自動運転レベル4でできることは?(2022年最新版)

ドライバーは睡眠可能?飲酒はNG?



運転操作におけるドライバーの負担を軽減するADAS(先進運転支援システム)。技術が高度化すると自動運転となり、システムがドライバーの役割そのものを担うことが可能になる。


システムが運転操作を代替する自動運転中、ドライバーは運転操作から解放され、車内で自由な時間を過ごすことが可能になる。そこで注目されるのが、運転以外の行為=セカンダリアクティビティだ。

レベル4におけるドライバーには、どのようなセカンダリアクティビティが許容されるのか。2022年11月時点の情報をもとに、推測していく。

■レベル4におけるドライバーの存在
ドライバーレス走行を実現するレベル4

自動運転レベル4は「高度運転自動化」を指す。限定領域(ODD/運行設計領域)において、自動運転システムが全ての動的運転タスクを作動継続困難な場合の対応を含め持続的に実行する。作動継続が困難な場合においても、オペレーターなどの介入を前提としないため、ODD内においてはドライバーレスを実現することができる。

このドライバーレスの真価は、移動サービスや輸送サービスで発揮される。ドライバー不足や高い人件費率が経営を圧迫しがちな運送業界においては、自動運転技術による無人化で人件費の削減や個々のドライバーの負担低下を図ることが可能になる。


Waymo自動運転タクシー=出典:Waymoプレスリリース
手動運転併用型のレベル4も

ドライバーレスを可能にするレベル4だが、移動サービスなどにおいて一律で無人化が図れるわけではない。

例えば、タクシーや比較的狭いエリアを走行する路線バスの場合、車庫・事務所もODDエリアに含まれていれば、運行中は終始無人で対応することが可能になる。しかし、長距離バスや長距離トラックのように広域を走行するケースでは、必ずしも走行経路のすべてがODDに含まれるとは限らない。例えば、高速道路においてレベル4を実現しつつ、一般道では手動運転を行わなければならないケースが存在するのだ。

ドライバーは一般道を手動で運転し、高速道路に乗った段階で運転操作からしばらくの間解放される。その後、高速道路を降りる段階で再び手動運転を行う。高速道路に乗る前後でドライバーを交代することでレベル4区間のみをドライバーレスにすることも可能だが、レベル4搭載車両でもドライバーの存在が決して否定されるものではないということだ。

【参考】ODDについては「自動運転とODD(2022年最新版)」も参照。


自家用車におけるレベル4はドライバーの存在が前提に

自家用車向けのレベル4開発も進められており、すでに一部開発企業は市販化に向けた明確な計画を打ち出している。自家用車におけるレベル4は当然ドライバーの存在を前提としており、手動運転をベースにODDの範囲内において自動運転を実現する。当面は高速道路などの主要道路を中心にレベル4を実現するものと思われる。

進化の過程においては、レベル2以下のADASとレベル3、レベル4が混在する可能性が高い。例えば、一般道ではレベル2を実装し、高速道路の合流付近でレベル3、高速道路本線でレベル4――といったイメージだ。

レベル4のODD、レベル3のODD、レベル2のODDなどがそれぞれ存在し、その範囲内においてそれぞれの自動運転技術を活用できる仕組みだ。

【参考】自動運転レベルについては「自動運転レベルとは?定義・呼称・基準は?」も参照。

■レベル4 のODD範囲内におけるセカンダリアクティビティ
手動運転の存在を念頭に据えた行為が可能に?

自家用車などにレベル4が実装された場合、ドライバーは自動運転中に何を行うことができるのか。

レベル4は、ODD内においてはシステムが全ての運転操作を担い、作動継続が困難な場合もドライバーなどの介入を原則として求めない高度な領域だ。この観点から言えば、自動運転中のドライバーに認められるセカンダリアクティビティは限りなく広いように思える。

ただし、走行経路のすべてがODD内ということが全てのケースに当てはまるわけではない。自動運転タクシーなどドライバーレスを前提としたODD設定が行われていない限り、走行経路にODD外が存在し、手動運転を行う必要が生じることになる。

つまり、レベル4におけるドライバーは、ODD外における手動運転の存在を前提とした自動運転を行うことができると言える。

レベル4は「ブレインオフ」を可能にする

前述したように、レベル4車のドライバーはODD内における自動運転中、一切の運転操作義務を免れる。レベル3のようにシステムから急遽手動運転を要請されることも基本的にない。高度なレベル2におけるハンズオフやレベル3のアイズオフはもちろん、運転に関する思考を行わない「ブレインオフ」が可能になる。

スマートフォンやテレビの視聴はもちろん、パソコン操作やゲーム、読書、食事など、車内で行うことが可能な行為の大部分はおおむね認められるものと思われる。

レベル4自家用車では、その特性を生かし、車内空間をカスタマイズする新たなサービスが登場する可能性が考えられる。大型ディスプレイや音響機器を搭載し、映画鑑賞やゲームを楽しめる車内空間や、高い防音・防振性で仕事に集中できる車内空間など、さまざまなアレンジが考えられる。

レベル4自家用車の開発を進める自動車メーカーは、自動運転時にハンドルなどの制御装置を格納して運転席にゆとりをもたらすコンセプトモデルを相次いで発表している。

メーカー自らがレベル4における車内空間の在り方を模索していることは間違いなく、手動運転と自動運転それぞれの満足度を高め、それらを両立する新たな仕組みがレベル4自家用車に求められることになりそうだ。

睡眠は?

自動運転時の自由度が飛躍的に高まるレベル4だが、睡眠や飲酒はどのように扱われるのか。推測の域を脱しないが、おそらく睡眠はグレー、飲酒はNGとなるものと思われる。

自動運転中に一切の運転操作義務を負わず、原則として急な手動運転要請も行われないレベル4では、普通に考えれば睡眠もOKなはずだ。実際、ボルボ・カーズは車内を睡眠仕様に設えた自動運転コンセプトモデルを2018年に発表している。

ODD内を外れるタイミングを事前に把握することは可能であり、そのタイミングをもとにアラームを設定して自動運転中に仮眠をとる――といった使い方は可能なように思える。

しかし、起床後、頭が覚醒する前に運転操作に戻る可能性がある。判断力が不足した状態で運転を行うのは言うまでもなく危険だ。こうした危険性を排除する必要がある。

飲酒は?

飲酒については、NGになる可能性が高いのではないか。レベル4ドライバーは手動運転することを前提に乗車しているため、後々数時間超にわたり影響を及ぼす飲酒は厳禁となりそうだ。

なお、移動サービス用途のレベル4に「客」として乗る場合は、当然だが睡眠や飲酒も基本的には可能になる。

■レベル4のODD範囲外では?

レベル4車両も、レベル4のODD外ではレベル3やレベル2以下の運転となる。レベル3のODD内においてはアイズオフ、高度なレベル2のODD内ではハンズオフ運転などがそれぞれ許容される。

おそらく、レベル4実装後も対象エリアの拡大を図っていく動きが活発となるはずだ。拡大に向け、対象候補エリアにおいてまず高度レベル2を実装し、その後レベル3……といった過程を経ていく可能性も高い。

ただし、一般ドライバーのレベル2~4の理解度が成熟していないことも考えられるため、レベル3を省いて「ハンズオフ運転エリア」「自動運転エリア」のように明確に区分することなども想定される。

■【まとめ】「睡眠」が争点に?

現状、レベル4ドライバーにおけるセカンダリアクティビティの議論は本格化していないため推測の域を出ないが、運行の安全性を損なわない行為であれば許容されるものと思われる。

線引きが難しいのは、やはり睡眠の是非ではないだろうか。定義上、直ちに運転操作を行う義務はないものの、現実の道路交通を考慮するとそうも言っていられない。仮に許容される場合、何かしらの条件が付される可能性もある。

中国ではレベル4自家用車を2024年にも実用化する計画が持ち上がっており、思いのほか早くレベル4が拡大する可能性がある。有識者の議論を待ちたいところだ。

■関連FAQ
    自動運転レベル4とは?

    口語的定義は「高度運転自動化」で、事前に設定された「ODD」において、全ての運転タスクをシステムが実行する技術レベル・サービスレベルのことを指す。

    ODDとは?

    ODDは、自動運転が可能なエリア・条件を示すもので、日本語では「運行設計領域」と呼ばれる。エリアでいうと「高速道路」「◯◯州」、条件で言うと「時速◯◯キロ以下」「天候が雪以外」といった具合だ。

    自動運転レベル4の作動中は何ができる?

    「ブレイン(脳)」を運転のために使わない「ブレインオフ」の状態でも問題がなくなるため、食事をしたり、読書をしたり、電話をしたり、ゲームをしたり・・・といったことが可能になる。

    自動運転レベル4でもできないことは?

    「飲酒」は恐らく認められないかもしれない。自動運転レベル4ではODDをはずれた場合、人による手動運転が必要となるからだ。ただし、その車両がODD下においてのみ走行できるという限定的条件が課されれば、飲酒も認められるかもしれない。

    自動運転レベル4とレベル5の違いは?

    レベル4には「ODD」があるが、レベル5では「ODD」という概念がない。つまりレベル5では、いつでもどこでもどんなときでも完全自動運転が可能になる。

(初稿公開日:2022年9月22日/最終更新日:2022年11月8日)

【参考】関連記事としては「自動運転レベル3でできること(2022年最新版)」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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