Googleロボタクシーの死亡事故、実は「過失なし」の可能性

過去の死亡事故は2件はいずれも…



Waymo自動運転タクシーが絡む死亡事故がアリゾナ州テンピで発生した。Waymoの自動運転タクシーに衝突したバイクのドライバーが直後に別のクルマにはねられ、死亡した――というものだ。


Waymo車に特段の過失はなさそうだが、これで自動運転タクシーが関係する死亡事故は2件目となった。自動運転実証中も含むと3件目だ。

事故はどのような状況で発生したのか。過去の事例とともに紹介していく。

編集部おすすめサービス<PR>
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント)
転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を
タクシーアプリは「DiDi」(配車アプリ)
クーポン超充実!「無料」のチャンスも!
新車に定額で乗ろう!MOTA(車のカーリース)
お好きな車が月1万円台!頭金・初期費用なし!
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり)
「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今!
編集部おすすめサービス<PR>
パソナキャリア
転職後の平均年収837〜1,015万円
タクシーアプリDiDi
クーポンが充実!「乗車無料」チャンス
MOTAカーリース
お好きな車が月々1万円台から!
スクエアbang!
「最も安い」自動車保険を提案!

■自動運転車が関連した死亡事故の概要

自動運転タクシーに追突したバイクが後続車にはねられる

死亡事故は2025年9月14日深夜、アリゾナ州フェニックスに隣接するテンピで起こった。アリゾナ州立大学テンピキャンパス付近を走行中のWaymoの自動運転タクシーが右折しようと速度を下げ、歩行者を検知したため停止したところ、後続車のオートバイがWaymo車に追突した。さらにその直後、左車線の後続車がオートバイに接触して走り去ったという。

おそらく、Waymo車に追突した勢いでオートバイが左に逸れ、すぐ後方を走ってきた左車線の後続車も避ける余裕がなく衝突した――といった感じと思われる。オートバイのドライバーは病院搬送後、死亡が確認された。


Waymo車は正しくウィンカーも出しており、過失は見当たらない。衝突された後もすぐに停止したという。一番の過失はオートバイで、後方車両も情状酌量の余地があったものと思われるが、逃走したことで厳罰が下される可能性が高まった。

Waymo車に乗客はなく、同社の広報担当者は「Waymoにとって安全は最優先事項。今回の出来事を深く悲しみ、関係当局に全面的に協力していく」と声明を発表している。

事実上もらい事故となるが、営業中の自動運転タクシーが関係した死亡事故にカウントされる。

信号待ちで停車中の自動運転タクシーに後続車が突っ込む

自動運転タクシーが関係した北米初の死亡事故は、カリフォルニア州サンフランシスコで2025年1月19日に発生した。


Waymo車を含む信号待ちの車列に後続車両が勢いよく突っ込み、6台が巻き込まれる惨事となった。この事故で1人が亡くなったようだ。

Waymo車に乗客はおらず、ただ信号待ちをしていただけのため、過失ゼロの完全なもらい事故と言える。事故の影響で車両後部が大破したという。

このように、自動運転タクシーが絡んだ死亡事故は、今のところ第1当事者となる主な過失責任は別の手動運転車にある状況だ。事故を誘因するようなおかしな挙動もしておらず、巻き込まれてしまった感が強い。

レベル3実証中のUber車が歩行者に衝突

次に、自動運転実証における死亡事故を見ていこう。自動運転車が関連する世界初の死亡事故と言われる事例だ。2018年3月18日、アリゾナ州テンピで配車サービス大手Uber Technologiesが開発を進めていた自動運転車が公道実証中、自転車を押しながら車道を横断しようとした女性に衝突し、死亡させた。

事故現場と事故を起こしたウーバーの自動運転車の事故後の写真=出典:米運輸安全委員会

実証車両はボルボ・カーズ製乗用車を改造したもので、衝突被害軽減ブレーキなどもともと備わっていたADASは停止し、自社開発したシステムを作動させていた。運転席にセーフティドライバーが乗っているが、車両は自動運転レベル3相当の実証中とされており、実質的なレベルは自動運転レベル2と思われる。

現場は片側4車線の大きな道路で、被害にあった女性は横断歩道から離れた横断禁止区域で自転車を押しながら横断していた。そこにUber Technologiesの実証車両が最大時速43マイル(時速約70キロ)で近づき、直前まで女性に気付くことなく衝突した。

事故後の調査によると、Uber Technologiesの自動運転システムは横断歩道以外の車道で歩行者を検知するよう設計されていなかったとされている。女性を何らかのオブジェクト(物体)として認識したのが衝突の5~6秒前で、車両と認識したり自転車と認識したり歩行者と認識したり――となかなか特定できなかった上、衝突の1.2秒前になってようやく衝突を回避できないことを認識したという。

さらに問題視されたのが、セーフティドライバーの挙動だ。ドライバーは事故当時、下を向いて携帯電話を閲覧していたとされており、セーフティドライバーの役割を放棄していた。車両からの警告音が発せられたのは衝突0.2秒前とされており、ドライバーが気付いた時には時すでに遅し……という状況だ。

ドライバーは有罪判決を受けたほか、この件を引き金にUber Technologiesは自動運転開発から撤退することになった。

自動運転システムそのものが脆弱だったことに間違いはないが、それを踏まえた上でセーフティドライバーが安全弁として機能していなかったことが要因となる。

【参考】Uber Technologiesの事故については「ウーバーの自動運転車による死亡事故、経緯や原因などの調査結果まとめ」も参照。

■自動運転車と事故

レベル4相当の自動運転に起因する死亡事故は事実上未発生

Uber Technologiesの件は人為的要素が強く、自動運転そのものの事故と言うには異論が認められるところだ。また、Waymoの件については、いずれもWaymo側の過失は限りなく小さい、もしくはゼロで、自動運転タクシーとしての面目はしっかりと保っている。

情報がほとんど表に出てこない中国の状況は不明だが、現状、レベル4相当の自動運転の不具合による死亡事故はまだ発生していないと言える。

NHTSA(米運輸省道路交通安全局)によると、レベル3以上の事故件数は2021年71件、2022年165件、2023年291件、2024年537件、2025年は8月途中までに587件が報告されている。走行台数の増加に伴い、事故報告件数も右肩上がりを続けている。

このうち、人間の負傷具合に関しては、以下となっている。

  • No Injuries Reported(負傷者報告なし)1,335件
  • Property Damage(物的損害のみ)108件
  • Minor(軽傷)127件
  • Moderate(中程度)24件
  • Severe(重傷)7件
  • Fatality(死亡)1件
  • Unknown(不明)32件

死亡1件は、おそらく2025年1月の事故だ。重傷は7件報告されている。これを多いとみるか少ないとみるかは判断が難しいところだ。自動運転車側が第1当事者であるとは限らないことも付け加えておく。

なお、Waymoによると、フェニックスとサンフランシスコでの計5,000万マイル(約8,000万キロ)に及ぶWaymo Driverの走行と人間による運転を比較したところ、負傷を伴う衝突は78%減少、重傷以上の結果を伴う衝突は88%減少、エアバッグが展開される衝突は79%減少したという。

Waymoに関しては、一般的な手動運転に比べすでに安全性で上回る水準に達していることに疑いの余地はないだろう。

死亡事故と紙一重のケースも?

ただ、危うい事故が発生しているのも事実だ。Cruiseの自動運転タクシーは、他車に衝突され自車両の前方に飛ばされた人間に接触し、安全確保のため路肩に移動する際、被害者が車両の下にいることに気付かず引きずったまま移動した。

第1当事者は他車であり、Cruise車は接触後の対応に失敗しなければ大事にならなかったものと思われる。ただ、状況次第では被害者を引きずったことにより死亡させる可能性もあったことを踏まえると、結果論死亡事故にならなかったと言っても間違いではない。

中国では、客を乗せた百度(Baidu)の自動運転タクシーが路肩の工事中の穴に落ちる事故が2025年8月に発生している。穴は車両がすっぽり落ち込むほどの深さだ。幸いにも乗客は軽傷程度で済んだ模様だが、打ちどころが悪ければ……ということは十分に考えられる。

なお、Cruiseはこの事故における事後対応を当局から問題視され、CEO辞任、翌年には親会社のGMの判断により事業停止に追い込まれることになった。

【参考】百度の事故については「中国の自動運転タクシーは、「工事中の穴」に落ちます」も参照。

中国の自動運転タクシーは、「工事中の穴」に落ちます

■【まとめ】自動運転の安全神話はまだ続いている

北米を中心に、レベル4相当の自動運転システムに起因する死亡事故は未だ発生していないと言える。その意味では、自動運転の安全神話はまだ守られていると言えそうだ。

しかし、自動運転システムの水準や交通状況などによっては、死亡事故が紙一重であることも間違いない。各社が自動運転実用化を本格化する今後において、そう遠くない将来自動運転システムの過失が問われる死亡事故が発生する可能性が高い。

そうした際、事後対応を間違えば有力企業でさえ一気に開発中止に追い込まれかねない。また、自動運転に対する社会受容性はまだまだ半信半疑といった感じのため、業界に対する逆風が強まることも考えられる。

その意味では先行開発勢にプレッシャーがかかるところだが、適度な積極性と適度な慎重性の双方を忘れることなく、安全性と利便性を両立させてほしいところだ。

【参考】関連記事としては「【最新版】自動運転車の事故、日本・海外の事例まとめ」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事