メルセデスのSクラスが「無人タクシー」へ 中東で富裕層に狙い

中国自動運転企業と連携で



独メルセデス・ベンツ(Mercedes-Benz)が、次世代Sクラスをベースにした自動運転レベル4ロボタクシーで中東アブダビに参入する。


中国自動運転企業Momenta(モメンタ)、UAEのタクシー事業者Lumo(ルモ)と提携し、2026年に商業運行を始める計画だ。高級セダンによる自動運転レベル4の商用サービスとしては世界初の試みで、中東で高級層・富裕層を狙う。

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■メルセデスのSクラスが「無人タクシー」に

独メルセデス・ベンツ、中国自動運転企業Momenta(モメンタ)、UAEのタクシー事業者Lumo(ルモ)の3社が、高級ロボタクシーサービスの共同展開を明らかにした。

使用する車両は次世代のメルセデス・ベンツSクラスで、業界初となるスケーラブルな高級モデルとして自動運転レベル4の技術を搭載する。これまで米配車大手ウーバー(Uber)のロボタクシーや米EV大手テスラTesla)の取り組みは、価格を抑えた大衆向けの車両を中心に展開されてきた。今回のSクラスによる無人タクシーは、その流れとは一線を画す高級路線の一手といえる。

フリート(車両群)は2026年にアブダビで本格的な商業運行を始める予定で、その後はグローバル市場への展開も計画されている。


【自動運転ラボの視点】
高級車ブランドが自らレベル4ロボタクシーに乗り出す例は珍しい。中国発の自動運転AIが欧州の高級セダンに搭載される点も見逃せない。中東発の実証がグローバル標準になり得るか、今後の展開が焦点だ。

【参考】関連記事としては「メルセデス、個人所有のレベル4自動運転車「2030年までに」」も参照。

■メルセデス・モメンタ・ルモの3社の役割

今回のロボタクシー事業は、3社がそれぞれ異なる役割を担う体制で成り立っている。メルセデス・ベンツは車両となる次世代Sクラスを提供し、モメンタは自動運転技術を担う。ロボタクシーサービスは、モメンタの強化学習モデルMomenta R6によって駆動される仕組みだ。

一方、実際の配車・運行を担うのがルモである。ルモは、UAEを拠点とする先端自律走行技術企業K2グループが運営するタクシー事業者で、規制に準拠した安全な自動運転タクシー体験の提供を掲げている。K2グループはすでにUAE国内で自動運転車両の運行認可を取得済みで、この規制対応の速さが、今回のアブダビでの早期商業化を後押ししたとみられる。

車両、自動運転技術、現地運行というそれぞれの強みを持ち寄る座組みは、異業種連合によるロボタクシー事業の一つのモデルケースといえるだろう。


■高級車×レベル4×商業サービスという異色の組み合わせ

自動運転タクシー市場では、これまで庶民向けの普及路線が主流だった。米配車大手ウーバーが展開するロボタクシーや、米EV大手テスラが手掛ける取り組みは、いずれも比較的手頃な価格帯での利用拡大を目指すサービスである。

これに対して、メルセデス・ベンツのSクラスを使ったロボタクシーは、高級セダンによる自動運転レベル4の商用サービスという、世界的にも例のない組み合わせだ。中東の富裕層を主要な顧客層に見据えた高付加価値な自動運転タクシー市場を切り開く狙いがあるとみられる。

アブダビという都市の選択も象徴的である。UAEは自動運転分野での規制整備が比較的進んでおり、富裕層需要も厚い。高級車ブランドがロボタクシー市場に参入する実験の場として、適した土壌だったといえるだろう。

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■モメンタが広げる中国発自動運転AIのグローバル展開

アブダビでのロボタクシー事業は、モメンタにとって単発の取り組みではない。同社は2025年9月、米配車大手ウーバーと提携し、2026年からドイツ・ミュンヘンを皮切りに自動運転レベル4ロボタクシーの実証を始めると発表している。

さらに2025年後半には、独BMWとも提携を発表した。ただしこちらは、2026年に中国市場向けに投入される次世代BMW iX3に搭載する運転支援システムの共同開発であり、自動運転レベル2にあたる。アブダビやミュンヘンの自動運転レベル4ロボタクシー案件とは、自動運転のレベルが異なる点には注意が必要だ。

モメンタは、量産車向けの運転支援システムで得た走行データを、より高度な自動運転技術の開発に生かす飛輪戦略を掲げているとされる。同社はすでにOEMパートナーを通じて約40万台の車両に運転支援システムを供給しており、この蓄積されたデータと知見を、自動運転レベル4ロボタクシーの開発にも順次反映させているとみられる。

なお、メルセデス・ベンツは2017年からモメンタの初期投資家でもあり、両社は資本面でも長期的な関係を築いてきた。中国発の自動運転AIが、欧州の高級車ブランドや配車大手と手を組みながらグローバルに広がる構図が、ここにも表れている。

■Sクラス無人化による高級ロボタクシー市場の行方

メルセデス・ベンツのSクラスが無人タクシーとして走り出す2026年は、自動運転タクシー市場にとって一つの転機になるかもしれない。これまで大衆向けの普及競争が中心だった同市場に、高級層という新たな軸が加わるからだ。

中東で先行するこの取り組みが軌道に乗れば、他の高級車ブランドや富裕層需要の厚い都市への波及も見込まれる。Sクラスという象徴的な車種を無人化するという選択は、自動運転技術の成熟度をアピールする狙いも込められているだろう。中国発の自動運転AIと欧州の高級車、そして中東という組み合わせが、自動運転タクシー市場の新たな勢力図を描き始めている。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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