「マンション向けMaaS」、実験的に始動!日鉄興和不動産が発表

オンデマンドバスで入居者の利便性アップ



「FRECRU(フリクル)」の車両=出典:日鉄興和不動産プレスリリース

マンション分譲事業などを手掛ける日鉄興和不動産(本社:東京都港区/代表取締役社長:今泉泰彦)は2020年2月24日までに、自社開発の分譲マンションでマンション専用オンデマンドモビリティ「FRECRU(フリクル)」をマンション向けMaaSとして提供する実証実験を開始すると発表した。

実証実験の舞台となるのが、東京都江戸川区の分譲マンション「リビオシティ・ルネ葛西」。入居者専用のバスとしてFRECRUを使用し、マンションの最寄り駅である葛西駅やその周辺駅・施設までをオンデマンドで運行する。


この実証実験における運用システムとしては、トヨタやソフトバンクが出資するMONET Technologies(モネ・テクノロジーズ)の配車プラットフォームと乗車予約のためのスマートフォン向けアプリを利用するという。

日鉄興和不動産はこの実証実験を通じて、運行バスの利用頻度や最適な費用負担設定、運行時間などの利用ニーズと、マンション向けMaaSの採算性を検証するほか、マンションでの運行に必要な機能や運行ルールなどに関する課題も洗い出すという。

今後は、周辺施設との連携や車内広告配信、バスツアー企画などの付加価値向上策も検討する予定だ。また、この実験結果を踏まえて葛西エリアのほかの新築マンションとの連携やサービス提供、サービスエリアの拡大も検討するという。

■マンション向けMaaSの概要は?

実証実験を行う「リビオシティ・ルネ葛西」(全439戸)は2019年9月竣工で、マンション内に保育所もある分譲マンションだ。オンデマンドバスの運行期間は半年から1年程度を予定している。使用車両は日野自動車の「リエッセⅡ GX」(定員26人)で、入居者のみが乗車できる。


平日の午前7〜9時は最寄りである葛西駅までのシャトル運行で、利用料は200円。日中の時間帯である午前9時半から午後11時は予約運行となり、利用料は300円、乗降ポイントは、駅や病院、公園などを中心とした地点を11カ所を予定しており、ショッピングモール「アリオ葛西」や西葛西駅、葛西臨海公園駅などが含まれるようだ。

乗降ポイントMAP=出典:日鉄興和不動産プレスリリース

乗降ポイント間ではどこでも移動が可能で、この乗降ポイントは利用実績や利用者の要望を踏まえ、順次増加や見直しを行うという。乗車予約はモネ・テクノロジーズ社のスマートフォンアプリからでき、配車リクエストの受付は利用の24時間前から10分までとなる。支払いは乗車チケットかPayPay決済の2つの方法で可能だ。

日鉄興和不動産はモネ・テクノロジーズ社が設立した企業横断組織「MONETコンソーシアム」に加盟しており、検討を重ねた結果、今回の実証実験の実施を決めたという。

■今後「不動産×MaaS」の取り組みは拡大!?

このような「不動産×MaaS」の取り組みに意欲的な企業としては、三井不動産も挙げられる。2019年4月、MaaSプラットフォーム「Whim(ウィム)」をフィンランドなどで展開しているMaaS Global社と街づくりにおけるMaaS実用化に向けて協業することを発表している。


今回の「マンション向けMaaS」はMONETコンソーシアムとの連携により実現しており、この取り組みが他のMONETコンソーシアム参画企業にも波及する可能性は大いにありそうだ。

ちなみにMONETコンソーシアムには日鉄興和不動産や三井不動産のほか、住友不動産や大和ハウス、三菱地所、森ビルなど不動産業界大手のほか、WeWork Japanといった新興企業なども名を連ねている。

【参考】関連記事としては「自動運転普及で「WeWork型」一等地不動産ビジネスは崩壊する」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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