イーロン、自動運転EV断念のAppleに「敬礼とタバコ」 テスラに追い風、感謝示す?

X(Twitter)で投稿、同志に「お疲れ様」の意味?



出典:X(Twitter)

Appleが自動運転EV(電気自動車)の開発を断念したことが、大きな話題になっている。人員の一部を生成AI(人工知能)の開発に充て、10年間続けてきた取り組みに終止符が打たれる。

このニュースが報じられたあと、テスラのCEO(最高経営責任者)であるイーロン・マスク氏は、X(Twitter)で以下のようにつぶやいた。「敬礼」と「煙が出ているタバコ」の絵文字を並べたつぶやきだ。この投稿は何を意味するのだろうか。


■「ありがとう、アップル君!」の意味?

Appleの自動運転EVプロジェクトの中止は、テスラにとっては確実に追い風だ。テスラは現在は車両にADAS(先進運転支援システム)しか搭載できていないが、将来的に有料オプションのソフトウェア「FSD」を無線アップデートし、自動運転を可能にさせることを明言している。


つまりAppleが自動運転車を開発すればテスラにとっては競合が増える形となるので、少なくとも今回のAppleのニュースはマスク氏にとっては歓迎したいトピックだろう。

米海軍の指針では、上官が部下に感謝の意を示す際、敬礼が用いられる。そのためのマスク氏の絵文字の投稿は「ありがとう、アップル君!」みたいな意味があるのかもしれない。もしくは、自動運転という同じ目標を掲げていた同志に、「お疲れ様」の意味を込めて敬礼したのだろうか。

(いずれにしても、タバコを吸っている絵文字は必要ないかもしれないが・・・。)

■テスラの自動運転プロジェクトは難航

ただし、テスラの自動運転開発も決して順調だとは言えない側面もある。マスク氏は過去に何度も「来年自動運転を実現する」というように時期を指定した上での発言をしてきたが、いずれもその発言は現実のものとなっていない。


販売した車両を自動運転タクシーとして転用できるプロジェクトも掲げられているが、いまのところはその取り組みが前進している兆しもない。

一方で、ホンダやメルセデスは自動運転レベル3(条件付き運転自動化)の機能を市販車に搭載させ、GoogleやGMは自動運転タクシーを実用化している(※GMは現在サービスを中止中)。Appleのように開発は中止しないにしても、焦らなければならない立場にいるはずだ。

■経営判断が将来の業績に大きな影響

いずれにしても、自動運転EVの開発にはかなりの労力とコストがかかる。そのためAppleのように自動運転プロジェクトの開発を断念する企業は今後も出てくるだろう。

しかし、将来的に自動運転時代が到来することは確実な中、その判断は大きな過ちとなるかもしれない。例えば自動運転タクシー市場は年平均65%成長を果たし、2030年までに986億ドル(約14兆8,000億円)規模に達するというリサーチもある。

進み続けるか、断念するか──。その経営判断が将来の業績に大きな影響を与えることは間違いない。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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