パナソニックオートモーティブ、赤字100億円超&債務超過に 第3期決算

自動運転時代に重要度増す車載事業を展開



出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)

パナソニックグループの車載事業を担当するパナソニックオートモーティブシステムズ株式会社(本社:神奈川県横浜市/代表取締役社長執行役員:永易正吏)の第3期(2023年3月31日現在)決算公告が、このほど官報に掲載された。

第3期の当期純損失は、前期の当期純損失62万円からマイナスを大幅に増え、100億9,100万円であった。なお、5,309億200万円の売上高を確保しているものの、今期は約100億円の債務超過となっている。


【参考】「債務超過」とはどのような状況を指すかだが、貸借対照表の「資産の部」の合計額から、「負債の部」の合計額を引いた金額がマイナスであれば、債務超過ということになる。

■決算概要(2023年3月31日現在)
賃借対照表の要旨(単位:百万円)

▼資産の部
流動資産 106,418
固定資産 34,234
資産合計 140,652
▼負債の部
流動負債 144,913
賞与引当金 4,707
製品保証引当金 6,335
固定負債 5,328
負債合計 150,241
▼純資産の部
株主資本 △9,591
資本金 500
資本剰余金 1
資本準備金 1
利益剰余金 △10,092
その他利益剰余金 △10,092
評価・換算差額等 2
繰延ヘッジ損益 2
純資産合計 △9,589
負債・純資産合計 140,652

損益計算書の要旨(単位:百万円)

売上高 530,902
売上原価 478,328
売上総利益 52,574
販売費及び一般管理費 67,369
営業損失 14,795
営業外収益 1,578
営業外費用 1,156
経常損失 14,373
特別利益 1,277
特別損失 184
税引前当期純損失 13,280
法人税、住民税及び事業税 △1,956
法人税等調整額 △1,233
当期純損失 10,091

出典:官報(※クリックorタップすると拡大できます)
■車載インフォテインメントシステムなどを手掛ける

パナソニックオートモーティブシステムズは、パナソニックグループの持ち株会社制移行に伴い、車載事業の新事業会社として2022年4月に発足した。「一人ひとりのより良いくらしの実現のため、持続可能なモビリティ社会を創造する」をミッションに、新しいモビリティ社会の構築のため、自動車関連の製品や技術の開発・生産・販売を行っている。


パナソニックグループのオートモーティブ事業としての歴史は古く、1939年から関連事業をスタートさせている。2017年にスペインの自動車部品・システムサプライヤーであるフィコサ・インターナショナルを連結子会社化し、協業開発製品「電子インナーミラー」を供給開始した。また2020年には、トヨタと車載用角形電池事業に関する合弁会社「プライム プラネット エナジー&ソリューションズ」を設立した。

パナソニックオートモーティブシステムズは、車載インフォテインメントシステムを手掛ける「インフォテインメントシステムズ事業部」、車載ディスプレイや車室内のデバイス・モジュールを手掛ける「HMIシステムズ事業部」、ADAS(先進運転支援システム)やETC車載器、電動コンプレッサなどを手掛ける「車載システムズ事業部」、フィコサ・インターナショナルで構成されている。

出典:パナソニックオートモーティブシステムズ公式サイト
■開発製品がトヨタや日産で採用

パナソニックオートモーティブシステムズは2023年1月に、セキュリティ関連製品の開発・販売を手掛けるトレンドマイクロ、自動車向けサイバーセキュリティソフトウェアを提供するVicOneと共に、車のインフォテインメントシステム(IVI)を中心とした次世代コックピットシステムへのサイバー攻撃に対抗する、仮想化セキュリティソリューションの有効性を実証したことを発表した。

同社とトレンドマイクロは2018年から、安全な自動運転やコネクテッドカーに対するサイバー攻撃を検出・防御するサイバーセキュリティソリューションの開発に取り組んできた。今回の実証は、これまでの共同開発に加え、自動車の次世代コックピットシステムのセキュリティに開発範囲を拡大したものになるという。


また2023年3月には、パナソニックオートモーティブシステムズの社員による有志のチームが、「第5回自動運転AIチャレンジ2022」のチャレンジコースで3位に入賞し、注目を浴びた。

同年5月には、同社の歩行者検知機能付き車載リアカメラがトヨタの「プリウス」に採用、6月にはドライブレコーダー連動インテリジェントルームミラーとヘッドアップディスプレイが日産の「新型セレナe-POWER」に採用されたことを発表している。

■自動運転時代に重要度を増す車載関連製品

クルマの自動運転化により、車載パーツや車載システムの変化と進化が求められている中、この分野で事業を行うパナソニックオートモーティブシステムの重要性はより高まっていくだろう。次回の決算にも注目したい。

※官報に掲載された決算公告に関する記事は「自動運転・MaaS企業 決算まとめ」から閲覧頂くことが可能です。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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