世界から注目されるオリンピックは最新技術のお披露目の場となることが多い。パリ五輪でも、「空飛ぶタクシー」が実際に人を乗せて飛行する予定であった。
しかし、それを計画していた開発企業であるドイツのVolocopter(ボロコプター)は飛行許可の取得に失敗し、運航が叶わなかった。今回のパリ五輪という絶好のPR機会にも飛行を実現させることができなかったことで、空飛ぶタクシーや空飛ぶクルマの関連ベンチャーへの投資マネーの流入ムードが盛り下がり、この分野の将来性に期待する人も減っていくかもしれない。
■欧州の航空安全機関から認証下りず
Volocopterとパリ空港公社(ADP)は、オリンピックのためにパイロットなしで飛行する小型の空飛ぶクルマ(eVTOL:電動垂直離着陸機)の運航を計画していた。
オリンピックでの運航ルートは5つ設定され、その中にはセーヌ川のプラットフォームに着陸するルートも含まれていた。VolocopterのDirk Hoke CEO(最高経営責任者)は、フランスのエマニュエル・マクロン大統領が最初の乗客になることを望んでいたという。
しかしパリ五輪開催中の8月8日、大会に間に合わせるためのヨーロッパの航空安全機関からの認証を得ることができなかったことがADPにより発表された。パリ五輪でエアタクシーを飛ばすという夢は実現しなかったが、Volocopterの支持者たちはパリ五輪最終日である8月11日にテスト飛行を実施した。日の出の時間帯にベルサイユ宮殿の敷地の上空でデモンストレーションを行ったという。
■空飛ぶクルマ、実用化に遅れ
世界のeVTOL開発各社は実用化に向け、自社の機体の飛行認可を取得することを目指している。しかし認可のほか技術開発にも遅れが出ているというのが現状のようだ。
日本でも、2025年4月から開催される「大阪・関西万博」でエアタクシー実現するため、大阪府が2021年度の予算案で「空飛ぶクルマ社会実装推進事業費」として2,000万円を新規計上し、2023年から空飛ぶクルマの事業化を進めている。大阪府の吉村洋文知事は、万博での国内初の商用運航に積極的であることで知られている。
しかし日本を代表する開発企業・SkyDriveは同万博での空飛ぶクルマの運航について、乗客を乗せた商用飛行を断念すると2024年6月に発表した。機体の開発計画などを精査した結果、乗客なしでのデモフライトにすることに決めたようだ。
空飛ぶクルマの運航には、型式証明や飛行許可の取得が高いハードルとなる。また離着陸場となるバーティポートの整備も必要だ。海外の開発企業においても、実用化までのスピードが遅れている印象だ。
■次のオリンピックでは観客を乗せて飛行なるか!?
Volocopterは、火災に見舞われたノートルダム大聖堂が2024年12月に再オープンする際に、上空で乗客を乗せて飛行する許可を取りたいと考えている。オリンピックの次のパリでの大きなイベントとなるノートルダム大聖堂再開の場で、エアタクシーが飛ぶことになれば大きな話題になるだろう。
また他社も、次回2028年のロサンゼルス五輪での飛行を目指している。オリンピックで最初にエアタクシーを実用化するのは、どの企業になるのだろうか。注目だ。
【参考】関連記事としては「ドイツ企業VolocopterのEVエアタクシー、万博で日本の空を飛ぶ!?」も参照。