広島のKGモーターズ、「超小型車」を自動運転化へ!阪大と共同研究

マルチモーダル情報統合と基盤モデルを活用

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出典:KGモーターズ・プレスキット

超小型モビリティの開発を手掛けるKGモーターズ(本社:広島県東広島市/代表取締役CEO:楠一成)が自動運転開発を本格化させつつある。大阪大学大学院基礎工学研究科と提携し、超小型モビリティ(ミニマムモビリティ)に特化した自動運転用データ収集システムと、超小型モビリティへの搭載を想定した自動運転手法の研究開発を進める。

KGモーターズはどのようなビジョンのもと自動運転開発に挑戦するのか。同社の取り組みとともに、超小型モビリティのポテンシャルに触れていく。

■KGモーターズと大阪大の取り組み

マルチモーダル情報統合と基盤モデルを活用

KGモーターズは2024年4月、大阪大学大学院基礎工学研究科の堀井隆斗講師と共同研究契約を締結し、データ収集システムと自動運転手法の研究開発に着手すると発表した。両者は、MaaS(Mobility as a Service)を通じたシェアリングや自動運転による新たな公共交通システムの構築を目指すとしている。

堀井氏は、認知能力に注目したマルチモーダル情報統合処理や、生成AI(人工知能)などの機械学習技術を利用したロボットの自律化・知能化に関する研究に取り組んでおり、共同研究ではこれら「マルチモーダル情報統合」や「基盤モデル」を軸に技術開発を進める。

▼KGモーターズが大阪大学大学院基礎工学研究科と自動運転開発に係る共同研究契約を締結
https://prtimes.jp/main/html/rd/p/000000012.000112621.html

マルチモーダル情報統合は、単一のセンサー情報だけでなく、テキストや画像、音声など複数のセンサー(感覚)情報を利用して統合処理する手法で、堀井氏が所属するロボット学習グループでは、五感を通じて外界や物体を知覚する人間のように、ロボットに世界を認識させるためのマルチモーダル情報処理技術を長年研究している。

この技術を活用することで、ロボットや自動運転車が複雑な環境情報をより効果的に処理・適応することが可能になりという。

一方、基盤モデルは事前に学習されたモデルの総称で、大量のデータを使用して訓練されているため多様なタスクに対応可能という。

言語情報だけでなく、画像や音声情報、その他センサー情報への適用も進んでおり、自動運転車や家庭用のサービスロボットなどのロボティクス分野で利用が進み始めている。この技術によって、自動運転システムは周囲の環境をより詳細に認識し、さまざまな運転状況に柔軟に対応できるようになるとしている。

こうした技術により、ミニマムモビリティに特化した省電力かつ高効率な自動運転用データ収集システムの開発と、ミニマムモビリティへの搭載を想定した自動運転手法を開発する。

ミニマムモビリティの自動運転化には、経済的・物理的制約から安価かつ省電力なシステムによるマルチモーダルセンサー情報を効率的に収集することが必要となる。このため、基盤モデルを利用した自動運転システムの実現を見据えつつ、ミニマムモビリティに特化したデータ収集システムの開発を進める。

そして、このシステムによって収集したデータと基盤モデルを用いることでミニマムモビリティの自動運転化を実現する。堀井氏が所属するロボット学習グループがこれまで進めてきたマルチモーダル情報統合に関する研究成果と、遠隔操作情報を用いた模倣学習による家庭用サービスロボットの自律化技術を援用し、基盤モデルを用いた自動運転手法の開発に取り組む。特に、複数センサー情報と言語情報の統合によりレベル3レベル4の自動運転実現を目指すとしている。

この共同研究により、KGモーターズは超小型モビリティ自動運転市場における技術的リーダーシップを確立し、日本国内外でのモビリティ革新に寄与していく構えだ。

■KGモーターズの概要

原付ミニカー規格の1人乗り超小型EVを開発

出典:KGモーターズ・プレスリリース

KGモーターズは、「小型モビリティで世界を“ワクワク”させる」をビジョンに楠氏が2022年7月に設立したスタートアップだ。原付ミニカー規格の1人乗り超小型EV(電気自動車)の開発・量産化を目指している。

自動車利用の多くは、買い物や通勤など1人が乗車するチョイ乗りだ。国土交通省が道路交通センサスデータをもとに算出したデータによると、平日は約8割、休日でも5~6割が1人乗りで、移動距離も約7割が10キロ以内に収まっている。

こうした状況を踏まえ、同社は「現在の車は軽自動車でもオーバースペック。不要なコスト負担や大きな環境負荷を与えている」とし、1人乗りで短距離に特化した超小型モビリティで移動の最適化を図っていく事業に着手した。

出典:KGモーターズ・プレスリリース

2025年度に量産化へ

同社が開発を進める「ミニマムモビリティ-コンセプト」は、全長2,490×全幅1,130×全高1,465ミリで、家庭用のAC100Vによる5時間の充電で航続距離100キロを実現する。

1人乗りで積載量45キロ、最高時速60キロのスペックだ。チョイ乗りに特化したモビリティと言える。エアコンも完備しているほか、OTAによるソフトウェアアップデートにも対応する。年間の維持コストは、軽自動車と比較すると約10分の1程度に収まり、原付と同等という。

計画では、2024年度に量産向けの試作車を20台製作し、2025年度に量産モデル300台の生産・販売を行う。2026年度には3,000台規模まで拡大する。

資金調達も順調

資金面では、2023年10月にシードラウンドでJ-KISS型新株予約権の発行によって1.5億円を調達したと発表した。引受先投資家は、環境エネルギー投資やキーレックス、waypoint venture partners、ちゅうぎんキャピタルパートナーズ、WONDERTAINER FUNDとなっている。

2024年3月には、プレシリーズAラウンドで3.8億円を新たに調達したことを発表している。投資家には、広島ベンチャーキャピタルやいよぎんキャピタル、NCBベンチャーキャピタル、神鋼商事が新たに名を連ねている。

【参考】KGモーターズについては「完全自動運転の1人乗りタクシー、広島のベンチャーが展開へ」も参照。

■超小型モビリティとは?

1~2人乗り程度で環境性能に優れたコンパクトモデル

国土交通省によると、自動車よりコンパクトで小回りが利き、環境性能に優れ、地域の手軽な移動の足となる1~2人乗り程度の車両を超小型モビリティと称している。

そのサイズや定格出力に応じて「第一種原動機付自転車(ミニカー)」「軽自動車(型式指定車)」「軽自動車(認定車)」に分類される。

長さ2.5メートル以下×幅1.3メートル以下×高さ2.0メートル以下で定格出力0.6kW以下のミニカーから、軽自動車と同様の長さ3.4メートル以下×幅1.48メートル以下×高さ2.0メートル以下のボディに0.6~8.0kWまでの出力を備えたものまでさまざまだ。

国土交通省は、公道走行を可能とする超小型モビリティの認定制度を2013年に創設し、その社会実装を振興している。

出典:国土交通省

自動車メーカーなども開発

例としては、トヨタのi-ROADやC+pod、トヨタ車体のコムス、ホンダのMC-β、日産のニューモビリティコンセプト、タジマのNTN・タジマなどが挙げられる。

日常的な買い物や比較的近距離の通勤、観光地の足など、チョイ乗り用途にもってこいのモデルと言える。近年、各地で超小型モビリティを活用したシェアサービスなどの実証が行われており、ふとしたきっかけで全国的に導入が進むかもしれない。

導入コストや利便性、安全性などさまざまな要因がかみ合えば、近い将来スタンダードなモビリティとして定着する可能性がありそうだ。

■超小型モビリティ×自動運転

超小型モビリティは自動運転との相性が良い?

将来性あふれる超小型モビリティだが、自動運転機能を搭載することでその利便性は大きく増す。取り回しが容易とは言え、日ごろ運転を行っていない人にはハードルが高い。外国人観光客や免許を返上した高齢者、子どもが単独で利用することも困難だ。

しかし、自動運転機能が備われば誰もが気軽に利用できるモビリティとなる。車体が小さく、比較的低速走行を前提とするため自動運転システムも構築しやすい。

低コストも超小型モビリティのウリであるため費用をどこまで抑えることができるかがカギとなりそうだが、大きな需要が眠っている領域と言える。

静岡県内ではタジマ製超小型モビリティで自動運転実証

「しずおか自動運転ShowCASEプロジェクト」では過去、タジマ製のEVジャイアンを活用した自動運転実証が行われている。2019年度の実証では、西伊豆松崎町内で624キロ、うち自動運転で350キロ走行したという。

【参考】しずおか自動運転ShowCASEプロジェクトについては「自動運転に力を入れる静岡、「ShowCASEプロジェクト」とは?」も参照。

静岡県浜松市は2020年、香港系スタートアップPerceptInの日本法人の協力のもと、超小型モビリティを用いた自動運転実証を行った。車体はタジマのジャイアンを使用している。

PerceptInの日本法人モピは、グリーンスローモビリティに注目し、小型車両を中心とした自動運転開発を進めている。

【参考】浜松市における取り組みについては「自動運転、LiDARも3Dマップもナシ!超低コストな実証実験、浜松市で」も参照。

ホンダもCIマイクロモビリティの開発進行中

ホンダも、周囲の環境と協調して人とモノの自由な移動をサポートするマイクロモビリティ「Honda CIマイクロモビリティ」の開発を進めている。

2022年、自動運転機能などを搭載したマイクロモビリティの実証を茨城県常総市内の複数エリアで開始することを発表した。

独自の協調人工知能「Honda CI」を活用したモビリティで、1人から数人の乗員を想定した搭乗型マイクロモビリティ「CiKoMa(サイコマ)」や、ユーザーの特徴を記憶し追従するマイクロモビリティロボット「WaPOCHI(ワポチ)」の技術実証などを進めている。

【参考】ホンダの取り組みについては「自動運転、トヨタとホンダの「レベル別」現状比較」も参照。

ヤマハのゴルフカーベースの自動運転車は超小型モビリティ?

ヤマハ発動機製のゴルフカーをベースにした自動運転車も、ある意味超小型モビリティと言える。4~5人乗りモデルであればボディサイズは「軽自動車(認定車)」に収まり、定格出力(3.5kW)も基準内だ。1~2人乗りでないという点だけが超小型モビリティの定義から外れているだけだ。

すでに福井県永平寺町でドライバーレスのレベル4運行を行っている実績がある。パーソナル用途ではないが、自動運転化しやすい小型モビリティを活用した好例と言えるだろう。

【参考】ヤマハ発動機の取り組みについては「ヤマハ発動機、低速自動運転サービスの企画担当者を募集!」も参照。

■【まとめ】超小型モビリティ×自動運転の普及に期待

普及が進みそうで中々進まない状況が続いているが、優れたコストパフォーマンスをはじめとしたメリットへの理解度・認知度が高まれば状況が一変する可能性がある。

実勢速度が速い幹線道路などではなじみにくいかもしれないが、生活道路などは得意分野だ。日本の狭い道路環境にマッチした利用環境を整えれば、非常に面白い存在となる。

自動運転関連では、パーソナル用途における自動運転化をどのように図っていくかがポイントとなりそうだ。サービス用途に限定し、特定路線で自動運転を可能にするのか、あるいは柔軟な走行を可能にするのか。今後の開発動向に引き続き注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)



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