中国 XPengの「YOYO」自動運転ロボタクシーが一般公開 VWも採用するAI技術を搭載

自社開発したAIチップ「Turing」を搭載



出典:Xpengプレスリリース

中国EV大手XPeng(シャオペン)が10月8日、自動運転ロボタクシー「YOYO(ヨーヨー)」の登録受け付けを中国で始めた。誰でも自由に乗れるわけではない、招待コードを持つ人に限った一般向けの第一歩だが、社員に限られていた乗車体験が初めて外部の利用者に広がった。

YOYOは自社開発のAIチップ「Turing(チューリング)」を4基搭載し、演算性能は合計3,000TOPS(毎秒の演算回数を兆単位で表す指標)に達するとみられる。運転AIモデルVLA 2.0で走り、LiDAR(光による距離測定センサー)もHDマップ(高精度3次元地図)も使わない。VLA 2.0は、独自動車大手フォルクスワーゲン(Volkswagen)が中国向けの最初の顧客として採用を決めている。XPengは翌9日、国連欧州経済委員会UNECEの新設タスクフォースで、国際自動車工業連合会OICAの事務局役を担うことも発表した。


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■XPengの「YOYO」ロボタクシー、一般向け登録は招待制で始まった

10月8日、XPengはロボタクシー事業のブランド名を「XPENG YOYO」と発表した。同じ日に、中国で自動運転の配車登録の受け付けを始めている。配車用の簡易アプリと公式サイトの専用ページが公開され、登録には招待コードが必要になる。

使える範囲は限られる。運行エリアは車両を生産する広州の一部にとどまる。これまでは社員が1回1元の有料試験で使うだけだったため、外部の利用者が加わるのは今回が初めてだ。

開発の歩みは速い。2026年5月に広州で量産車が生産ラインから完成車として出る「ラインオフ」を迎え、7月には配車から自動での乗降までの一連の流れを確認した。8月には、広州市から遠隔試験の資格を得て、運転席に安全オペレーターを置かないテストを、同市の一部の試験道路で行えるようになった。

一般向けに開かれたといっても、中身は招待制の登録開始だ。公式発表から確認できるのは試験利用の拡大であり、運賃を取る本格的な商用運行が始まったわけではない。運転席無人での旅客運行は、2027年の実現が目標とされている。


【自動運転ラボの視点】
登録は招待制で、エリアも広州の一部にとどまる。それでも、自動車メーカー自らが自社設計の専用車で外部利用者に乗車体験を広げた点は見逃せない。。自動運転タクシー市場は、車両メーカーが主役を狙う段階に入った。

■YOYOはAI+カメラのE2E型、テスラと同じ系統の自動運転

YOYOの運転を担うのは、XPengの第2世代のAIモデルVLA 2.0だ。カメラ映像から運転操作までを一つのAIでつなぐエンドツーエンド(E2E)方式で、LiDARとHDマップを使わず、カメラを中心にAIが周囲を判断して走る。

米EV大手テスラ(Tesla)が運転支援機能「FSD」で進めてきたE2E方式と似た構造だ。XPengの技術者も、基本的な考え方は近いと述べている。レーザーセンサーや高精度地図を前提に、認識から制御までを段階ごとに組み上げてきた従来の自動運転レベル4の開発とは、進め方が大きく異なる。

VLAはVision-Language-Action(視覚・言語・動作)の頭文字で、第2世代では言語を介する中間の処理を省き、映像から動作へ直接つなぐ。


演算を支えるのは、XPengが自社開発したAIチップTuringだ。1基の実効演算性能は750TOPSで、4基を合わせると3,000TOPSになる。XPengはこれを、車載用として世界最高の演算性能と主張している。車両は主力SUV「GX」の車台をもとに、広州の生産ラインで造る量産車で、後付けの改造ではなく、生産の段階からロボタクシー向けに作られている。

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■フォルクスワーゲンも採用、XPengのVLA 2.0が持つ意味

フォルクスワーゲンは、XPengのVLA 2.0を最初に使う顧客に指名されている。XPengが2026年3月に発表したもので、対象は中国市場向けだ。XPengが自社の車両で磨いてきた運転AIを、外部の大手メーカーが採る動きになる。

ただし、VLA 2.0の全世界向けの提供開始は2027年とされ、フォルクスワーゲン車への搭載が始まったとは確認できていない。

YOYOに載るのも、同じVLA 2.0の名を持つモデルだ。ロボタクシー用と乗用車用で仕様が同じかどうかは公表されていない。なお、フォルクスワーゲンはXPengの戦略的株主でもあり、両社の関係は技術の提供にとどまらない。

中国勢の存在感は、自動運転タクシー市場の数字にも表れている。調査会社GACO Autoの2026年のシェア予測では、上位9社のうち米国企業は米Google系の自動運転開発企業ウェイモ(Waymo)、米EV大手テスラ(Tesla)、Rivian(リヴィアン)の3社だけで、残る6社は中国企業だ。

■UNECEの新設タスクフォースで事務局役、XPengが担うもの

XPengは10月9日、UNECEの自動車基準調和世界フォーラムWP.29の下に新設されたシナリオ関連情報交換タスクフォースTF-ESRIで、OICAの事務局役を務めると発表した。米自動車技術会SAEの事務局役と協力して、運営を支える。

役割は、タスクフォースの運営の調整と事務を支え、参加者による情報や経験の交換を円滑にすることだ。基準の策定そのものを担うわけではない。規制当局や認可機関、技術の専門家、産業界の代表が集まり、実際の走行で得た知見を共有する場になる。

XPengは2026年2月にも、上海で開かれたUNECEの会合で、日本や欧州連合、米国などの政府関係者に自社の運転支援機能XNGPを体験させている。議論の場に早くから関わる姿勢は一貫しているが、得られるのは議論への近さであり、規則を左右する力とは別物だ。

■XPengのYOYOが示す、フォルクスワーゲンも採用する中国AIの勢い

今回の動きは、ロボタクシーの登録開始という一つの出来事にとどまらない。車両のYOYO、運転AIのVLA 2.0、国際的な議論の場という三つを、XPengが同時に進めていることが見えてくる。一般公開と呼ぶには招待制という条件が付くが、フォルクスワーゲンも採用するAI技術を軸に、中国勢が技術から市場まで手を伸ばす流れは強まっている。

ただし、いずれも入口の段階だ。YOYOの運行は広州の一部に限られ、XPengは運行そのものをパートナーに任せる方針を示している。収益は車両の販売やサービス、手数料の分配で得る考えで、具体的な運行事業者はまだ明らかになっていない。フォルクスワーゲンへの提供も、本格化するのは2027年以降だ。

日本向けの展開は、現時点で発表されていない。ただ、公式は英語名のYOYOを世界市場での認知を意識して選んだと説明しており、海外展開を視野に入れていることがうかがえる。自動運転ロボタクシー市場の競争は、車両の性能だけでなく、AIの供給先と国際ルールの議論の場でも進んでいる。日本の事業者には、中国勢のこうした動きを織り込んだ戦略が問われる。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報)
【著書】
・自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
・“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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