自動運転×宅配、ルート最適化AIとECを結ぶ「コネクタ」の重要性

システムインテグレーションが必要不可欠に



自動運転技術を活用した自動配送ロボットの実用化に向け、実証が加速している。ロボット開発事業者や宅配事業者を中心に、小売りやエリアマネジメント事業者らが参画し、公道を交えた本格実証が各地で盛んに行われている。


こうした自動配送ロボットの実用化に欠かせないのが、フリートマネジメントやルーティングを行うシステムだ。これらのシステムは通常宅配ロボット事業者が開発し、ロボットとともに提供しているが、将来より効率的かつ効果的に事業を行うためには、優れた機能を有したサードパーティのソフトウェア・システムも必要となってきそうだ。

この記事ではこうしたサードパーティのソフトウェア導入において、各社を結ぶ「コネクタ」の役割の重要性について解説する。

■自動配送ロボットによる宅配サービスの未来
本格サービス展開とともに多頻度化・複雑化する配送需要

自動配送ロボットを活用した宅配サービスが本格化すると、複数台のロボット活用のもと、エリア内のさまざまな配送先に向け、より効率的にロボットを運行させるシステムを構築する必要がある。同時多発的に押し寄せる宅配需要に対し、複数のロボットでいかに効果的かつ効率的にタスクに対応できるかがカギを握るのだ。

場合によっては、1台のロボットが複数の荷物を積み込んで複数の配送先をめぐったり、出先で新たな配送物をピックアップしたりすることも考えられる。こうした際、複雑なルートを最短でめぐるルーティング技術が求められることになる。


また、各ロボットが配送先に荷物を届けて戻ってくるまでの所要時間もなるべく正確に予測し、次の需要に備え運行計画を練る必要がある。こうした予測においてもルーティング技術がベースとなりそうだ。

多頻度化・複雑化する配送需要に対応するには、AI(人工知能)を活用した専門的なルーティング技術やフリート管理システムが必須となる。

ソフトウェア事業者とロボット事業者をつなぐ「コネクタ」

こうした専門技術を有する企業の代表格がオプティマインドだ。AIを活用した同社のルート最適化システム「Loogia(ルージア)」は、配送時間指定やドライバー設定、帰着地点の設定、ドライバー間における配送時間や配送件数の均等化、Uターン走行抑制、配送先に対し車両を左づけするルート設定など、さまざまな条件を要素に加えながら最適なルートを作成することができる。

後段で触れるが、同社はすでに自動配送ロボットの実証に携わっており、ティアフォーが開発した小型自動搬送ロボット「Logiee (ロージー)」とシステムを連携させ、配送ルートの最適化を図っている。


ただ、こうしたシステム連携は特定の企業間にとどまっているのが現状だ。両社はともに名古屋大学発スタートアップで、ティアフォーはオプティマインドの出資者でもある。もともと緊密な関係にあるのだ。

ルート最適化システムなどを有するソフトウェア事業者は、より多くの自動配送ロボット事業者と連携を果たしてこそビジネスが成り立ち、また全体最適化を図ることが可能になるのだ。

今後、こうしたソフトウェア事業者とロボット事業者との間をつなぎ、かつEC側ともシステムを結ぶ「コネクタ」となるような統合管理システムが重宝される可能性が高そうだ。

■オプティマインドによる配送ロボットの実証

オプティマインドは、三菱商事、三菱地所、東京海上日動火災保険の3社が実施する自動配送ロボットの実証に、自動運転技術や高精度3次元地図作製技術などを提供するティアフォーやアイサンテクノロジーとともにパートナー企業として参画している。

第1弾の実証は2020年12月に岡山県玉野市で行われ、ティアフォーが開発した小型自動搬送ロボット「Logiee S1」を使用し、小売店から複数の顧客に医薬品や日用品などを配送する公道実証を実施した。

配送ミッションごとに任意で設定した5パターンの注文情報をもとに、オプティマインドのLoogiaがルートを計算し、近接監視・操作と遠隔監視・操作の両方で配送したようだ。

第2弾の実証は、2021年4月に茨城県筑西市で行われた。2種類の小型配送ロボットが連携して道の駅やその周辺道路を自動で走行し、実際の物流サービスを意識した実践的なオペレーションとして農作物の集荷や商品の配送を行ったようだ。

LoogiaはAPIを通じて配送ロボットにルートの計算結果を提供した。注文を受けたオペレーターが注文情報を入力し、注文が確定すると、自動でLoogiaへ計算リクエストが行われる。その計算結果が配送ロボットの走行スケジュールとして登録されるといったシステム連携を実装した。

APIを活用して汎用性を高めていくのも一つの手と言えそうだ。

■【まとめ】未統制の新規市場 コネクタの役割は今後増大

自動配送ロボットによる宅配サービスの実現には、EC事業者やロボット開発事業者、各種ソフトウェア事業者らが緊密に連携し、システムを統合していく必要が生じる。ただ、市場化が始まったばかりの開発領域であるため、海外企業含め新たなプレイヤーが続々と参入し、業界として統制されていないのが現状だ。

各社のシステムインテグレーションを促進する「コネクタ」の役割は、サービス実用化とともにより大きくなり、必要不可欠な存在へと変わっていくのだろう。

【参考】関連記事としては「自動配送ロボの公道走行解禁、ECとFMSの連携が今後の鍵に!」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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