トヨタとNVIDIA、急接近か!ともにREADY Roboticsとの協業

自動運転分野でもNVIDIAが開発に貢献



出典:トヨタプレスリリース/NVIDIAプレスリリース

トヨタと米半導体大手NVIDIAの距離が一段と縮まりそうだ。産業用ロボット向けのプラットフォーム開発に取り組む米スタートアップREADY Roboticsを通じて、3社で製造・設計現場のDX(デジタルトランスフォーメーション)を加速する。

トヨタとNVIDIAのパートナーシップを耳にすることは少なく感じられるが、両社はこれまで多方面で協力関係を構築している。今回の協業は、こうした関係を一層深めることになりそうだ。







READY Roboticsとの取り組みをはじめ、トヨタとNVIDIAの関係に迫る。

■READY Robotics×NVIDIA×トヨタの取り組み
産業ロボットのオートメーションを推進

READY Roboticsは、工場や倉庫などで稼働するさまざまなメーカーの産業ロボットをソフトウェアプラットフォームでつなぎ、共通のインタフェースで操作・制御可能にするOS「ForgeOS」を開発している。

ハードウェアに依存せず、ソフトウェアレイヤーや標準化されたAPIにより、主要メーカーの各種ロボットや関連機器を容易に制御可能にする。安川電機や川崎重工、エプソン、Universal Robots、Staubli、FUNUC、ABBなどをサポート済みだ。

独自開発したプログラミングアプリ「Task Canvas」は、ブロックとフローチャートによってロボットをプログラミングすることができ、これまでのロボット言語の2~10倍の速度でプログラミングすることが可能になるという。

一般的に、各メーカーのロボットのプログラミングにおいては、メーカーの母国語でコードをエクスポートするオフラインツールが必要となるが、複雑な独自プログラミング言語を置き換えることで、専門的なトレーニングなしでプログラミングできるとしている。

出典:READY Roboticsプレスリリース
トヨタの生産ラインを最適化

READY Roboticsは2024年1月、産業用ロボットの分野でトヨタとNVIDIAと協業すると発表した。トヨタは、「NVIDIA Omniverse」で開発されたロボットシミュレーターであるNVIDIA Isaac Simと統合されたREADY ForgeOSを採用し、アルミニウム熱間鍛造生産ライン用の最先端のシミュレートされたロボットプログラミング環境を構築する。

ForgeOS を NVIDIA Isaac Simと統合することで、クラストップレベルのビジュアルや物理シミュレーションの忠実度を実現し、ロボットシミュレーションに前例のないリアリズムをもたらすという。トヨタは、ForgeOSによる直観的なプログラミングとNVIDIAのシミュレーション環境を利用し、複雑な熱間鍛造プロセスにおける精細なシミュレーションによって製造現場の最適化を図っていく構えだ。

シミュレーションでプログラミングし、そのプログラムを転送してForgeOSによって実際の本番データをキャプチャすることで、プロセスを反復的に改善できる。生産ラインに必要なシミュレーションとリアルのワークフローが可能になるという。

■トヨタとNVIDIAの関係
製造現場でのNVIDIAソリューションの活用は2016年ごろにスタート

こうした設計・製造現場におけるトヨタとNVIDIAの取り組みは、2016年ごろに始まったようだ。現場のDXを推進するため、NVIDIAの仮想GPUソリューション「NVIDIA vGPU」を活用したCAD VDIの実現に向け検討を開始したという。

当時、リモートワーク制度が拡大するなか、3D CADを利用する設計業務のVDI化(デスクトップの仮想化)を促進し、作業効率の向上や設計開発プロセスの加速を図る上でハイスペック化が欠かせなかったようだ。

CAD VDIの性能向上により、CADのハイスペック化や処理負荷が高いデザイン、CAEなどもVDI上に構築し、他部門やグループにおける業務のDXを目指すとしている。

自動運転分野では2017年ごろに協業開始

一方、自動運転分野におけるトヨタとNVIDIAの協業も2017年ごろに始まっている。NVIDIAは2017年、トヨタの自動運転システムの性能を高めるため、AI(人工知能)によるハードウェアとソフトウェアのテクノロジーを提供すると発表した。「NVIDIA DRIVE PX AI カーコンピューティングプラットフォーム」を自動運転システムに搭載し、車載センサーが生成する大量のデータを分析して自動運転機能を強化するソフトウェア開発にすでに着手しているとしている。

その前年に開催されたNVIDIAの技術カンファレンス「GTC2016」では、2015年にトヨタが設立したAI開発拠点「トヨタ・リサーチ・インスティチュート(TRI)」でCEO(最高経営責任者)を務めるギル・プラット氏が基調講演を行っている。

GPUやディープラーニングを利用して自律システムのトレーニングを行い、実際に路上に出す前にシミュレーションで現実に即した状況を体験させ、開発を加速する――といった内容だ。

NVIDIAによると、当時トヨタは「NVIDIA DRIVE AGX Xavier」をAIの頭脳として2020年から生産車両に搭載する計画を進めていたという。

2018年開催のGTC 2018でも、トヨタIT開発センター(2019年にコネクティッドカンパニーに吸収)主席研究員のガウラフ・バンサル氏が出席し、コネクテッド型自動運転の新興分野について発表を行った。

トヨタとNVIDIAのパートナーシップを耳にする機会は少ないが、両社の関係は多方面で年々深まっているようだ。

■【まとめ】NVIDIAの半導体技術にトヨタも依存?

トヨタとNVIDIAは、自動運転分野や設計・製造分野など他分野で早期に関係を構築していることがわかった。NVIDIAの半導体技術はトヨタにとっても欠かせないソリューションとなっているようだ。

一方でトヨタとデンソーは2020年、最先端の車載半導体開発に向け合弁ミライズテクノロジーズを設立した。2023年には、トヨタをはじめとする日本車メーカーが手をつなぎ、チップレット先端半導体の車載化研究開発と仕様共通化を目的に「自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA)」を設立した。チップレット技術を適用した自動車用SoCを開発し、2030年以降に量産車への搭載を目指す業界一丸となった取り組みだ。

自動運転分野における高性能半導体はNVIDIAへの依存率が高まっているのも事実だが、メーカー各社も怠ることなく研究開発を推進しており、特に日本では、Rapidus(ラピダス)設立に象徴されるように半導体復権に向けた事業が国策的に進められている。

ただし、NVIDIAとトヨタを比較すると、NVIDIAの時価総額は1兆5,000億ドル(約220兆円)、トヨタは47兆円であり、円ベースだと4〜5倍の差がある。そのため、NVIDIAの方が半導体業界を含めてマーケットでは圧倒的強者であるということを受け止め、下手に意地を張らずに積極的に協業に取り組んでいく視点も重要だろう。

自動運転分野で勢力を拡大するNVIDIAやモービルアイといった先行企業と、国内勢はどういう関係性を深化させていくのか。中長期的には、こういった点にも注目したいところだ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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