して働きかけると表明している。

同省は名称にも言及した。FSDという名称は、運転のすべてを担うシステムだと受け取られかねず、やや誤解を招くという。実際は加速、ブレーキ、操舵といった運転の一部を支援する機能で、ドライバーは常に注意を払う必要がある。この指摘に対し、テスラが「Tesla Assisted Driving」への改名を申し出た。

経緯はこうだ。ビルガー大臣は9月にテスラと協議し、技術面の課題や事故が起きた際の責任について話し合った。大臣は、短期間で共通の理解と前向きな合意に達したと説明している。

合意には速度の扱いも含まれる。運転支援システムが制限速度を超えてよい幅を、最大10%までとすることで、同省とテスラは一致した。ドイツはこの考え方を、EUの手続きでも前向きに支える姿勢だ。速度超過はEUの議論でも大きな論点になっており、スウェーデンやフランスなどが懸念を示している。


テスラのイーロン・マスクCEOはSNSのXで、ドイツ語の「Danke Schön!(どうもありがとう)」とビルガー氏に謝意を示した。ドイツの支持は、テスラにとって欧州での承認獲得に向けた追い風だ。

名称を巡っては、ほかの国の当局も同じ見方を示していた。イタリア当局は内部のやり取りで、「Full Self-Driving」という名称と宣伝が、米自動車技術会SAEが定める自動運転レベル3のような上位の機能を備えていると、利用者に思わせかねないと指摘していた。

【参考】関連記事としては「イーロン「自動運転車で渋滞悪化する」」も参照。

■EU承認への険しい道

EU全体の承認に向けた投票は、もともと10月6日に予定されていた。しかし、一部の国が追加の検証を行うため延期され、最短でも12月になる。

承認のハードルは高い。EUの自動車技術委員会で、加盟27カ国のうち15カ国以上が賛成し、その賛成国がEU人口の65%以上を占める必要がある。EU最大の人口を持つドイツが支持に回った意味は大きい。ただ、フランスなど慎重な国もあり、結果は読めない。

先行したのはオランダだ。同国の車両認証機関は2026年4月10日、欧州で初めてFSDを承認した。ただしこの承認は暫定的な位置づけで、当面はオランダ国内が対象とされる。ドイツはこの承認をまだ認めていない。ビルガー大臣は、EUで合意できない場合、ドイツ独自で何ができるかを検討する考えも示した。

【参考】関連記事としては「欧州、ロボタクシーにも「国境通過権」付与か」も参照。

欧州、ロボタクシーにも「国境通過権」付与か

■中国は欧州に先行して改名

中国では、テスラはすでに名称を段階的に上げてきた。2025年3月、最上位の有料機能の名称から「FSD」の文字を外し、「智能辅助驾驶(知能運転支援)」とした。さらに2026年5月下旬、「特斯拉辅助驾驶(テスラ運転支援)」へ再び変更している。価格は6万4000元のまま据え置いた。

つまり、中国は欧州に先立って、英語名で「Tesla Assisted Driving」にあたる名称へ切り替えていた。中国では、自動運転レベル2の運転支援システムに「全自動」「自動運転」といった誤解を招く表現を認めない法規があると、報じられる。

一方、米国は従来の名称を維持している。テスラは米国で「Full Self-Driving (Supervised)」を月額99ドルで販売している。TechCrunchによると、前身の機能であるオートパイロット(Autopilot)は、裁判所がテスラの誤解を招く宣伝を認定したことを受け、今年終了した。それでも主力機能の名称は変えていない。

規制当局が名称を問題視する地域では「運転支援」に寄せ、そうでない米国では従来名を使い続ける。各地の規制に合わせて名称を使い分けるテスラの戦略が、はっきり見えてきた。Electrekは、ベルリンで正直な名称なら、なぜカリフォルニアでは使わないのかと疑問を呈している。

■「自動運転」の名前を外したテスラ

日本でも、テスラはFSDの導入を目指している。テスラジャパンは3月6日、公式Xで2026年中の国内導入を目標に掲げた。日本経済新聞も、橋本理智社長が2026年中の実装を目指すと述べたと報じている。日本では、将来FSDが使えるようになる「FSDケーパビリティ」が、2025年時点で約87万円で先行販売されている。

では、欧州の改名は日本に波及するのか。日本の規制当局が「FSD」という名称をどう扱うかは、現時点で明らかになっていない。ただ、中国と欧州で名称が相次いで改まった以上、日本でも名称と実態の差が問われる可能性はある。今回の改名が示すのは、運転支援と自動運転の境界を、名称で線引きする動きが各国で強まっていることだ。レベル2は運転の責任がドライバーにあり、無人運転のロボタクシーのように責任をシステムが担う自動運転とは別物である。システムが高性能になるほど、その違いを利用者が誤解しない名前が重要になる。「Tesla Assisted Driving」という名称は、その線引きを求める各国の声に、テスラが一つの答えを出した形といえる。日本で名称がどう扱われ、景品表示法などの国内法とどう折り合いが付けられるのか。今後の関心事の一つだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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