自動運転車が普及することにより、道路渋滞が85%増となるーー。そんな驚きの調査結果が英国で発表された。
英運輸省の報告書によると、2047年までに車の半分が自動運転車やコネクテッドカーとなる可能性があり、またEV(電気自動車)が急速に普及することにより、道路渋滞が悪化するという。
その理由は、これまで車で移動できなかった人たち(例えば高齢者や運転免許を持っていない人)が、移動手段で自動運転車を使うようになるからだ。それにより結果として公道を走行する車両の数が増え、交通量の増大により渋滞が悪化するというわけだ。
■ロンドンの道路渋滞はさらに悪化?
英国政府は、自動運転車に関する計画「Connected and automated mobility 2025」を発表し、2025年までの自動運転車導入に向けた法案を議会に提出する予定であることを2022年8月に明かしている。
同政府は、ALKS(自動車線維持システム)を搭載した、高速道路の自動運転が可能な車両が2023年中に購入可能になる見込みであると発表している。さらに、自動運転の移動サービスは2025年までに運転免許所有者の乗車が不要になるとしている。
こうした展開になって自動運転車が普及していくと、英国政府の今回の調査を踏まえるなら、イギリスでは渋滞の悪化に悩まされることとなる。
ちなみに、交通情報プロバイダの米INRIXが2023年1月に発表した調査結果によると、現在のロンドンの交通渋滞は現時点でも世界的にひどい部類に入っており、2022年にイギリスのドライバーが交通渋滞に巻き込まれた時間は平均で156時間にも及ぶという。 この状況がさらに悪化するのだろうか。
■自動運転車なんて普及しない方いい?
では自動運転車なんて社会で普及しない方がいいのか。それは違う。道路やモビリティの研究機関RAC Foundationのある幹部は、以下のように述べている。
「全ての人が自分の車で移動することにこだわるのなら、交通量が増え駐車場の需要も増加するだろう。しかし、オンデマンドやシェアにより自動運転車を利用できるようになれば、渋滞は解消されるだろう」
この見方は非常に重要だ。自動運転バスや自動運転シャトルは人が運転しない分、人件費の面で運行コストを抑えられる。運行コストを抑えられれば運行台数を増やしてもマネタイズをしやすく、しかも運賃も安くしやすい。
そうすれば未来の人々はわざわざ自分で自動運転車を所有するだろうか。公共交通として利用できるモビリティの運行本数がいまより増え、しかも安く利用できるのだから。
■包括的な都市交通計画の策定が重要
とはいえ、英国政府の調査のように、自動運転車が渋滞を引き起こす要因になり得ることも確かだ。そう考えると、自動運転を普及させる際には、公共交通機関や移動サービスの展開事業者を巻き込んだ、包括的な都市交通計画の策定が重要であるとを感じる。
【参考】関連記事としては「イーロン・マスク氏「自動運転車が渋滞を狂気的レベルに増幅」」も参照。