日本のベンチャー、トヨタ車を「1週間」で自動運転化

E2Eに取り組むTuring



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

完全自動運転の実現を目指すTuring(チューリング)。カメラのみのエンドツーエンド(E2E)モデルというシンプルな構成で果敢にレベル5に挑んでいる。

このシンプルな構成ゆえか、新たな車両への自動運転システムの統合は3カ月で完了するという。すでに実績のあるトヨタ・アルファードであれば1週間で調整できるようだ。


これは早いとみるべきなのか、遅いとみるべきなのか。自動運転に関する話題は豊富にあるが、自動運転システムを一般車両に統合する現場の実態に関する話は意外と少ないように感じる。

Turingの取り組みをもとに、車両システム構築の現場に迫る。

編集部おすすめサービス<PR>
自動車保険 スクエアbang!(一括見積もり)
「最も安い」自動車保険を選べる!見直すなら今!
新車定額!リースナブル(車のカーリース)
お好きな車が月1万円台!頭金・初期費用なし!
車業界への転職はパソナで!(転職エージェント)
転職後の平均年収837〜1,015万円!今すぐ無料登録を
タクシーアプリは「DiDi」(配車アプリ)
クーポン超充実!「無料」のチャンスも!
編集部おすすめサービス<PR>
スクエアbang!
「最も安い」自動車保険を提案!
リースナブル
新車が月々2万円から!
パソナキャリア
転職後の平均年収837〜1,015万円
タクシーアプリDiDi
クーポンが充実!「乗車無料」チャンス
ジェイエイシーリクルートメント

■Turingにおける自動運転車の構築

「普段使っているアルファードなら1週間」

車両への自動運転システムの統合については、同社が2026年8月にYouTubeにアップしたショート動画「購入した車両を自動運転車両に仕立てるまでの期間」で触れている。同社CTOの山口祐氏と、Driving System2チームシニアエンジニアの山岡龍之氏による会話形式の動画だ。


山口氏から「クルマ一台仕立てるのにどのくらいの時間がかかる?」と振られた山岡氏は「まったく新しいクルマであれば、クルマが来てからだいたい3カ月くらいで運用に回すのが目標・実績。普段使っているアルファードなら、つなぐ設計もあるので多分1週間」と回答した。

センサー構成がシンプルで、ハードウェアや計算機など含め、社内経験・知見が溜まっていることがポイントのようだ。

山口氏は「自動運転のモデル自体、今いろんなところに対応できるような、いわゆる汎化したモデルを作れるようになってきているので、すごく適用しやすくなってきている。ハードウェア的にも、例えばカメラの取り付け位置はクルマによって違ってくるが、ある程度ソフトウェア側で吸収できるところも出てくる。クルマを仕立てていくサイクルが非常に速く回るようになっている」と語る。


シンプルなセンサー構成は車両システム構築も有利

また、別のショート動画「実際の車両で解説!自動運転車両の構成」では、実際に自動運転システムを統合したアルファードを紹介している。

アルファードの場合、ルーフ上に2個、側面2個×2、バック1個の計7個のカメラとアンテナのみで外部センサーは構成されているという。

「自動運転車両は、ゴテゴテとLiDARやレーダー、カメラがたくさんついているクルマが多いが、我々のクルマはすごくシンプル。センサーをいっぱい付けると車を仕立てるのも大変だったりする。ハードウェア的には圧倒的な差。天と地ほど違う」としている。

シンプルなセンサー構成は、データ処理の点で有意となるだけでなく、ハードウェアを組み込んでいく上でもメリットがあるようだ。

搭載ADASのレギュレーションに則り、自動運転システムを乗せる

次に、Turingのオウンドメディア「チューリポ」の「E2E自動運転を支える車両システム — Less is Moreの設計思想」を見ていこう。山口氏と、車載システムや車両システム開発などを手掛ける自動運転第2グループでマネージャーを務める渡邉礁太郎氏の会話形式で、車両システムに関する話を進めている。

車両については、30系アルファードを新車より中古市場から状態の良い個体を選び、調達することが多いという。その車両にセンサーや計算機、ソフトウェアを搭載し、電源まわりも含め、買ってきた車を「自動運転が動かせる状態」に持っていく。OSやアプリケーションも含めすべてセットアップし、実験に耐える状態にする。

30系アルファードはADAS搭載世代であり、ACC(アダプティブクルーズコントロール)やLKAS(レーンキープアシスト)が備わっている。市販車の状態で既に制御が行われているため、その信号を利用して自動運転化するという。

ゼロからアクセルやブレーキ、ハンドル角を直接制御するのではなく、車両が持つプラットフォームの上に乗せる形のようだ。物理的な制約や安全側の枠組みは車両そのもののレギュレーションに乗っかり、その上に自動運転の意思決定を載せるイメージという。

なぜアルファードか?……という点については諸説あるようだが、最初期にアルファードを一台確保したことが起点になっているのが大きく、加えて、ステアリング(EPS)周りのカスタム品を入手できた点なども条件が噛み合ったという。

なお、別の記事で、車両は29号車まで存在し、同じ構成で作られていることに触れている。29台すべてが稼働状態にあるのか、またすべてアルファードなのかは不明だが、おそらく一定台数のアルファードでデータ収集や自動運転制御の学習を積み重ねているものと思われる。

カメラ7台構成がスタンダードに、データ収集からもLiDARを排除

ハード構成は、カメラは7〜8台で、フロントに3台のカメラを設置しているパターンもあるが、最近は2台がスタンダードになってきているという。このほか、測位センサーとしてGNSSとIMUを積んで天井に一つ載せている。車内のコンピュータにはAGX Orinが載っている。

以前は、データ収集用にLiDARも搭載していたが、現在は外している。LiDARは自動運転制御には一切使用していなかった点、そしてカメラだけで物体検出やデプス推定の精度が上がってきた点を踏まえ、排除したようだ。

LiDARはレーザーで距離を点群で取得できるが、データ量が大きく、雨など環境条件の影響も受ける。カメラのビジョンモデルで3Dボックスや点群相当を推定できるなら、LiDARを完全に排除した方が運用上のメリットが大きい……ということだ。

過去、米テスラもデータ収集用にLiDARを活用していることが報じられていたが、現在はどうしているのか。気になるところだ。

「リモート推論」でさまざまな要求に柔軟に対応

開発チームが複数あるとモデルのサイズや要求が違うが、これにどのように対応するか……という課題に対し、「推論だけを車外(あるいは別デバイス)にオフロードする」という設計が採用されているという。

「リモート推論」と呼称し、カメラ入力やセンサー処理、車両とのインターフェースといったリアルタイム性と安定性が求められる部分は車載のOrin側で担当し、ニューラルネットワークの推論だけを別の計算リソースに切り出す――という構成だ。

その実装も大きく2パターンあるという。一つ目がワークステーション型で、Orinと外部のワークステーションをイーサネットで接続し、カメラ画像を送って推論してその結果(軌跡や制御指示)だけを戻す手法で、VLAモデルの実車走行デモでは、RTX 4090を積んだワークステーションでこの構成を使っていた。

もう一つがeGPU型で、GPU単体をOrinに接続して推論をオフロードする方式となる。最近はUSB4やThunderbolt 4によるPCIトンネリングが使えるようになってきており、USB経由でもPCIデバイスのようにGPUを扱えるという。現在はAMDのRadeon系GPUで実験・検証が進んでおり、研究用途として十分に使えるレベルまで達しているという。

「どの車でも動く」システムへステップアップ測る

今後の展望には、アルファード以外の車種への対応や、Orinの次のThorを見据えた次世代SoCへの対応、NVIDIA以外のベンダーSoCも含めた対応――を挙げている。

事業としてスケールするため、「走れるAI」を「どの車でも動く」に持っていき、開発車両だけでなくより多くの車両、より多様な計算機やSoCに対応していく取り組みも見据えているようだ。

▼E2E自動運転を支える車両システム — Less is Moreの設計思想
https://turipo.tur.ing/h5r-lztj/

国産初の「完全自動運転EV」、その姿は!?Turingが公開

■【まとめ】他社メーカーへの技術提供も視野に?

2030年までに完全自動運転EVを1万台製造・販売する目標を掲げるTuring。自社オリジナルの自動運転車両の開発が絶対目標となるが、気になるのは他社への技術提供だ。

「どの車でも動く」を普通に考えれば、他社メーカーの車両への技術統合で事業拡大を図っていくと受け取れる。英Wayveや中国Momenta型の事業展開だ。

テスラの後を追うのは、あくまでE2E開発に代表される自動運転開発ポリシーのみで、事業戦略でテスラ越えを狙う――という道も考えられる。

いずれにしろ、純国産E2E自動運転車の実現はもはや夢物語ではなくなった。Turingの動向に引き続き注目だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




関連記事