トヨタやいすゞ、イスラエルの自動運転企業に120億円出資

Foretellix、「検証・妥当性確認」に強み



左からCEOのZiv Binyamini、CTOのYoav Hollander氏、Chief Regulatory Affairs OfficerのGil Amid氏=出典:Foretellixプレスリリース

イスラエルの自動運転関連企業であるForetellix(フォーテリックス)は2023年12月11日までに、シリーズCの資金調達ラウンドで8,500万ドル(約123億円)を調達したことを発表した。

この資金調達ラウンドは英国のベンチャーキャピタル83Northが主導し、トヨタ傘下のグローバル投資ファンドWoven Capitalや米半導体大手NVIDIA、スウェーデンのVolvo Group VCなどが投資家として参加している。また今回から、シンガポールの政府系ファンドのテマセクと日本のいすゞも加わった。


Foretellixがこれまでに調達した資金の総額は、1億3,500万ドル(約196億円)に達した。

■検証・妥当性確認プラットフォームを手掛ける

2017年設立のForetellixはイスラエルのテルアビブを拠点に、自動運転システムやADAS(先進運転支援システム)の検証・妥当性確認プラットフォームを開発している企業だ。

2020年10月には、自動レーンキーピングシステム(ALKS)規制のためのALKS検証パッケージをリリースした。これは、世界初のレベル3規制であるUNECE(国際連合欧州経済委員会)により新たに発表されたALKS規制のための、世界初の商用ソリューションとなった。

また、レベル2の運転支援技術からレベル4の高速道路に焦点を合わせた完全自律型ソリューションをカバーする包括的な検証パッケージADAS&Highwayソリューションもリリース済みだ。


出典:Foretellix公式サイト
■いすゞVP「素晴らしい機会」

今回の出資にあたり、いすゞで開発部門のVP(ヴァイスプレジデント)を務める佐藤浩至氏は「Foretellixの拡張性の高いシナリオ自動生成技術とOpenSCENARIO 2.0規格におけるリーダーシップは、いすゞの重要な資産だ。Foretellixの経営陣やエンジニアとのコラボレーションは、いすゞの自動運転車開発にとって素晴らしい機会であり、大きな強み」とコメントを寄せている。

なおOpenSCENARIOとは、ADASや自動運転車の開発において、動的な内容のシナリオを記述するための規格だ。開発したのは、自動車産業を中心とした標準規格の策定を行っているドイツの団体「ASAM(Association for Standardization of Automation and Measuring Systems)」で、Foretellixはこのメンバーとして開発を主導したという。

■トヨタ系Woven Capitalが連続で投資

Foretellixは、資金調達シリーズCラウンドのファーストクローズで4,300万(約62億円)ドルを調達したことを2023年5月に発表している。このラウンドから、Woven CapitalとNVIDIAが参加した。

その際に、ウーブン・バイ・トヨタの投資・買収担当役員兼Woven CapitalのManaging Directorであるジョージ・ケラマン氏は、「ウーブン・バイ・トヨタでは、世界で最も安全でインテリジェントな人間中心のモビリティ・ソリューションを提供するということを使命としている」コメントしている。


また、「革新的な自動運転システムの安全性と性能を確保する上で、検証・妥当性確認技術は重要な役割を果たす。Foretellixはこの分野におけるリーディングプレーヤーであり、自動運転技術の発展のために協力できることを嬉しく思う」と語っている。

■自動運転開発でイスラエル企業が躍進
出典:Mobileye/Nasdaq

ForetellixのCEO(最高経営責任者)兼共同創設者であるZiv Binyamini氏は、「ForetellixはV&V(検証および妥当性確認)の技術と手法において、革新的な進歩を遂げている。当社のソリューションは、自動運転車の安全な大規模展開における安全という最大の課題に取り組みながら、開発コストを劇的に削減する」と自信を見せている。

今回調達した資金により、現実世界とシミュレーション上の運転シナリオに対応した製品ラインの拡充や、新たなAI(人工知能)の機能開発にも注力していく。また主要な自動運転開発者とのパートナーシップを継続し、顧客をサポートすることに全力を注いでいくという。

自動運転関連のイスラエル企業としては、米インテル傘下のMobileyeが代表格だ。そのほか、LiDAR開発のInnoviz Technologiesや自動運転技術開発スタートアップのOttopia Technologiesなどもある。

日本企業などから注目されるForetellix。今後ますます存在感が高まっていきそうだ。

▼Foretellix公式サイト
https://www.foretellix.com/

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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