小型無人機(ドローン等)の飛行レベルとは?航空法改正で「レベル4」が可能に

有人地域における実証も本格化



小型無人機の飛行レベル=出典:国土交通省

陸地で進む自動運転の実用化とともに、空における自動運転技術の利活用も進んでいる。2021年6月には、ドローンなどの無人航空機を有人地帯上空で補助者なし目視外飛行を実現するための制度整備として、航空法の改正案が成立・公布された。いわゆる「レベル4飛行」を実現する内容だ。

この改正をもとに、自動運転による無人航空機の実用化に向けた取り組みが大きく加速することが予想されるが、空における「飛行レベル」はそもそもどのように定義されているのか。


この記事では、飛行レベルの定義をはじめ、無人航空機に関する取り組みの動向について解説していく。

■無人航空機をめぐる議論の動向

小型無人機においては、2015年4月に首相官邸屋上で小型無人機が発見される事案が発生し、これを契機に安全な運用ルールの策定や有効活用の在り方をめぐる議論が本格化した。同年、「小型無人機に関する関係府省庁連絡会議」や「小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会」などが設立され、安全な運用ルールの策定とともに空の産業革命の実現に向けた論点整理・環境整備が進められていくことになる。

安全な運用ルールをめぐっては、同年成立した改正航空法で、規制の対象となる無人航空機について「飛行機、回転翼航空機などであって人が乗ることができないもののうち、遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるもの(ただし200グラム未満のものを除く)」と定義された。超軽量のものを除くドローンやラジコン機などを対象としたもので、飛行にあたり許可を必要とする空域や飛行方法などが定められた。

一方、空の産業革命の実現に向けては、2016年に開催された小型無人機に係る環境整備に向けた官民協議会の中で「無人航空機の利活用と技術開発のロードマップ」案が示された。この中で、小型無人機の将来的な利用形態の本格化に際し必要となる技術開発や環境整備に向け、飛行技術に応じてレベル分けした分類が示された。


レベル1「目視内・操縦飛行」、レベル2「目視内(操縦無し)」、レベル3「離島・山間部等の無人地帯での目視外」、レベル4「都市部等の有人地帯での目視外」といった分類で、これが踏襲されていくことになる。飛行レベルの誕生だ。

2017年には、この飛行レベルを実現目標として取り入れた「空の産業革命に向けたロードマップ」が初めて策定され、以後毎年更新されている。最新版のロードマップ2021では、レベル4を2022年度を目途に実現する目標が掲げられている。

■飛行レベルとは?
飛行レベル1:目視内・操縦飛行

飛行レベル1は「目視内・操縦飛行」で、見える範囲で手動操作する一般的なドローン利用の形態を指す。農薬散布や映像コンテンツのための空撮、橋梁や送電線といったインフラ点検などがこのレベルに該当する。

飛行レベル2:目視内飛行(操縦無し)

飛行レベル2は「目視内飛行(操縦無し)」で、見える範囲で自動運転機能を活用した飛行を行うものを指す。例としては、空中写真測量やソーラーパネルの設備点検などが挙げられる。


飛行レベル3:無人地帯での目視外飛行(補助者の配置なし)

飛行レベル3は「無人地帯での目視外飛行(補助者の配置なし)」で、住民や歩行者らがいないエリアにおいて目の届かない範囲まで飛行する形態を指す。離島や山間部への荷物配送、被災状況の調査、行方不明者の捜索、長大なインフラの点検、河川測量などがこれに該当する。

飛行レベル4:有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(補助者の配置なし)

飛行レベル4は「有人地帯(第三者上空)での目視外飛行(補助者の配置なし)」で、市街地などを含めたエリアにおいて目の届かない範囲まで飛行する形態を指す。都市の物流や警備、発災直後の救助、避難誘導、消火活動の支援、都市部におけるインフラ点検などがレベル4として考えられる。

■レベル4を見据えた航空法の改正

官民協議会などでは、飛行機や回転翼航空機、滑空機、飛行船のうち、人が乗ることができず遠隔操作または自動操縦により飛行させることができるものを「ドローン等」とし、このうち200グラム以上の重量のものを「無人航空機」と位置付けている。

なお、航空法では「ドローン」という用語は使用されておらず、無人航空機について「航空の用に供することができる飛行機、回転翼航空機、滑空機、飛行船その他政令で定める機器であって構造上人が乗ることができないもののうち、遠隔操作又は自動操縦により飛行させることができるもの(その重量その他の事由を勘案して~中略~安全が損なわれるおそれがないものとして国土交通省令で定めるものを除く)」と定義している。

▼航空法
https://elaws.e-gov.go.jp/document?lawid=327AC0000000231

この国土交通省令で定められる重量は、施行規則により200グラム未満とされている。この200グラム未満の機体を含め、便宜上「ドローン等」と称していることになる。

このドローン等の飛行においては、空港周辺や150メートル以上の上空、人口集中地区、国の重要施設や防衛関係施設の周辺などは飛行禁止空域と定められ、飛行させるためには国土交通大臣の許可や施設管理者の同意などが必要となる。

また、飛行空域を問わず、飲酒時の飛行や夜間飛行、目視外飛行、催し場所での飛行、物件の投下なども原則禁止されている。

現行法上、レベル3は飛行ごとの許可により可能

現行法上、レベル1、2は遵守すべきルールを守れば可能で、無人地帯における目視外飛行となるレベル3は飛行ごとの許可により可能、有人地帯における目視外飛行となるレベル4は原則禁止されているのが現状となる。

2021年6月の改正では、レベル4飛行実現に向け、国土交通大臣が機体の安全性を認証する制度「機体認証制度」と、操縦者の技能を証明する制度「技能証明制度」を創設することが盛り込まれた。

技能証明を有する者が機体認証を受けた無人航空機を飛行させる場合、国の許可や承認を受けることでレベル4飛行が可能になる。また、これまで国の許可・承認を必要としていたレベル3飛行などについても手続きが合理化される。

一方、無人航空機を飛行させる者に対し、人身事故や物件の損壊、航空機との衝突・接触といった事故発生時に国への報告を義務付けるとともに、運輸安全委員会が調査対象とする航空事故に無人航空機に係る事故のうち重大なものが追加される。

レベル4の実現に向けては、このほか運航管理ルールの明確化やユースケースの検討、必要となるインフラ整備など課題は山積しているが、実証環境が整うことで徐々にクリアされていく。2022年度に実証から実用実証段階へと移行し、物流をはじめ災害対応や農業、医療、測量、警備など各分野での応用が広がっていく見込みだ。

■人の移動を担う空飛ぶクルマは?

上記は「人が乗ることができない」無人航空機に関する動向だが、これとは別に空の移動革命に向けた官民協議会などが「人の移動も可能にする」空飛ぶクルマを見据えた協議を進めている。

空飛ぶクルマの実用化に向けた「空の移動革命に向けたロードマップ」では、山間部など人の少ない地方におけるモノの移動から2023年を目標に事業化し、2030年代に向け地方における人の移動、都市における人の移動へと徐々に拡大していく方針を掲げている。

▼空の移動革命に向けたロードマップ
https://www.meti.go.jp/press/2018/12/20181220007/20181220007_01.pdf

空の移動革命に向けたロードマップ=出典:経済産業省(タップorクリックすると拡大できます)

2021年度は、ロードマップの改訂や中長期的なユースケースについて検討を進めるほか、2025年に開催される「大阪・関西万博」で空飛ぶクルマを活用したサービスを実施するため「大阪・関西万博 ×空飛ぶクルマ実装タスクフォース」を設置し、議論を進めていくこととしている。

こうした空飛ぶクルマに対しては、今のところ技術水準や実現可能なサービスなどに応じた明確なレベル分けはされていないが、こちらも目視内・外や手動・自動操縦など分類し、段階に応じたレベル設定を行うことで関係者以外も共通認識を持ちやすくなる。

無人航空機と同様の定義をそのまま流用することもできそうだが、人が搭乗するモデルは機体のサイズが異なり、従来のヘリコプターレベルの機体が登場する可能性も高い。サイズや重量による規制も必要となるため、新たな枠組みが求められることになりそうだ。

■【まとめ】国内・海外とも実用化に向けた動きが加速中

海外では、空飛ぶクルマを開発するスタートアップが大型受注案件を続々と発表し、株式上場する動きも相次ぐなど実用化・ビジネス化に向けた動向が急加速している。

国内においても、空の産業革命・移動革命は遠い未来の話ではない。2022年度には本格的な実証が始まり、そのまま事業化への道をたどっていく。人の移動を担う空飛ぶクルマも徐々に実証が加速し、大阪・関西万博が開催される2025年には広く人の目に留まることになりそうだ。

各社の開発動向とともに、社会実装に向けた国の取り組みにもしっかり注目していきたい。

▼国土交通省航空局「無人航空機に係る制度検討の経緯について」
https://www.mlit.go.jp/common/001351989.pdf
▼国土交通省航空局「無人航空機のレベル4の実現のための新たな制度の方向性について」
https://www.kantei.go.jp/jp/singi/kogatamujinki/kanminkyougi_dai15/siryou1.pdf

※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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