「4社目」の自動運転レベル3、またトヨタじゃなかった

ステランティスも展開、欧州勢が席巻?

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出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

自家用車向けの自動運転レベル3実現組に、新たな陣営が加わった。ついにトヨタが!?……と言いたいところだが、ホンダ、メルセデス・ベンツ、BMWに次ぐ4社目はStellantis(ステランティス)となった。

欧州勢の台頭が続くレベル3市場。ステランティスの取り組みとともに、最新動向について解説していく。

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■ステランティスのレベル3の概要

レベル3システム「STLA AutoDrive 1.0」発表

出典:Stellantisプレスリリース

ステランティスは2025年2月、ハンズフリーやアイズオフ運転を可能とする「STLA AutoDrive 1.0」を発表した。車両のインテリジェンス化、自動化、ユーザーエクスペリエンスを進化させるうえで、STLA Brain、STLA Smart Cockpitと並ぶ同社の技術戦略の重要な柱に位置付けられている。

STLA AutoDrive は、アダプティブクルーズコントロールやレーンキープアシストによるレベル 2(ハンズオン)をはじめ、ハンズオフが可能なレベル 2+を高速道路で利用できるほか、夜間や悪天候でも時速 60キロまで利用できるレベル3も提供する。

進化するよう設計されており、最高時速 95 キロの高速運転とオフロード機能の可能性も備えているとしている。

人口密度の高い都市部での通勤者に最適なシステムで、ドライバーは映画鑑賞やメールのチェック、読書、窓の外を眺めるなど、運転以外の作業を一時的に行うことができるとしている。また、サポート対象市場の適用法規に準拠しており、ドライバーは着席し、シートベルトを着用し、指示があればすぐに運転できるように準備しておく必要がある。電話の使用制限など、ドライバーの行動に関する各地域の法律も尊重する。まさにレベル3だ。

シンプルさを重視して設計されており、交通状況と環境条件が一致すると、ドライバーに STLA AutoDrive が利用可能であることが通知される。後は物理ボタンで起動するだけで、システムが制御を引き継ぎ、安全な車間距離や速度を調整し、交通の流れに基づいてステアリングとブレーキをシームレスに制御するという。

出典:自動車技術会

走行エリアや対象車種は不明、広域展開の可能性も?

レベル3の対象エリア・道路や対象車種などは公表されていないようだ。ただ、ステランティス傘下のブランドは、プジョーやシトロエンといったフランス勢や、フィアットやアバルト、アルファロメオなどのイタリア勢、ドイツのオペル、北米のクライスラーなど多国籍に及ぶ。

仮に、STLA AutoDriveが各ブランドのプラットフォームに対応しているとすれば、各ブランドの主戦場を網羅する必要がある。そう考えると、最低でもフランス・イタリアなどは押さえていそうだ。

EU圏内においては、交通ルールの多くが統一的であるものの、標識や点滅信号の通行ルールなど各国で異なるものもある。ODD(運行設計領域)における走行エリアをどのように設定しているのか、そして各ブランドがどのように対応・採用していくのか。今後の動向に注目したい。

レベル3はBMWと共同開発

ステランティスは2021年、BMW、Foxconn、Waymo などと各分野で提携し、革新的な取り組みを通じて専門性と効率性を向上していくと発表した。この中で、「BMWとの提携により開発されたSTLA AutoDriveは、レベル2、レベル2+、レベル3の自動運転機能を提供し、OTAアップデートを通じて継続的にアップグレードしていく」としている。

STLA AutoDriveは、どうやらBMWとの共同開発の賜物のようだ。BMWもすでにレベル3を実現済みであることを踏まえると、効果的に研究開発を進められたものと思われる。

なお、Foxconnとは同年、HMIをはじめとした革新的なユーザーエクスペリエンス開発に向け合弁Mobile Driveを設立している。その後、最先端の半導体設計・販売を担う合弁SiliconAutoも立ち上げている。Waymoとは、自動運転タクシーの車両を供給する関係だ。

このほか、サプライヤーの仏Valeoが2022年にリリースした情報によると、ステランティスは2024年からさまざまな自動車ブランドの複数モデルに搭載するため、同社の第3世代LiDAR「SCALA3 LiDAR」を採用したという。

レベル3を、2024年を目途に実装していく計画だ。若干ずれ込んだものの概ね予定通りで、さまざまな自動車ブランドの複数モデルに搭載することに言及している点がポイントだ。2025年、ステランティスの攻勢が一気に始まる可能性もありそうだ。

【参考】Valeoの発表については「ステランティス、2024年にレベル3自動運転車を展開へ」も参照。

■ステランティスの自動運転関連のトピック

ステランティスは欧州を中心とする多国籍グループ

ステランティスは、フランス系のグループPSAとイタリア系のFCA(フィアット・クライスラー・オートモービルズ)が対等合併し、2021年に誕生した多国籍自動車グループだ。

ステランティスという名称に馴染みは薄いかもしれないが、フィアットやシトロエン、プジョー、クライスラー、ジープ、オペル、DS、アバルト、アルファロメオ、マセラティなど数々のブランドを傘下に収めており、グループ販売台数は年間500~600万台でトヨタグループ、フォルクスワーゲングループ、現代・起亜に次ぐ世界4位を争う規模を誇る。

「STLA Brain」「STLA SmartCockpit」「STLA AutoDrive」の導入を開始

ステランティスは、2024年からグローバル展開する新たな車両プラットフォーム全体に 、AIを搭載した3つの新テクノロジー「STLA Brain」「STLA SmartCockpit」「STLA AutoDrive」を導入していく方針だ。

STLA Brainは、サービス指向の新しいE/Eアーキテクチャで、ハードウェアとソフトウェアのサイクルを切り離することで、ハードウェアの更新を待つことなくOTA アップデートを通じて機能・サービスをより迅速に向上させることを可能にする。

アマゾンとのパートナーシップのもと、先進的なクラウドソリューションでコンピューティング能力をクラウドにオフロードしたり、拡張現実を実現したりするといったユースケースが可能になるという。

このSTLA Brainをベースに構築したのが STLA SmartCockpitで、乗員のデジタルライフとシームレスに統合し、車両をパーソナライズされた空間に変える。Foxconnとの合弁Mobile Driveが開発したSTLA SmartCockpit の次世代インターフェースは、タッチや音声、視線やジェスチャーなどの入力に基づき、より自然な方法で車両と対話することを可能にする。

AI ベースのアプリケーションを使用し、ナビゲーションや音声アシスタント、e コマースマーケットプレイス、決済サービスなど豊富な機能とサービスを提供する。当面は、音楽やビデオ、ゲームのストリーミング、リモートコントロール機能など、新しいコンテンツとコネクテッドサービスに焦点を当て、既存モデルへの導入を図っていくとしている。

そして、BMW との提携により開発された STLA AutoDrive は、レベル 2や2+のADASをはじめ、レベル3の自動運転機能を提供する。OTA アップデートを通じて継続的にアップグレードでき、レベル4ソリューションの研究も順調に進められているという。

スタートアップaiMotiveを買収

ステランティスは2022年、自動運転ソフトウェア開発を手掛けるハンガリーのaiMotiveを買収すると発表した。同社は子会社として存続しており、STLA AutoDriveの中期開発を加速している。

自動運転向けの組み込みソフトウェアスタック「aiDrive」やAI運用に向けたデータツール「aiData」、シリコンマイクロチップに関する「aiWare」、自動運転開発用のソフトウェアシミュレーション「aiSim」など各種ソリューションを武器としており、ソニーのコンセプト車両づくりにも協力している。

ソニーグループとの協業は続いているようで、2024年12月にはソニー・セミコンダクタ・ソリューションズと共同でADAS・自動運転テクノロジーの進歩を目的としたIMX728センサー・モデルの統合に成功したことを発表している。

EU圏の開発プロジェクトに参画

レベル4を含めた自動運転開発に向けては、積極的に欧州の研究開発プロジェクトに参加している。

自動運転実用化に向けたフランスの大規模プロジェクトSAMプロジェクトでは、ステランティスは高速道路の設計管理などを担うVinci Autoroutes と連携し、イルドフランス地域 (パリ周辺) で自律運転の実験を行った。

レベル3技術の標準化を推進する欧州プロジェクト「L3Pilot」では、各パートナー企業とともに車両70台を14の試験拠点と7カ国で運用し、高速道路40万キロを走行するなどしたという。

この成果を基に、欧州連合が共同出資する次のプロジェクト「 Hi-Drive」(2021 ~ 2025 年) を通じて、引き続き大規模な取り組みに貢献するとしている。

■レベル3市場の動向

レベル3はホンダが先陣

ホンダが発売したレベル3乗用車「新型LEGEND」=出典:ホンダプレスリリース

自家用車におけるレベル3は、2021年3月に限定リース販売されたホンダの新型レジェンドで幕を開けた。

ホンダは2020年11月、レベル3に相当する渋滞運転機能「トラフィックジャムパイロット」について型式指定を国土交通省から取得し、この機能を「Honda SENSING Elite」の一機能として限定100台のレジェンドに実装・販売した。

高速道路や自動車専用道において、渋滞または渋滞に近い混雑状況下、最大時速50キロ以下の範囲で自動運転が可能となる。

現在は販売されておらず、レジェンドに続く搭載車両も出していない。世界初とあって、やはり試行的な意味合いが強かったものと思われる。

メルセデスは時速95キロに対応

ホンダに続いてレベル3を実現したのはメルセデス・ベンツだ。メルセデスは2022年、レベル3システム「DRIVE PILOT」をSクラスとSクラスのEV版「EQS」に有料オプションとして設定し、ドイツ国内で実用化を開始した。

2023年には米ネバダ州とカリフォルニア州から公道走行許可を取得し、2024年に対象車種の納入を開始している。中国市場への導入を模索する動きも報じられている。

また、ドイツ国内では、ドイツ連邦自動車交通局からDRIVE PILOTの最高速度を時速95キロに引き上げる承認を受け、2025年春に実装すると発表している。既存のDRIVE PILOT搭載車は無料アップデートが可能で、新たにDRIVE PILOTを設定する場合も価格(5,950ユーロ/約93万円~)は据え置くとしている。

3番手はBMWだ。ドイツの自動車大手BMWだ。2024年春から新型「7シリーズ」にレベル3システム「BMW Personal Pilot L3」をオプション設定し、ドイツ国内で販売開始した。価格は税込6,000ユーロ(約94万円)とされている。

最高時速60キロの渋滞時限定だが、レベル2システム「ハイウェイ・アシスタント」は最高時速130キロまで対応しており、メルセデスに負けじとレベル3の速度引き上げに動く可能性が高そうだ。

遅れはあるものの他社にも動き

このほか、スウェーデンのボルボ・カーズや韓国現代・起亜が2024年までにレベル3を実装する予定だったが、いずれも計画は延期されているようだ。

米国勢では、Argo AIへの投資を引き上げたフォードやCruise事業を停止したGMが改めてレベル3開発に力を入れており、そう遠くない将来実装に向け動き出しそうな気配だ。

中国では、規制当局が2024年6月までにレベル3システムを搭載した車両の公道走行実証を自動車メーカーなど9社に承認したことが報じられている。GOサインが出れば、各社が一気に実装に動き出す可能性が高く、今後の動向に注目したいところだ。

レベル3は2030年代に大きく成長?

矢野経済研究所の調査によると、レベル3は2021年実績の100台から2025年には40万台に拡大し、2030年には625万台に増加すると予測している。

一方、富士キメラ総研の調査によると、レベル3生産は2024年の30万台から拡大を続け、2045年には2,409万台に達すると予測している。

現在の自家用車市場における主流はレベル1からレベル2に移行しており、2030年ごろにかけてレベル2とレベル2+がその数を大きく伸ばしていくことが予想されている。レベル3はじわじわと成長し、レベル2市場が天井に達する2030年代に入ってから大きく数字を伸ばす可能性が高そうだ。

■【まとめ】日本勢の巻き返しに期待

欧州勢を中心に、着々とレベル3市場への進出が始まっているようだ。米国勢や中国勢なども恐らく1~2年以内に動き始めるものと思われる。

一方、日本ではホンダのレジェンド以降その動きが止まっているように感じられる。ホンダのその後の開発はどうなっているのか、トヨタはまだ動かないのか、そもそもレベル3を実装する気はあるのか――など、非常に気になるところだ。

渋滞時限定のレベル3は正直なところ利便性が低く需要は薄いが、その後の本格的なレベル3やレベル4の足掛かりとなる貴重な技術であり、先行投資として市場投入する価値がある。

今後、日本勢の巻き返しはあるのか。各社の動向に要注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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