国土交通省は2021年7月6日までに、国交省の施策全般に関する年次報告として毎年公表している「国土交通白書」の2021年版(令和3年版)を公表した。
2021年版では昨今のコロナ禍や災害を踏まえ、これらを乗り越えて豊かな未来を実現する、という基本テーマを掲げ、全424ページにわたって実現に向けた取り組みなどを説明しており、MaaSや自動運転についても言及している。
▼令和3年版国土交通白書
https://www.mlit.go.jp/report/press/content/001410698.pdf
■「MaaS」を改めて定義、最近の取り組みの解説も
「MaaS等新たなモビリティサービスの推進」は、白書の163〜164ページに掲載されている。
その中で、MaaSを「スマホアプリ又はwebサービスにより、地域住民や旅行者一人一人のトリップ単位での移動ニーズに対応して、複数の公共交通やそれ以外の移動サービスを最適に組み合わせて検索・予約・決済等を一括で行うサービス」と改めて定義付けしている。
また、MaaSの社会実装に向けた取り組みについても説明しており、先駆的な取り組みを行う19地域とモデルプロジェクトを36事業それぞれ選定して支援を行ったことや、新型輸送サービスの導入支援や交通機関のキャッスレス決済の導入支援を実施したことにも触れている。
また、国交省は2019年度に「MaaS関連データの連携に関するガイドライン」を策定し、データ連携に関わる環境整備を推進していることも説明されている。
今後については、さらにMaaSによる付加価値を高めるために、モビリティと他の幅広い分野を連携させ、地域課題の解決に資するMaaSのモデル構築や横展開を推進するとともに、交通機関におけるキャッシュレス化や交通情報のデータ化などのMaaSの基盤づくりに努めるという。
【参考】関連記事としては「街とモビリティ、国が2030年の将来像公表!自動運転やMaaSが大活躍」も参照。
■「自動運転」の実現に向けた環境整備などを解説
自動運転に関しては「自動運転の実現」と題し、411〜412ページに掲載されている。
自動運転の実現に向けた環境整備としては、2020年に改正道路運送車両法を施行して自動運転車の安全基準を策定したことや、2020年11月に世界で初めて自動運転車(レベル3)の型式指定を行ったこと、インフラ面の支援として「自動運行補助施設」の技術基準などを策定したことなどについて触れている。
また実証実験や社会実装については、最寄駅などと目的地を結ぶ「ラストマイル自動運転」に関し、沖縄県北谷町などで無人自動運転移動サービスを開始したことや、「中山間地域における道の駅等を拠点とした自動運転サービス」の実証実験や「ニュータウンにおける自動運転サービスの実証実験」を行ったことを報告している。
また、2021年2月には新東名高速道路において後続車無人隊列走行を実現しており、新東名・新名神を中心に自動運転・隊列走行などの実現に向けたインフラ側からの支援策について、現在検討を推進しているという。
【参考】関連記事としては「自動運転と法律・ガイドライン、日本の現状まとめ」も参照。
■【まとめ】国の動向をキャッチすることも重要
自動運転の社会実装に向けては、国と民間企業が足並みを揃えていく必要がある。車両の開発や要素技術の開発だけではなく、インフラ整備や法整備なども必要になってくるからだ。
そのため自動運転の未来を考えるときは、国の動向をキャッチすることも重要になる。その際に国土交通白書は資料の1つとして役立つ。業界関係者は時間があるときに、ぜひ目を通しておきたいところだ。
【参考】関連記事としては「【資料解説】自動走行の実現及び普及に向けた取組報告と方針Version 5.0」も参照。