米EV(電気自動車)大手のテスラが、同社が有料オプションとして展開しているADAS(先進運転支援システム)「FSD(Full Self-Driving)」β版の大規模テストを中国で開始する可能性が出てきた。今のところうわさ段階のようだが、中国メディアが報じている。
ちなみにFSDのβ版を試せるのは、現在は北米のみとなっている。
■中国でFSD β版はまだ利用できない
テスラはFSDのβ版を2020年10月にリリースした。2022年10月の段階で、米国とカナダにおけるテスター(試験者)は16万人ほどだったようだ。
FSD(Full Self-Driving)は直訳すると「完全自動運転」になるものの、自動運転機能が実装されているわけではなく、自動運転レベル2相当のシステムだ。テスターを増やすことで運転データの量を一気に増加させ、自動運転機能の開発に生かし、将来的に自動運転化する計画だ。
中国では、全てのテスラ車に基本のADAS「オートパイロット(Auto Pilot)」が標準装備されている。有料オプションとしては、強化版オートパイロット「Enhanced Autopilot(EAP)」とFSDが用意されている。価格は、EAPが3万2,000人民元(約62万円)、FSDが6万4,000人民元(約124万円)となっている。
しかし、中国でFSD β版はまだ利用できない。テスラは今後、FSD β版の大規模テストを本当に開始するのだろうか。また、中国でオートパイロットの大規模アップデートも予定されているという。
■販売台数は過去最高でもシェアは…
中国乗用車協会(CPCA)が発表した2023年3月のテスラの販売台数は、前年同月比35%増の8万8,869台であった。同年1〜3月の同社の中国での販売台数は過去最高となる見込みで、EVなどを含む新エネルギー車販売において13%のシェアを占めている。なお、中国のEV最大手BYD(比亜迪)のシェアは41%となっている。
中国での展開も順調に見えるテスラだが、中国の自動車メーカーも、ADASや自動運転の開発に余念がない。
BYDは、自動運転開発スタートアップMomentaと合弁「DiPi Intelligent Mobility」を2021年12月に設立し、自動運転開発を加速されている。また2022年3月には、Baidu(百度)と自動運転車を共同開発し、量産していくことも明らかになっている。
中国版テスラと言われる新興EVメーカーのXpeng Motorsは、LiDARやミリ波レーダー、高精度測位システムなどを搭載した高度なADAS「City Navigation Guided Pilot」を一部の都市でリリース済みだ。
■中国におけるテスラの今後に注目
テスラは上海にギガファクトリーをすでに開設済みで、さらに上海に大型蓄電システム「メガパック」を生産するバッテリー工場を建設することが、今月発表された。イーロン・マスク氏率いるテスラの中国戦略はどんどん前進している印象だ。
自動運転開発の競争も激化する中国におけるテスラの今後に注目だ。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転技術(2023年最新版)」も参照。