自動運転、トヨタ・日産・ホンダらが「一時休戦」!半導体SoCを共同開発

技術研究組合を設立、理事長はトヨタから



自動車に使われている半導体の例=出典:自動車用先端SoC技術研究組合プレスリリース

自動車メーカーや半導体関連企業など12社はこのほど、高性能デジタル半導体である「SoC」(System on Chip)の車載化研究開発を行う「自動車用先端SoC技術研究組合」(Advanced SoC Research for Automotive:ASRA)を設立した。

トヨタホンダ日産などの自動車メーカーが普段の開発・販売競争を一時休戦し、横断型で自動運転に必須のSoCを共同開発する形だ。チップレット技術を適用した自動車用SoCを研究開発し、2030年以降の量産車へ搭載することを目指すという。







組合の設立は2023年12月1日付。

■技術研究組合設立の背景

自動車には1台あたり約1,000個の半導体が使われており、用途によりさまざまな種類の半導体がある。その中でもSoCは、高度な演算処理能力を達成するために最先端の半導体技
術が必要とされ、自動車における自動運転技術やマルチメディアシステムなどで必須の半導体だという。

自動車用先端SoC技術研究組合(ASRA)は、自動車メーカーが中心となることで自動車に求められる高い安全性と信頼性を追求するとともに、電装部品メーカーと半導体関連企業の技術力・経験知を結集することにより、最先端技術の実用化を目指す。具体的には、チップレットと呼ばれる種類の異なる半導体を組み合わせる技術を適用した、自動車用SoCを研究開発する計画になっているようだ。

【自動運転ラボの視点】
先端モビリティ領域において、こうした業界横断型の組織・企業が誕生するのは、今回に限ったことではない。例えばダイナミックマッププラットフォーム(旧社名:ダイナミックマップ基盤)は、現実の世界をデジタル空間に複製する高精度3次元データのプラットフォーマーであり、トヨタや日産、ホンダなどの自動車メーカーが出資企業に名を連ねている。高精度3次元データを自動運転実現のための「協調領域」として、開発で各社が協力している形だ。
■参画企業は?

ASRAの参画企業は、以下の12社だ。

  • 自動車メーカー:SUBARU、トヨタ自動車、日産自動車、本田技研工業、マツダ
  • 電装部品メーカー:デンソー、パナソニック オートモーティブシステムズ
  • 半導体関連企業:ソシオネクスト、日本ケイデンス・デザイン・システムズ社、日本シノプシス合同会社、ミライズテクノロジーズ、ルネサスエレクトロニクス

トヨタ自動車・シニアフェローの山本圭司氏が理事長を、デンソー・シニアアドバイザーの川原伸章氏が専務理事を務める。なお本部は、愛知県名古屋市にあるインキュベーション施設「なごのキャンパス」内に設置している。

■2030年以降の量産車へ搭載を目指す
チップレットのイメージ=出典:自動車用先端SoC技術研究組合プレスリリース

ASRAによると、チップレット技術の利点は3つあるという。

高性能化および多機能化が可能なこと、製造時の良品歩留まりを高めることが可能なこと、エンドユーザー(自動車会社)の要求事項に最適な機能・性能のSoCをタイムリーに製品化することが可能なことだ。

実用化にあたっては、下記3つの方向性が挙げられている。

  • 自動車メーカー各社のユースケースに基づく課題抽出からより車載化への実用性の高い技術研究を果たす。
  • 半導体メーカーに加え、ECU・ツール・OSなど、幅広いメーカーの参画でターンキーの技術研究を果たす。
  • 産官学連携をベースとした技術研究の体制構築により、半導体の人材育成の底上げを図る。

ASRAは2028年までにチップレット技術を確立し、2030年以降の量産車へSoCを搭載することを目指す。そのため、日本国内の自動車・電装部品・半導体の技術力と経験知を結集し、世界に先駆けた技術研究集団として、国内外・産官学の連携を共に進めていくという。

■組合設立で日本のSoC開発が発展へ
出典:自動車用先端SoC技術研究組合 公式サイト

自動車関連のSoC開発企業としては、海外企業ではインテル傘下のイスラエル企業・Mobileyeや米NVIDIA、米Qualcomm、中国Horizon Roboticsが挙げられる。

日本でのSoC関連のニュースとしては、半導体大手ルネサスが米Microsoftとコネクテッドカー開発において協業したことを2021年1月に発表している。Microsoftのモビリティ業界向けプラットフォーム「Microsoft Connected Vehicle Platform(MCVP)」の開発環境として、ルネサスの車載用SoC「R-Car」を搭載した「R-Carスタータキット」を利用できるようになる

また完全自動運転EVの生産を目指す日本企業のTuringは、自社製の半導体チップ・車載LLM推論アクセラレーターの開発を開始することを2023年12月に発表した。これは、現行の自動運転向けSoCが持つ推論能力の500倍の処理能力を目指すものになるという。

チップレット先端半導体の車載化研究開発と仕様共通化を目指し設立されたASRAにより、日本製自動運転車の量産のための開発が加速することが予想される。今後の展開にも注目したい。

▼自動車用先端SoC技術研究組合 公式サイト
https://asra.jp/

【参考】関連記事としては「自動運転関連の主な団体一覧」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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