中国のトヨタ系企業、ロボタクシーの「黒字化」達成

Pony.ai、損益分岐点の突破発表



出典:Flickr / DennisM2 (CC0 1.0 : Public Domain)

トヨタが出資する中国企業が、展開している自動運転タクシーの「黒字化」を発表した。この会社は中国の自動運転ユニコーン「Pony.ai(小馬智行)」だ。

これまで「巨額の投資が必要な実験段階」と見られてきたロボタクシー事業が、ついに「稼げるビジネス」へと昇華したことを意味する。


同社によれば、広東省深圳市において展開している第7世代(Gen-7)ロボタクシーが、「ユニットエコノミクス(UE)における損益分岐点」を達成したという。

【参考】関連記事としては「トヨタ出資の中国Pony.ai、製造した自動運転車両が炎上」も参照。

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■1日23件の注文!驚異の「稼働率」を解剖

今回の発表で最も注目すべきは、第7世代ロボタクシー1台あたりの運用データだ。

  • 1日あたりの平均注文数:23件
  • 1台あたりの日次平均純収益:338元(約7,000円)

この「338元」という数字は、車両の減価償却費、メンテナンス費、保険料、そしてクラウド運営費などの諸経費をすべて差し引いた後の「手残り」である。「純利益」に近いイメージだ。


1台のロボタクシーが独立した事業ユニットとして、持続可能な収益を生み出し始めたことを、同社はアピールしている。

出典:Pony.ai公式YouTube動画

▼PONY AI Inc. Achieved Gen-7 Robotaxi UE Breakeven in Shenzhen, Strengthening Path to Scalable Commercialization
https://ir.pony.ai/news-releases/news-release-details/pony-ai-inc-achieved-gen-7-robotaxi-ue-breakeven-shenzhen

■日本のタクシーと比較して「23件」はどうなのか?

「1日23件」という数字を聞いても、ピンとこない読者も多いかもしれない。ここで、日本のタクシー業界のデータと比較してみよう。

一般的に、日本のタクシーの1日あたりの平均乗車回数は地域によって異なるが、都市部では約10〜15回程度と言われている。ただ全国平均で見れば10回を下回るケースも珍しくない。


つまり、Pony.aiのロボタクシーが叩き出した「23件」という数字は、日本の現役タクシー運転手の平均的な仕事量の2倍程度に達するという計算になる。

なぜこれほどの高稼働が可能なのか。理由は明白だ。「休憩」が不要で24時間365日、法的な休息制限なく稼働し続けられることや、 AIが需要を予測して配車アルゴリズムの最適化により最短ルートで次々と乗客を拾い上げること、そして「非稼働時間の短縮」が挙げられる。

■冗長性を極めた「レベル4」専用設計

Gen-7は、単に既存の車にセンサーを載せただけではない。ステアリング、ブレーキ、電源系統に至るまで、すべてが「二重化(リダンダンシー)」された「完全無人」前提の設計だ。

この二重化により、万が一の故障時でもスペアの部品・システムを利用することで安全に停車・継続走行が可能となり、運営側の「車両回収コスト」を劇的に下げている。

また、センサーフュージョンの最適化に取り組み、コストを抑えつつ性能を高めたことも注目すべき点だ。

LiDARに関しては、高解像度のソリッドステートLiDARを複数搭載し、死角をゼロ化。AIチップは、自社開発のコンピューティングプラットフォームにより、消費電力を抑えつつ、複雑な深圳の交通状況をリアルタイムで処理できるようにした。

このほか、AIの判断精度向上によってAIが監視・処理できる範囲が拡大したことで、人間のオペレーター1日当たりの監視できる車両台数が増加。これもUE達成の原動力となった。

■ロボタクシー「世界4強」を比較

現在、ロボタクシー市場でしのぎを削る主要4社の戦略と現状を比較した。Pony.aiがいかに「バランスの取れた商用化」を進めているかが浮き彫りになる。

■2026年は「ロボタクシー産業化」の元年

タイトルでは「黒字化」と表現したが、厳密には「ユニットエコノミクス(UE)の達成」だ。会社全体の純損益とは別に、「車を1台増やせば、その分だけ利益が積み上がる状態」に入ったことを意味する。これは事業拡大(スケーラビリティ)における最大の壁を突破したということだ。

Pony.aiは今後、この「勝てるパッケージ」を中国全土、そして世界市場へと水平展開していく構えだ。もはやロボタクシーは「未来の夢」ではなく、既存のタクシー業界を脅かす「効率的なモビリティ産業」として完成しつつある。

自動運転ラボでは、この衝撃的なニュースが世界の競合他社にどう影響を与えるか、引き続き注視していきたい。

【参考】関連記事としては「トヨタ、テスラに対抗!「自動運転タクシー」を中国で量産」も参照。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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