2023年「空飛ぶクルマ」市場、大口契約が続々?インフラ整備も加速

2025年万博に向けた動きにも注目



出典:国土交通省

陸を走る自動運転車とともに次世代モビリティとして高い期待が寄せられる空飛ぶクルマ。2022年は、国内・海外勢ともに大型販売に向けた話が飛び交うなど、本格実用化を前に徐々に市場が盛り上がってきた印象を受けた。

国内では、実用化に向けた節目となる2025年開催予定の大阪関西万博に向けた取り組みがどんどん加速している。2023年はどのような進展があるのか、空飛ぶクルマ関連業界の展望に触れていこう。







■予約販売開始や大型販売契約が続々?

本格的な実用化を前に、空飛ぶクルマ市場は盛り上がりを見せている。個人を対象とした予約販売がすでに始まっているほか、航空会社などと大口契約を交わす例も続々と登場している。

中国Ehangは2019年に61機、202年に70機を販売するなど先行しており、日本でも導入が始まっている。大阪・関西万博での運航を見据えた動きも進んでいるようだ。

独Liliumは、ブラジルの大手航空会社Azulと2025年までに220機のeVTOL(電動垂直離着陸機)を最大10億ドルで販売する契約を交わした。米Archer Aviationはユナイテッド航空と最大200機のeVTOLを販売する契約を交わし、すでに100機分のデポジット1,000万ドルを受け取っている。

国内勢もテトラ・アビエーションが1人乗りモデル「Mk-5」の予約販売を2021年に開始しており、2022年中の納入を目指している。SkyDriveも2022年、インフラ開発を手掛けるベトナムのPacific Groupと覚書を交わし、最大100機のプレオーダーに合意したと発表した。

開発機体の耐空証明や型式証明が進めば、こうした流れはいっそう加速していくことになる。また、空飛ぶクルマの使用要件となる航空法の整備が各国で進めば、航空会社以外でもエアモビリティ事業への新規参入を目指す動きが活発となり、販売契約が続発することになる。

2023年中にどのような動きがあるか、要注目だ。

【参考】空飛ぶクルマの販売状況については「空飛ぶクルマ、「販売競争」に火蓋 個人向けの予約販売など続々」も参照。

【参考】SkyDriveの動向については「日の丸ベンチャーの空飛ぶクルマ、一気に100機も売れた!?」も参照。

■2025年万博に向けて飛行実験が増える?

日本における空飛ぶクルマの開発・実用化は、2025年開催予定の大阪・関西万博が大きな節目となる。社会実装を主導する「空の移動革命に向けた官民協議会」が、最新のロードマップで同万博を実用化目標に据えたからだ。

現在、主催地となる大阪府・市をはじめ、国の関係省庁や開発企業などが総出で同万博における空飛ぶクルマの運航を目指し一丸となって取り組みを加速している。

計画では、大阪府の「空飛ぶクルマ都市型ビジネス創造都市推進事業補助金」の採択を受け、丸紅や長大などのグループがヘリコプターを用いた空飛ぶクルマの模擬飛行を行った後、2023年2月ごろに米LIFT AIRCRAFTの空飛ぶクルマ「HEXA」を活用した有人実証飛行を行う計画を発表している。

最終的に何社の開発企業が万博に狙いを定めているかは不明だが、残すところ2年となる2023年中には飛行実証に着手したいところだろう。

大阪府が設置した「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」には、SkyDriveやテトラ・アビエーションといった国内勢をはじめ、Vertical Aerospace、Volocopter、Bell Helicopter、ASKAなど海外開発勢も参画している。2023年にどういった企業が飛行実証を具体化していくのか、要注目だ。

■「離着陸場」設置に向けた取り組み具体化

大阪関西万博を控える大阪府は2020年に「空の移動革命社会実装大阪ラウンドテーブル」を立ち上げ、同万博での商用運航実現に向けた行程表「大阪版ロードマップ」を策定した。

ロードマップでは、2022年度に地固め・下準備として実証の支援体制・環境整備や離着陸場の設置・構築に資する調査、事業者の事業運営・推進を支える環境整備に向けた調査などを進め、2023年度には高密度・高頻度運航に耐え得る離着陸場の設置・構築や、安全運航を支える後方支援体制や拠点の検討・整備、事業立ち上げ・拡大を情報面から支援するインフラ・データ基盤の検討・整備、初期投資・事業負担軽減に向けた資金調達スキームの検討、社会受容性向上に向けた施策実施などに着手することとしている。

実証関連では、事業者のニーズを明確化するとともに、実証用地として提供可能と想定される公有地や私有地の調査・発掘などを進めている。

離着陸場の整備関連では、離着陸に必要な施設や設備の要件・機能や必要な離着陸場数、優先的な整備が必要な離着陸場、設置場所の選定要件・基準を明確にし、離着陸場の設置候補用地や関連事業者の事業参画意向、地元自治体などの離着陸場誘致意向などの調査を進めてきた。

2023年度からは、設置に向けた具体的な計画などを検討・明確化した上で、設置・構築に向けた取り組みの着実な実施を図っていくこととしている。

事業を情報面から支援するインフラ・データ基盤の整備においては、インフラ・データ基盤のアーキテクチャやインフラ・データ基盤の整備・構築方針、インフラ・データ基盤の整備・運用主体など、具体的な計画などを検討・明確化し、整備に向けた取り組みを進めていく方針だ。

【参考】大阪府の取り組みについては「自動運転と大阪の現状(2022年最新版)」も参照。

■「インフラ」に商機を見出す企業が増える?

空飛ぶクルマの実用化に欠かせない離着陸場などのインフラ関連市場も熱を帯び始めている。関連インフラには、空飛ぶクルマの専用離着陸場となるバーティポートや航空管制システム、運航管理システム、エアマップ、給電設備など、ハード・ソフト双方で新たなソリューションが必要となる。

バーティポート開発の代表格は、英Urban Air Portだ。同社は2022年に世界初と言われるバーティポート「Air-One」をオープンし、話題を集めた。多数の空飛ぶクルマを効率的に離発着可能な設備となっているようだ。

国内では、ドローンやロボット関連のソリューション開発を手掛けるブルーイノベーションがUrban Air Portと覚書を交わし、バーティポートの早期実用化に向けポートの共同開発や国内実証を行うことに合意している。

また、パーク24とあいおいニッセイ同和損害保険、兼松は英Skyportsとバーティポート開発に向けた業務提携に関する覚書を締結している。

空飛ぶクルマの飛行ルートが増加すればするほどバーティポートの需要も増加していく。どういった立地でどのような設備が必要になるのか、必要とされる要件を見据えた各社の取り組みはすでに水面下で動き出しているようだ。

【参考】バーティポートについては「バーティポートとは?「空飛ぶクルマ」の離着陸場」も参照。

「航空管制」「運航管理」のシステムも必要に

航空管制システムや運航管理システムなども、空飛ぶクルマ用に新たに必要になる見込みだ。空飛ぶクルマによるサービスが本格化すれば、従来の飛行機などとは比較できないほどの数の機体が比較的低空域を共有しながら飛行することになる。

各機体の動向をリアルタイムで把握し、空全体に渡る円滑で安全な運航を守るシステムが必須となる。将来的な無人の自律飛行にも対応していく必要がありそうだ。

また、空中をマップ化したエアマップのもと最適航行ルートを生成する運航管理システム・プラットフォームなど、先々を見据えたソフトインフラ開発なども今後市場を拡大していく可能性が高い。

空飛ぶクルマの飛行実証などが本格化し始めるだろう2023年は、こうした周辺市場の開拓も加速していくものと思われる。

【参考】空飛ぶクルマ関連のインフラについては「空飛ぶクルマ、必要インフラ一覧(2022年最新版)」も参照。

■新興勢は資金調達で苦戦する1年に?

将来が有望視される空飛ぶクルマ分野だが、短期的には不安要素も存在する。世界的な景気低迷などを背景とした資金ショートがその代表例だ。

空飛ぶクルマの開発には膨大な資金が必要となる。技術を確立し、量産化のフェーズに達しても膨大な設備投資が必要となる。真の意味で黒字化を達成するのは、設備投資を一段落終え量産機が順調に売れ続いた先の話となる。事業を継続する上では、何より体力(資金力)が必要となるのだ。

陸上の自動運転分野では、米Argo AIがフォードとフォルクスワーゲンから投資を引き上げられ事業停止に陥った。上場済みのAurora Innovationも資金難がささやかれ、一時身売りするのでは――とする報道も出された。

EV界の帝王テスラでさえ、初の通期黒字を達成したのは設立から17年後、上場から10年が経過した2020年だ。長らく投資に支えられた結果として今があるのだ。

空飛ぶクルマの開発を進める企業の多くは新興勢で、投資家やベンチャーキャピタル、パートナーシップを結ぶ大手企業からの出資に支えられている状況だ。受注が始まったとは言え、景気低迷が長引けばこうした投資の先行きが危ぶまれる。大手企業においても、業績悪化によって未来への投資を縮小する動きが出てきてもおかしくない。

まだまだ体力が必要な空飛ぶクルマの開発分野。2023年は、こうした資金面にも注目が集まることも考えられそうだ。

■「空の移動革命」ロードマップをおさらい

2022年3月に公表された空の移動革命に向けたロードマップ改訂版によると、人やモノの移動を担う空飛ぶクルマの試験飛行・実証は2024年度ごろまで継続され、2025年開催予定の大阪・関西万博での飛行実現を目指す方針だ。

空の移動革命に向けたロードマップ(改訂案)=出典:経済産業省

その後、都市においては二次交通や都市内・都市間交通、都市圏交通、地方においては観光や二次交通、域内交通・離島交通、地方都市間交通へと、それぞれ対象エリアやネットワークを拡大していく。

モノの移動についてはやや先行し、離島や山岳地帯などで輸送する取り組みを2024年度を目途に開始し、その後都市部での荷物輸送など輸送網の拡大を図っていく。

環境整備面では、2023年度までに以下の項目について検討していく。

  • 座席数9席以下で操縦者が搭乗する場合と無人の場合における機体の基準整備
  • 遠隔操縦を含む操縦者・整備者の技術証明の基準整備
  • 運航安全に関する基準のガイドライン(荷物輸送や万博における旅客輸送などを想定)
  • 低高度における安全・円滑な航空交通のための体制整備(2024年度まで)
  • 航空運送事業の基準整備(荷物輸送、万博における旅客輸送等を想定)
  • 既存空港や場外離着陸場などの要件整理
  • 建物屋上への設置に関する基準整備や環境アセスメント方法の整備

上記の後、2024年度以降に自律飛行など需要に応じた多様な機体の基準や制度整備、運航拡大に対応した体制整備、高度な運航に対応したガイドライン改訂などを順次進めていく方針だ。

技術開発関連では、安全性・信頼性の確保や機体・部品の性能評価手法の開発、航空機・ドローン・空飛ぶクルマの空域共有技術の開発、悪気象条件や高密度・自律運航などに対応した基礎的な通信・航法・監視技術の開発、モーター・バッテリー・ハイブリッド・水素燃料電池・騒音低減といった要素技術の開発などを継続して進めていく。

■【まとめ】大阪関西万博に向けた動きが加速

2023年は、大阪関西万博に向けた取り組みがさらに加速する都市になる見込みだ。実証が本格化すれば、空飛ぶクルマの姿も徐々に目に見えるものとなり、現実味を帯びてくる。

また、世界の開発各社が万博での飛行を目指している点も興味深い。日本を舞台にした空飛ぶクルマの実用化が世界中の注目を集める可能性があるのだ。

【参考】関連記事としては「2023年の自動運転業界、実用化加速で「黎明期後半」に突入」も参照。

【参考】関連記事としては「2023年「MaaS」市場展望!自動運転タクシーも呼べるように?」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)









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