米EV(電気自動車)大手テスラが関連する騒動がドイツで発生した。同社のADAS(先進運転支援システム)「Autopilot」を起動させたままドライバーが居眠りし、警察に追跡されながら車両は約15分間も走行し続けたという。
この騒動はドイツで2022年12月に起きた。現地メディアが12月29日付で報じている。
この騒動が波紋を広げているのは、このドライバーが居眠りをしていたからだけでなく、ハンドルに重りを付け、手でハンドルを握っているように見せかけるという、ADASシステムに対する「偽装工作」を行おうとしていた形跡があるからだ。
■騒動の顛末を紐解く
騒動の顛末を紐解いていこう。複数の海外メディアの報道によると、ドイツのバンベルク近郊で、警官が交通整理のためにドライバーを止めようとしたところ、そのテスラ車は警官の停止信号に反応しなかったという。
そのテスラ車は時速110キロで前方を走るパトカーと同じ距離を保ったまま走行を続けているものの、ドライバーは目を閉じて座席に寄りかかったまま、ハンドルに手が触れていない状態であった。
約15分後、男性ドライバーはようやく目を覚まし警官の指示に従い停車したのだが、そこであるものが発見された。男性の足元に「重り」が見つかったのだ。
■「Steering Wheel Weight」の存在
この重りは、ハンドルに手を添えているように見せかけて車両の安全機能を騙すための装置とされ、俗に「Steering Wheel Weight」と呼ばれているものだ。
日本ではなじみがないが、この言葉で検索すると、テスラ車用のこの装置を販売する海外のインターネットサイトが複数出てくる。この重りの危険性は前から指摘されている。
ちなみに過去にはアメリカの独立系消費者テスト機関が、テスラ車のハンドルに重りをつけオートパイロットシステムを起動する動画が公開し、大きく注目されている。
■ドライバー側にもモラルが求められるが…
今回の居眠りと重りは直接的にはつながりはないが、報道によれば、男性は日常的にこの重りを使っていた常習犯であった可能性があるようだ。また、男性からは薬物反応も出ているという。この男性は刑事犯罪の容疑で捜査されており、免許を失効した。
現在、テスラは「Autopilot」や「Full Self Driving(FSD)」と言った高度運転支援システムを提供しているが、いずれもドライバーによる常時監視が必要な「レベル2」の域を超えていない。
テスラ車だけではなく、他のメーカーのレベル2の車両、レベル3の車両でも、こうした「抜け道」の悪用は許されるものではない。もちろん、ドライバーにはこうしたことをしないモラルが求められるが、自動車メーカー側も対応策を検討する必要がありそうだ。
【参考】関連記事としては「テスラの自動運転技術」も参照。