次世代モビリティに関する研究を行っている「McKinsey Center for Future Mobility(MCFM)」によると、自動運転タクシーの普及に伴い、世界の交通機関に占める個人所有の自動車の割合はますます低くなるという。米ニュースメディアのAxiosが報じた。
MCFMの調査によると、世界の交通機関のうち自家用車が占める割合は、2021年が45%で、その後、2024年に41%、2029年に35%、2034年に29%と、徐々に減少傾向となっている。なお、この調査は13カ国、2万5,000人以上を対象に行われたという。
自動運転タクシーの利用率は現在はゼロに近いが、2035年には8%まで増加すると試算されている。また、スクーターや自転車などのマイクロモビリティについては、2022年の16%から2035年には19%と微増するようだ。
■なぜ自家用車の利用率は低下するのか
MCFMによると、自動運転タクシーを利用する人が増えると自家用車を所有する必要がないと考える人が多くなるという。確かに自家用車は移動以外の時間は駐車しておくしかなく、コストに見合わないと考える人が増えると考えられる。
自動運転タクシーは将来的に、現在のタクシーよりも運賃が安くなると考えられていることも、自家用車の利用率や所有率の低下に拍車をかけそうだ。自動運転タクシーはドライバーの人件費がかからず、メンテナンス時間を除けば24時間稼働も可能になってくるため、運賃を安くできるとみられている。
現在でも国や都市によっては、クルマの「所有から利用へ」の潮流が加速しているが、この流れがスピードアップすることになりそうだ。
■世界的に実用化が進む自動運転タクシー
自動運転タクシーは世界で実用化が進んでいる。
2018年12月に米国でGoogle系の自動運転開発企業であるWaymoが、自動運転タクシー商用サービス「Waymo One」をアリゾナ州フェニックス郊外で開始した。これが世界初の自動運転タクシーの商用展開だ。当初は全ての車両にセーフティドライバーが同乗していたが、現在は無人化が進んでいる。
その後、カリフォルニア州サンフランシスコでも展開がスタートし、2023年2月にはロサンゼルスでも走行テストを開始することを発表している。
また、米GM傘下のCruiseも、2022年6月からサンフランシスコで有償サービスを開始している。同年12月には、アリゾナ州フェニックスとテキサス州オースティンでもサービスをスタートさせている。Cruiseはドバイでも2023年中に自動運転タクシーを運行させる予定だ。
米国と並び自動運転タクシーの開発が進んでいるのが、中国だ。すでにIT大手の百度(Baidu)や自動運転スタートアップのPony.ai(小馬智行)が、有料サービスを開始している。
【参考】関連記事としては「自動運転タクシーとは?(2023年最新版)」も参照。
自動運転タクシーとは?(2023年最新版) https://t.co/tn6ni0wSwN @jidountenlab #自動運転 #タクシー
— 自動運転ラボ (@jidountenlab) January 20, 2023
■現在のビジネスモデルに大きな影響
世界で実用化が進んでいる自動運転タクシー。今のところは一部の都市もしくは限られたエリア内での展開となっているが、地方や山間部、離島などでも自動運転タクシーが利用できる未来が訪れるならば、自家用車の利用率や所有率がどんどん低くなるという予想は納得できる。
こうした変化は、自動車メーカーなどを含めたクルマ関連ビジネスのモデルに大きな影響を与える。関連企業はこうした未来を予測し、早めに手を打つことが求められる。
【参考】関連記事としては「車の「所有から利用へ」の流れ、やっぱり加速!自動運転車での「サービス」に関心高く」も参照。