官学民が一体となり実用化に向けた取り組みを推進している日本の自動運転分野。自動運転タクシー実用化に向けては、国土交通省の主導で被害が生じた場合における補償などを議論中だ。
2026年に首都圏を中心に自動運転タクシーサービスが開始予定だが、いよいよ規制緩和や補償に関するロードマップも示される段階となった。この計画通りに取り組みが進むかにも注目だ。
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■国交省が主導する自動運転ワーキンググループとは
国交省の交通政策審議会陸上交通分科会自動車部会は「第2回自動運転ワーキンググループ(WG)」を2024年12月4日に開催した。このWGは、2025年度に見込まれる自動運転タクシーの実装に向けて、ビジネスモデルに対応した規制緩和や認証基準等の具体化による安全性の確保、事故原因究明を通じた再発防止、被害が生じた場合における補償の観点から、今後の自動運転タクシーの社会実装のための制度のあり方について検討するものだ。
▼第2回自動運転ワーキンググループ 配付資料
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/jidosha01_sg_000056.html
第2回WGでは、自動運転タクシーの実装に向けた現状・課題や自動運転タクシーの導入スケジュールといった業界ヒアリングのほか、管理の受委託の運用の明確化案、特定自動運行時に必要な運行管理の在り方案、運輸安全委員会における自動運転車に係る事故調査体制に関する論点が議論された。
2026年の自動運転タクシーの実装に向けたロードマップとしては、ビジネスモデルに対応した規制緩和などに取り組むとともに、認証基準などの具体化による安全性の確保、運輸安全委員会における自動運転車に係る事故調査体制の確保を通じた再発防止などが提案されているようだ。また被害が生じた場合における補償の観点から、自動運転タクシー実装のための制度を構築する計画となっている。
▼自動運転タクシーの実装に向けたロードマップ
https://www.mlit.go.jp/policy/shingikai/content/001851332.pdf
■「被害が生じた場合における補償」はどうなる?
自動運転タクシーの運行事業者・利用者にとって、最も注目すべきポイントは事故やトラブル時の責任の所在や補償についてではないだろうか。
今回のWGで提示された自動運転タクシーの実装に向けたロードマップでは、「AI時代における自動運転車の社会的ルールの在り方検討サブワーキンググループ」の取りまとめをふまえた3つの観点として「認証基準等の具体化による安全性の確保」「事故原因究明を通じた再発防止」「被害が生じた場合における補償」が議論対象となっている。
「被害が生じた場合における補償」では、「運行供用者責任の考え方、被害者補償の在り方等の点を含め、自賠法における損害賠償責任の明確化」について2025年中に結論を出すこととなっている。ほかの2つの観点については、1年以内に結論が出される予定のようだ。
またビジネスモデルに対応した規制緩和などとして、「管理の受委託に係る対象業務」を年内に、「特定自動運行時に必要な運行管理の在り方」と「タクシー手配に係るプラットフォーマーに対する規律の在り方」を1年以内に結論を出すこととしている。
これらの検討を短期集中的に行うため、交通政策審議会自動車部会のもと、新たに「自動運転ワーキンググループ」を設置。結論を得たものから順次制度化を行う予定だという。
■ホンダ主導の自動運転タクシーは計画通りに進むのか?
自動運転タクシー運行中・乗車中の被害が生じた際の補償について、明確化に向けた話し合いが進むことはグッドニュースだと言える。しかし、GM Cruiseとタッグを組み、日本で先陣を切って自動運転タクシーサービスを開始予定のホンダ陣営には暗雲が漂ってきた。
GMは自動運転タクシー部門であるCruiseを閉鎖し、社内の自家用車向けの自動運転テクノロジーの開発プロジェクトと統合することを2024年12月10日に発表した。これが日本での自動運転タクシー計画にどのような影響を及ぼすのか。
国が主導するWGのロードマップの進捗とともに、各社の開発状況にも注視していきたい。
※自動運転ラボの資料解説記事は「タグ:資料解説|自動運転ラボ」でまとめて発信しています。
【参考】関連記事としては「自動運転「責任の所在明確化を」 日本学術会議が提言」も参照。