悲報…東工大終了のお知らせ AI・自動運転で薄れる存在感 名大がNo.1?

大学発のベンチャー企業に注目



自動運転や人工知能(AI)の研究に力を入れる大学が増えているが、工業系大学として日本ナンバーワンと言われる東京工業大学は、この分野のニュースを目にすることは少なく、存在感が薄く感じる。一方で、自動車産業が盛んな愛知県に目を向けると、名古屋大学関係のニュースは多く、同大発のベンチャー企業の活動も盛んで日本における先端研究の最前線を走っている印象だ。


自動運転やAI分野の王者の称号は名古屋大が手にしているのか?大学自体の取り組みとともにそれぞれの大学発のベンチャー企業に焦点を当て、両大学を比較してみよう。

■脚光を浴びる名大の自動運転研究

名大では未来社会創造機構モビリティ領域で自動運転に関する研究を行っており、高精度道路地図の構築とその利用に必要な統合型の自己位置推定技術や、車両の動き予測のためのセンサー統合型の追跡・詳細認識技術などに取り組んでいる。

2014年度から自動運転技術の公道実証実験を実施しており、長崎大学らと共同開発した自動運転システムを、自動運転技術開発ベンチャーのZMP社のロボカーHVに搭載し、測量・3D(3次元)事業などを手掛けるアイサンテクノロジー社の高精度地図を活用した位置認識と経路生成を試した。

2017年11月には、低速度・地域限定のドライバーレスによる移動サービスを提供する「ゆっくり自動運転®」の公開実証実験も実施。約600メートルの距離を往復する自律走行デモや、走行中に前方にある障害物を検知して自動停止する障害物検知・衝突回避デモなどを行った。


■名大発ベンチャーに集まる開発マネー

2015年設立の物流AIのテックベンチャーである株式会社オプティマインドは、AIクラウド・プラットフォームサービス事業や最適化コンサルティング・R&D(研究開発)事業などを手がけている。2018年5月には株式会社ティアフォーと寺田倉庫を引受先とした第三者割当増資により資金調達を実施。7月リリース予定の配送ルート最適化クラウドサービス「Loogia」の導入企業を増やし、開発と事業化を加速していく。

オプティマインドに出資したティアフォーも名大発のベンチャー企業。米半導体大手のエヌビディアと業務提携し、ハンドルやアクセルペダルなどがない完全自動運転の小型電気自動車(EV)を開発した。

オープンソースの自動運転ソフトウェア「Autoware (オートウェア)」を用いており、2017年12月に日本で初めて一般公道における遠隔制御型自動運転システムの実験を実施し、自動運転レベル4(高度運転自動化)での運転に成功した。2018年5月には、トヨタ自動車などが出資する未来創生ファンドから推定10億円規模の出資も受けている。

このほか、AI搭載型BtoB SaaS(※SaaSとはネット経由でソフトを提供すること)のベンダーである株式会社トライエッティングや、学生が在学中に立ち上げた学生ベンチャーで、AI技術を生かしたソリューション開発などを手がける株式会社キスモなども研究開発に力を入れている。


■東工大は機械学習や先端AIの講義も

東工大は情報理工学院で機械学習や先端人工知能などAIに関するさまざまな講義を行っており、大学院課程には知能情報コースもある。産業ロボットやIT、AI技術などロボット社会の実現を進める技術が集結するロボデックスへの出展なども行っている。

■「人工脳」で注目の東工大発ベンチャー企業は?

大人しめの印象がある東工大発ベンチャー企業だが、独自の画像技術を活用した技術コンサルティングやロボットの知的制御に関する技術コンサルティングを手掛けるSOINN(ソイン)株式会社が元気だ。

新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)の研究開発支援プログラムに「スマホで育てる日本発個人向け人工知能」が採択されたほか、官民ファンドの産業革新機構から2兆5000億円を上限とする出資を受けている。「人工脳」と呼ぶ脳科学的アプローチによる技術には米軍なども注目しているという。

また、高性能なステレオカメラの開発とライセンス販売を手がけるITD lab株式会社は、2018年6月に第三者割当増資により総額4億8000万円の資金調達を実施したと発表した。スバル・アイサイトで使用されているステレオカメラの発明者である元東工大准教授の実吉敬二氏が2016年5月に立ち上げた創業2年のスタートアップ企業で、今後の飛躍が期待される。

■優秀な技術者の育成を担う工業系大学の重責

メディア露出度では名大が優勢で、そのためか大学発ベンチャー企業の活躍・注目度なども名大発のほうが高く感じる。しかし、東工大も研究開発能力では決して負けていないのだから、耳目に触れる研究や活動成果をもっと前面に出し、工業系大学ナンバーワンの名にふさわしい姿をみせてほしい。日本の将来を担う優秀な技術者の育成は、あなた(たち)にかかっている。


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