自動運転事故の報告、「速報」と「詳報」の2段階で 国交省が要請

事故発生時は「当日連絡」が必須



国土交通省はこのほど、自動運転についての情報を公式サイトで公開し、自動運転事故については「速報」と「詳報」の2段階で報告を行う必要性があることの周知などに取り組んでいる。


公道での自動運転の申請に関する手引きなども掲載されており、自動運転開発が本格化し、いよいよ実装に近づいてきていることを感じさせる。

▼物流・自動車:自動運転について – 国土交通省
https://www.mlit.go.jp/jidosha/jidosha_tk7_000042.html

■2段階での事故報告が必要

自動運転で事故が発生した場合、「速報」と「詳報」の2段階で報告する必要がある。

速報は、土休日に関わらず事故発生当日に連絡する。報告する内容は、下記の5項目となっている。


  • 事故発生日時
  • 事故発生場所(地図等を用い、図示する)
  • 運行事業者
  • 事故概要(事故発生状況並びにけが人の有無及び状況)
  • 車両及び現場の写真

次に、詳報を事故発生後3日間以内に連絡する。土休日も1日と数える。報告するのは、下記の7項目だ。

  • 《速報から変更なければ省略可》事故発生日時
  • 《速報から変更なければ省略可》事故発生場所(地図等を用い、図示する)
  • 《速報から変更なければ省略可》運行事業者
  • 《速報から変更なければ省略可》事故概要(事故発生状況並びにけが人の有無及び状況)
  • 事故発生要因
  • 措置、今後の対応
  • 《自動運転社会実装推進事業中の事故のみ》補助事業の計画変更有無

なお連絡先は、下記の3カ所だ。

  • 国土交通本省 物流・自動車局 技術・環境政策課
  • 使用の本拠の位置を管轄する国土交通省の地方運輸局等
  • 自動運転社会実装推進事業事務局(当該事業に関するものに限る)

■社会実装推進事業における事故の際は?

自動運転社会実装推進事業中に事故が発生した場合は、特定の様式となる「地域公共交通確保維持改善事業費補助金(自動運転社会実装推進事業)事故報告書」での報告が必要となる。この場合、補助事業の計画変更有無についての情報も知らせることになる。

▼様式|自動運転社会実装推進事業中の事故の場合(※Wordファイルが開きます)
https://www.mlit.go.jp/jidosha/content/001749860.docx


様式(Wordファイル)の内容=出典:国土交通省

この事業は、地域づくりの一環として行うバスサービスなどの自動運転化に伴う経費に対して、地方公共団体・民間団体等が、その費用負担を軽減するため当該経費の一部を助成する事業等に要する経費を補助する取り組みだ。

経営面、技術面、社会的受容性等の実証を推進することで、自動運転技術を活用した持続可能な移動サービスを構築することを目的にしており、2024年4〜5月に公募を受け付けていた。

将来的にレベル4自動運転技術を提供することが見込まれる事業者が参画することなどの要件がある。自動運転システムの開発や、それに伴う車両改造、リスクアセスメント調査などを対象に、80~90件の事業について必要な経費を補助するといった内容になっている。

■日本おける自動運転関連の事故

自動運転中の事故については、日本でも起こっている。

トヨタは2021年8月の東京2020パラリンピック開催期間中に、選手村で自動運転EV「e-Palette」を活用して関係者の送迎を行うサービス実証を行っていたが、交差点で日本人選手と接触するという事故が発生した。その後の報告書では、自動運転システムに関しては問題がなかったが、人為的ミスが重なったことが原因との調査結果が出されている。

また「日本初のレベル4」として2023年5月にスタートした福井県永平寺町の自動運転移動サービスが、同年10月に事故を起こした。自動運転車両が、人が乗っていない駐輪中の自転車と接触したという内容で、事故後に運行が停止された。事故原因の調査と対策が行われ、冬期運休期間明けの2024年3月に運行を再開している。

ソフトバンク子会社で自動運転事業を展開するBOLDLY(ボードリー)の自動運転車両「MiCa(ミカ)」は、2023年11月に実証実験に事故を起こした。被害はMiCaとタクシーともに物損のみであった。その後、事故原因の調査を行い、同年12月から運行を再開している。

■大切なのは「調査し改善すること」

各地方自治体では、少子高齢化などが原因の人材不足による移動手段の確保として、自動運転車の採用に積極的だ。また首都圏を中心に、今年から自動運転タクシーの実証が順次開始する予定だ。

自動運転では、システムそのものによる動作不良のほか、手動運転から自動運転への切り替えの際にうまくいかなかったり、セーフティドライバーによる判断ミスがあったりなど、さまざまな要因により事故が起こる可能性がある。

実装に向けての初期段階で、事故時に正確に詳細を報告し、今後の対応を検討することで、安心・安全な自動運転社会を作り出していける。この点を改めて国・業界・一般社会の間で広く認識することが大切だ。

記事監修:下山 哲平
(株式会社ストロボ代表取締役社長/自動運転ラボ発行人)

大手デジタルマーケティングエージェンシーのアイレップにて取締役CSO(Chief Solutions Officer)として、SEO・コンテンツマーケティング等の事業開発に従事。JV設立やM&Aによる新規事業開発をリードし、在任時、年商100億から700億規模への急拡大を果たす。2016年、大手企業におけるデジタルトランスフォーメーション支援すべく、株式会社ストロボを設立し、設立5年でグループ6社へと拡大。2018年5月、自動車産業×デジタルトランスフォーメーションの一手として、自動運転領域メディア「自動運転ラボ」を立ち上げ、業界最大級のメディアに成長させる。講演実績も多く、早くもあらゆる自動運転系の技術や企業の最新情報が最も集まる存在に。(登壇情報
【著書】
自動運転&MaaSビジネス参入ガイド
“未来予測”による研究開発テーマ創出の仕方(共著)




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