
米Google系の自動運転開発企業Waymo(ウェイモ)が、自社で一から設計した新型ロボタクシー「Ojai(オハイ)」の一般向け乗車提供を2026年5月28日に始めた。米EV大手Tesla(テスラ)の2人乗りロボタクシーとは対照的に、4人乗りで快適性を前面に押し出したモデルである。
Ojaiのベースは中国EVメーカーZeekr(ズークル)製のミニバンだ。Zeekrは中国Geely(ジーリー、吉利)ホールディング傘下で、Waymoとの提携は2021年にさかのぼる。車両は第6世代Waymo Driverを初めて搭載し、サンフランシスコ・フェニックス・ロサンゼルスの限定ユーザーに、まずは無料で提供される。
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■ファミリー向けロボタクシー「Ojai」、テスラと真逆の快適性重視
Ojaiの最大の特徴は、ファミリーでも乗りやすい快適性重視の設計にある。車内は4人乗りで足元が広く、後席に向けて3面の大型スクリーンを備える。乗客は画面から車内の温度や音楽を自分好みに調整できる。充電ポートやカップホルダーも用意され、移動中の時間をくつろいで過ごせる空間に仕立てられている。

バリアフリーへの配慮も目立つ。床はフラットで乗降ステップは低く、扉はエレベーターのように開く。点字表示や手すりも備え、車いす利用者や高齢者にも乗りやすい。Waymoはこの車両を、人が運転する市販車を改造したものではなく、ロボタクシー専用に一から設計した初めての車だと位置づける。
対するテスラのロボタクシー「Cybercab(サイバーキャブ)」は、ハンドルもペダルもない2人乗りの専用設計だ。徹底した低コスト化と小型化を狙う2人乗りのテスラに対し、Ojaiは4人乗りで快適性と利用しやすさを前面に出す。同じ専用設計のロボタクシーでも、両社の方向性は対照的と言える。
快適性重視のOjaiと低コスト2人乗りのテスラ。専用設計でも狙いは正反対だ。多人数で快適に運ぶWaymoの設計は、ロボタクシーを日常の移動手段へ近づける一手と言える。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転中は「保険料50%オフ」【世界初】」も参照。
■中国Zeekr製ミニバンがベース
Ojaiのベース車両を手がけるのは、中国EVメーカーのZeekr(ズークル)である。Zeekrは中国の自動車大手Geely(ジーリー、吉利)ホールディング傘下のブランドで、WaymoとGeely陣営の関係は2021年に始まった。5年近くにわたる協業の成果が、今回のOjaiとして実を結んだ形だ。
車両はZeekrのモビリティサービス向けプラットフォームをベースに、中国の寧波で組み立てられる。その後、米アリゾナ州メサのWaymo工場へ送られ、自動運転に必要なセンサー類やソフトウェアが搭載される。中国製の通信・コネクテッド機能は積まれないまま米国へ運ばれる点も、今回明らかになった特徴だ。
興味深いのは、Waymoが車体からZeekrのブランド表記を外していることだ。米国ではZeekrの知名度が高くないため、Waymoブランドへの信頼をそのまま乗客に感じてもらう狙いがあるという。なお、Amazon傘下のZoox(ズークス)とは別の企業であり、混同されやすいので注意が必要だ。
【参考】関連記事としては「アマゾンの自動運転タクシー「Zoox」が有料にできないワケ GoogleのWaymoは530億円と稼ぐ」も参照。
■第6世代Waymo Driverを初搭載 量産でテスラに先行
Ojaiは、Waymoの自動運転システム「第6世代Waymo Driver」を初めて搭載した車両でもある。車体にはカメラ13台、LiDAR4基、レーダー6基に加え、外部の音を捉える受信機を備える。雪道など厳しい天候や路面への対応力が高まり、Waymoが進出できる都市の幅を広げる狙いがある。
第6世代はセンサーの数を従来より大きく減らしつつ性能を高めたとされ、車両一台あたりのコスト低減につながる。これは「ハードウェアが高価すぎる」というWaymoへの長年の批判に応える設計でもある。Chrysler PacificaやJaguar I-PACEといった市販車の改造に頼ってきた従来路線からの転換点と言える。
量産体制でもWaymoは先行する。アリゾナ州メサの工場は年間数万台規模への増産を進めており、まずOjai、続いてHyundai(ヒョンデ)のIONIQ 5を生産する計画だ。Waymoは週あたり約50万回の有料乗車を提供し、3,000台を超える車両を運用する。一方でテスラの監視なしロボタクシーは3都市で約25台規模にとどまるとされ、商業量産という点でWaymoが一歩先んじている。
■3都市の限定ユーザーで無料提供スタート
乗車提供は2026年5月28日に始まった。最初に乗れるのはサンフランシスコ・フェニックス・ロサンゼルスの限定ユーザーで、当面は無料だ。Waymoは利用者のフィードバックを集めながら、今後数カ月かけて対象を広げ、デンバーやラスベガス、サンディエゴといった新都市にも展開する方針を示している。
Waymoはこれまでに累計2,000万回を超える完全無人走行を、11を超える都市で積み重ねてきた。今回のOjai投入は、その実績の上に量産可能な専用車を載せる動きだ。さらにHyundai(ヒョンデ)のIONIQ 5も第6世代Driver搭載車として導入が予定されており、自動運転タクシー市場での車両拡大に弾みがつく。
【参考】関連記事としては「Google無人タクシー、東京都心部で走行開始まで「あと数ヶ月」か?最初は“無人”ではない可能性」も参照。
■「快適性重視」のOjaiが映すロボタクシー競争の新局面
4人乗りで快適性を重視したOjaiの登場は、ロボタクシー競争が新しい局面に入ったことを示している。これまで自動運転タクシー市場の焦点は「無人で安全に走れるか」に置かれてきた。だが量産可能な専用車が出そろい始めた今、競争の軸は「どんな乗車体験を、どれだけの規模で、いくらで提供できるか」へと移りつつある。
ハンドルなし2人乗りで低コストを突き詰めるテスラと、4人乗りで快適性とバリアフリーを押し出すWaymo。二つの方向性は、ロボタクシー市場が一つの正解に収まらないことを物語る。快適性重視のOjaiがどれだけ支持を集めるかは、今後の自動運転タクシー市場の形を占う試金石になるだろう。













